リースバックとは、協力者やリース会社に、自社が所有している固定資産を買い取ってもらうことで資金調達する方法です。資産は売却後、そのまま賃借やリースにより使用を続けることができます。

リースバックがよく行われる資産には、1.不動産、2.車両、があります。

1.不動産をリースバックすることで資金調達

所有している自社ビルや工場・店舗、自宅などをリースバックすることで、資金調達できます。

例えば、時価5000万円の不動産を所有しているとします。その不動産に、銀行で担保として根抵当権が3500万円設定されていて、また3000万円の融資を銀行から受けていたとします。知人や親族、不動産投資家などの協力者を探し、その協力者に不動産を5000万円で売却し、現金を手に入れます。そこから銀行への融資を3000万円返済し、また不動産の仲介手数料など諸費用を差し引くと、1500万円以上、現金を手元に残すことができます。

そしてこの不動産は、新たな所有者となった協力者から賃貸してもらい、そのまま使い続けることができます。不動産を担保にして融資を受けるより、売却してリースバックした方が手元に残る現金が大きくなるのであれば、考えてみたい方法です。

不動産リースバックでのポイントは、(1)協力者への売却金額、(2)協力者に対して支払う賃料、(3)将来買い戻す場合の買い戻し金額です。

不動産リースバックのポイント(1)協力者への売却金額

不動産を使って資金調達する方法には、不動産リースバック以外に、不動産を担保とした融資があります。この場合、金融機関は不動産の時価より担保価値を低く見ます。金融機関は、土地の担保価値を時価の7割で見ることが多いです。時価5000万円の不動産があり、金融機関が担保価値を7割で見れば、5000万円×70%=3500万円を担保価値として、その金額の融資が出ます。一方リースバックの場合、時価5000万円で売却すると、仲介手数料等の不動産売却諸費用を差し引いて4500万円以上の現金を手元に残すことができます。

ただし、協力者が将来の不動産値下がりリスクを考え、時価で買い取ってくれないかもしれません。協力者がリスクを考え、8割で買い取ってくれる場合、売却金額は5000万円×80%=4000万円になります。不動産売却の諸費用を差し引くと、不動産を担保とした融資に比べ手元に残る現金があまり多くはなりません。リースバックでは、協力者との交渉により、不動産をいくらで売却できるか、ポイントです。

不動産リースバックのポイント(2)協力者に対して支払う賃料

協力者に対して支払う賃料の設定は、話し合いになりますが、不動産の売却金額の7%~12%を年間賃料とすることが多いです。5000万円で不動産を協力者に売却し、年間賃料を10%としてリースバックした場合、5000万円×10%=500万円、月の賃料にすると42万円弱になります。その賃料を支払っていっても問題ないのかどうか、リースバックのポイントです。

不動産リースバックのポイント(3)将来買い戻す場合の買い戻し金額

将来、会社の業績が良くなり資金の余裕ができたら協力者から買い戻すことを約束した上で、リースバックを行うこともできます。リースバックを始める時に協力者に売却した金額に5~10%程度上乗せして買い戻すのが相場です。リースバックを行う前から、将来、買い戻しをするかどうか、また買い戻し金額はいくらにするか、決めておくとよいでしょう。

不動産のリースバックにより資金調達することのメリット

  • 不動産を担保にして融資を受ける場合よりも、リースバックの方が売却金額によっては手に入る現金が大きくなる。
  • 不動産の売却であるため、協力者である購入者から一括して現金を受け取ることができる。
  • 移転せずに、そのまま不動産を使い続けることができる。引越し費用も不要。
  • 固定資産税・建物の火災保険料がかからなくなる(所有者となる協力者の負担となるが、協力者との取り決めにより実質はリースバックしてもらった企業側が負担することが多い)。
  • リースバックした不動産は将来、買い戻しすることが可能(所有者となる協力者との話し合いによる)。
  • 不動産の売却により現金が手に入り、また銀行等からの借入金があればその現金で返済することも可能であるため、決算書の貸借対照表の見栄えがよくなる。

不動産のリースバックにより資金調達することのデメリット

  • 購入してくれる協力者を探すのが大変。また不動産の購入金額が多額となるため、購入資金を用意できる協力者を探すのが大変。
  • 所有権が協力者である購入者に移る(協力者との話し合いにより、将来、買い戻すことは可能)。
  • 賃借料が発生する(賃借料は、協力者である購入者との話し合いによる)。
  • 不動産の所有権は協力者にあるため、協力者との関係が悪化すると、最悪、立ち退きを求められることもある。

2.車両をリースバックすることで資金調達

運輸業や建設業でトラックを多く所有している、またはバスやタクシー会社で車両を多く所有している場合。自社で所有している車両をリース会社に買い取ってもらい、現金を得ることができます。リース会社へ売却後、リース会社から車両をリースすることにより、そのまま使用し続けることができます。リースバックした後は、リース料を毎月、リース会社へ支払っていきます。筆者の経験では、ある運輸業の会社でトラック40台あったのですが、1台50万円でリース会社に買い取ってもらい、50万円×40台=2000万円、車両のリースバックで資金調達できました。