銀行から融資を受けられない時、やむをえず高金利の金融会社から借入れすることがあるかもしれません。銀行からの融資の金利は年1、2%である一方、高金利の金融会社からの借入れの金利は10~20%にもなります。
高金利の金融会社には、次のようなところがあります。
- 企業向けノンバンク(ビジネクスト・ビジネスパートナーなど)
- 個人向け消費者金融(アコム・プロミス・アイフル・レイクなど)
- 個人向け銀行カードローン
- クレジットカードのキャッシング
高金利の金融会社から借入れしている企業が心配になることは、そのことが融資を現在受けている銀行、もしくはこれから融資を受けようとする銀行に知られてしまうのか、ということです。
高金利の金融会社から借入れしていることを銀行に知られてしまうと、警戒されてしまい、今後、その銀行から融資を受けられなくなってしまうのでは、と心配です。実際に銀行や日本政策金融公庫、信用保証協会では、高金利の金融会社からの借入れがある会社は、そうしなければならないほど資金繰りが厳しい企業であると見て、新たな融資の審査に慎重になることは事実です。高金利の金融会社から融資を受けていると、銀行に知られてしまうことは、はたしてあるのでしょうか。
高金利の金融会社から借入れしていることを知られてしまう5つの場面
高金利の金融会社から借入れしていることを知られてしまう場面には、次の5つがあります。
- 決算書の勘定科目内訳書の借入金の内訳に金融会社の名前が載っている。
- 決算書の損益計算書で、支払利息が大きく計上されている。
- 銀行の預金口座に、高金利の金融会社との資金のやり取りが記録されている。
- 会社や経営者個人の不動産登記簿を見ると、高金利の金融会社から抵当権・根抵当権が設定されている。
- 経営者の個人信用情報を見られて分かってしまう。
それぞれ見てみます。
1.決算書の勘定科目内訳書の借入金の内訳に金融会社の名前が載っている。
決算書の勘定科目内訳書の短期借入金・長期借入金の内訳に、金融会社の名前が載っている場合。銀行では勘定科目内訳書は必ずチェックするので、高金利の金融会社から借入れしていることが確実に分かります。
高金利の金融会社から借入れするなら個人名義で行う。もしくは決算日にいったん金融会社に全額返済する。このようにすると、勘定科目内訳書に金融会社の名前が載らないことになります。なお決算日に金融会社に全額返済したとしても、金融会社に支払った期中の利息額と金融会社名を勘定科目内訳書の借入金の内訳に記載すれば、銀行に分かってしまいます。
2.決算書の損益計算書で、支払利息が大きく計上されている。
損益計算書の営業外費用の一つに支払利息があります。また貸借対照表の負債の部に借入金(短期借入金・長期借入金)があります。銀行では企業の決算書から、次の計算式により、借入金の平均金利を計算しています。
前期の支払利息÷前々期・前期の借入金額平均=借入金平均金利
例えば、前期の支払利息は3,000,000円、前々期の借入金額は95,000,000円、前期の借入金額は105,000,000円とします。前々期・前期の借入金額の平均は
(95,000,000+105,000,000円)÷2=100,000,000円
となり、そして借入金平均金利は
3,000,000円÷100,000,000円=3.000%
になります。
なお借入金額を2期平均とするのは、前期の借入金の平均残高(期中365日平均して借入金はいくらあったのか)を計算するためです。前々期(期初)と前期(期末)を2で割った平均を借入金平均残高とみなし、借入金平均金利を計算します。
この平均金利が、銀行融資の金利水準である0%台~2%台であれば正常ですが、4%を超えていれば、なぜ平均金利が高いのか、銀行は疑問に思います。経営者に「支払利息が多いようですが、なぜですか。」と質問してくるかもしれません。高金利の金融会社からの借入金が多くあれば、平均金利は当然、高くなります。こういうところで、高金利の金融会社から借入れがあることを見破られることがあります。
3.銀行の預金口座に、高金利の金融会社との資金のやり取りが記録されている。
