銀行

銀行の融資には4つの種類があります。それぞれの違いを表にしました。

銀行融資の4種類とその違い
融資の種類 特徴 具体例
証書貸付 金銭消費貸借契約書を銀行に差し入れることで融資を受ける方法。返済期間1年を超える長期融資でこの方法がとられる。 3000万円を運転資金として融資。返済期間は5年、元金均等で毎月50万円を60回返済。
手形貸付 借入用手形を銀行に差し入れることで融資を受ける方法。返済期間1年以内の短期融資でこの方法がとられる。 1200万円を賞与資金として融資。返済期間は6カ月、元金均等で毎月200万円を6回返済。
当座貸越 極度額を設定し、その中で自由に融資を受けたり返済したりする融資。極度額を設定する際、当座貸越契約書を銀行に差し入れる。 2000万円の融資極度額を設定。今月は仕入が多くなるから1000万円を借入れ申込書だけで借入れ。総額2000万円までは申込書一つでいつでも借りたり返したり可能。
手形割引 取引先から受け取った手形を銀行に買い取ってもらうことで資金調達する方法。 売掛先A社が振り出した300万円の手形を銀行で買い取ってもらい現金化。

融資の4種類その1.証書貸付

証書貸付とは「金銭消費貸借契約書」に融資金額、金利、返済期間、返済方法などを記載し、会社の署名・捺印、連帯保証人の署名・捺印を行った上で銀行と契約を交わし、融資を受ける方法です。主に返済期間1年を超える長期融資でこの方法がとられ、返済は毎月や3カ月に1回など、銀行と取り決めた間隔で行います。

返済期間1年を超える長期返済の融資で運転資金の融資を受ける場合や、不動産や機械など設備資金の融資を長期返済で受ける場合、この方法がとられます。

融資の4種類その2.手形貸付

手形貸付とは、借入用手形を銀行に差入れることにより融資を受ける方法です。借入用手形は銀行が用意するので、当座預金口座がなく手形を振り出すことがない会社でも手形貸付で銀行から融資を受けることができます。主に返済期間1年以内の短期融資で手形貸付が行われます。

証書貸付で行われる長期融資と違い、手形貸付で行われる短期融資には、次のような資金の使い道で融資が行われることが多いです。

  • つなぎ資金…材料費や外注費など、まとまった支払いが先に来て、まとまった売上入金が後にくる、その間をつなぐ資金の融資。
  • 季節資金…1年の中で、在庫を備蓄する時期と、それを販売し売掛金回収する時期が異なり、その間、資金不足となる期間をつなぐ資金の融資。
  • 賞与資金…賞与支払いのための資金の融資。半年ごとの賞与であれば次の賞与までの6カ月間分割返済になるのが基本。
  • 納税資金…法人税など、納税のために一時的に大きく資金が必要となるにあたって必要となる資金の融資。中間納税までの6カ月間での分割返済が基本。

手形貸付は、証書貸付より融資の手続きが簡素化されています。証書貸付では、融資を受ける会社と連帯保証人の署名・捺印を毎回行ったり、会社や連帯保証人の印鑑証明書を毎回提出したりするなど、手間がかかります。一方、手形貸付では、その銀行ではじめて融資を受ける時に銀行取引契約書と連帯保証人の保証契約書を銀行と交わしていれば、その後の毎回の手形貸付の融資で、借入用手形に会社の署名・捺印を行うだけでよいです。

証書貸付に比べ手形貸付では、金額が小さく返済期間が短い融資が多いです。そのため融資が行われる頻度が高く、手続きが簡素化されています。また証書貸付で融資を受ける場合に銀行と交わす金銭消費貸借契約書に貼る収入印紙に比べ、手形貸付で融資を受ける場合に銀行に差し入れる借入用手形に貼る収入印紙の方が安いです。

融資の4種類その3.当座貸越

当座貸越とは、融資の限度額を設定し、その限度額まではいつでも借入れ申込書一つで借りたり返したりできる方法です。その融資限度額を極度額と言います。

銀行では、いつでも融資を行える極度額を設定しても問題ないか、審査します。審査が通ったら、銀行と当座貸越契約書を交わします。その後は、いつでも借入れ申込書一つで融資が受けられるようになります。

銀行が個人向けに融資商品として出しているカードローンも当座貸越の一種ですが、極度額は数百万円と低め、金利は10%近くもしくは超える高い金利です。企業に対し行われる当座貸越では、極度額は数千万円でも銀行の審査しだいで可能であり、金利も0%台~3%と低くなります。

当座貸越の中には2つの種類があります。当座預金と連動するかしないかの違いです。当座預金がない企業は、専用当座貸越の方法をとります。

1.専用当座貸越

極度額の中で、自由に融資を受けたり返済したりする方法です。

例えば、専用当座貸越の極度額を3000万円に設定します。いったん設定すればその後は、支払資金が足りないから500万円借りる、売上の入金があって預金が多くなったから500万円返済する、というように自由に借りたり返したりできます。

2.一般当座貸越

当座預金と連動する当座貸越です。当座預金を保有している企業がこの方法を使えます。一般当座貸越を設定すれば、その後は当座預金の残高が不足した時、自動的に貸越となります。

例えば、一般当座貸越の極度額を2000万円に設定したとします。当座預金残高300万円あり、そこから1000万円の支払手形の決済があれば、当座預金は△700万円不足します。このままでは手形の不渡りとなりますが、一般当座貸越を設定していれば2000万円まで自動的に貸越となります。当座預金の残高が△2,000万円となるまで問題ありません。

融資の4種類その4.手形割引

手形割引とは、売掛先から受け取った手形を銀行に買い取ってもらい資金化する方法です。手形の支払期日に手形を取り立てすることで銀行は資金を回収します。そのため、手形割引を行った会社は後で銀行へ返済する必要がありません。

しかし、割引した手形が不渡りになった場合、手形割引を行った会社が銀行から手形を買い戻す義務があります。買い戻しできなければ、銀行は損失を被ってしまいます。そのため手形割引の審査では、手形割引を行いたい会社の審査、手形を振り出した会社の審査、両方の審査を銀行は行います。なお手形を振り出した方の会社は、割引する銀行と直接取引しているとは限らないため、銀行は信用調査会社などからその会社の情報を得て審査します。

融資の4種類を使い分け、適切な融資を受けられるようになろう

以上のように、銀行融資には4つの種類があります。資金の使い道や、自社の状況に応じて使い分けるようにします。運転資金を大きく借り長期で返済したい場合は証書貸付。仕入れ代金の支払時期と売上代金の回収時期が明確であってその間の資金をつなぎたい場合は手形貸付。将来に備えていつでも借りたり返したりできるような融資枠を設定したい場合は当座貸越。売掛先から手形を受け取ることが多く、手形を早く現金化したい場合は手形割引。このように使い分けます。銀行の融資の4種類とそれぞれの特徴を覚え、自社の資金の流れを把握した上で、どのように銀行から融資を受けるべきか、判断していきたいものです。