高金利の金融会社から借入れがあると、銀行の預金口座でやりとりが発生します。借入れすると金融会社から預金口座に入金があり、また返済する都度、金融会社に対し出金があり、金融会社の名前が表示されます。融資を受けている銀行の預金口座で、高金利の金融会社との資金のやりとりを行うと、その銀行で分かってしまいます。なお経営者個人で高金利の金融会社から借入れして、個人の預金口座で金融会社と資金のやりとりをする場合でも同様です。
融資を受けていない預金取引だけの銀行で、高金利の金融会社と資金のやりとりをすれば、融資を受けている銀行ではそのことが分かりません。銀行は、他の銀行の預金通帳を見る機会はありません。ただし日本政策金融公庫では、融資審査時に銀行の預金通帳をチェックしますので高金利の金融会社から借入れがあることを分かってしまうことがあります。
なお、高金利の金融会社によっては資金の出し入れを現金で行うところもあり、その場合も分かりません。
4.会社や経営者個人の不動産登記簿を見ると、高金利の金融会社から抵当権・根抵当権が設定されている。
銀行は新たな融資の審査を行う時、もしくは既に融資を出している会社に対し、会社と経営者個人が所有する不動産の登記簿を取得し、チェックすることがあります。不動産が銀行の担保に入っている、入っていないに関わらず、です。
高金利の金融会社で不動産を担保に入れて借入れした場合、不動産登記には、高金利の金融会社から抵当権・根抵当権が設定されます。それを銀行に見られてしまうと、高金利の金融会社から借入れしている事実を知られてしまいます。
5.経営者の個人信用情報を見られて分かってしまう。
高金利の金融会社から借入れすると、会社で借入れしても経営者個人で借入れしても、経営者の個人信用情報にそのことが載ります。銀行で個人信用情報が見られてしまうのではと、経営者は心配になります。ケース別に、下記のようになります。
銀行のプロパー融資(信用保証協会や保証会社の保証がつかない融資)
銀行では融資審査時に経営者の個人信用情報を見ないことが普通です。
銀行の信用保証協会保証付融資
銀行では融資審査時に経営者の個人信用情報を見ないことが普通です。信用保証協会でも同様です。
51の信用保証協会のうち、個人信用情報機関に加盟している協会は6つと少ないです。加盟している信用保証協会でも、保証審査時に個人信用情報は見ないことが普通です。ただし加盟している信用保証協会では、会社が初めて信用保証協会に保証をしてもらおうとする時、個人信用情報を見られることがあります。
全国銀行個人信用情報センターに加盟している信用保証協会
東京信用保証協会・愛知県信用保証協会
CICに加盟している信用保証協会
なし
日本信用情報機構(JICC)に加盟している信用保証協会
栃木県信用保証協会・神奈川県信用保証協会・山口県信用保証協会・沖縄県信用保証協会
銀行のノンバンク保証付融資
銀行と提携しているノンバンク(オリックスなど)が保証会社として保証した上での融資です。この場合、保証会社となるノンバンクによる、経営者の個人信用情報のチェックがあります。ただし保証会社となるノンバンクでは、高金利の金融会社で他に借入れがあっても、延滞などブラック状態でなければ、また高金利の借入れで多重債務の状態でなければ、保証してくれる場合が多いです。
日本政策金融公庫
CICという個人信用情報機関で、経営者の個人信用情報をチェックします。ただ、高金利の金融会社からの借入れがあっても、延滞などブラック状態でなければ、また高金利の借入れで多重債務の状態でなければ、融資を出してくれるケースはあります。なお日本政策金融公庫は、現在どこでいくら借入れがあるかを聞いてきます。うそをつくと、個人信用情報とつき合わせることによってバレてしまい、印象がとても悪くなってしまいます。
高金利の金融会社から借入れする時は特に経営改善を進めなければならない
銀行から融資を受けられず、資金繰りが回らない。そのため高金利の金融会社から借入れせざるをえない場合。緊急事態と言えます。これ以上の資金流出を防ぐため既存の銀行融資をリスケジュールした上で、経営改善を早急に進めなければなりません。経営改善して利益を上げられるようにした上、高金利の借入れを早く返済できるようにすべきです。