もしあなたの会社の資金繰りが厳しい場合。資金繰り改善に向けて具体的に行動していかねばなりません。ここでは中小企業が資金繰り改善するためにとるべき7つの行動と、その順番をお伝えします。7つの行動は下記のとおりです。また行動の順番は、そのまま行動の優先順位ともなります。

中小企業の資金繰り改善のための7つの行動

  1. 毎月の損益を分かるようにする。
  2. 経営改善を行うための今後1年の月次損益計画、今後3~10年の年次損益計画を作る。またその計画をもとに経営改善を行い、毎月利益が上がるようにする。
  3. 売掛金の回収を徹底的に行う。
  4. 資金繰り表を使って資金繰り管理を行えるようにする。
  5. 銀行から借入れができないか、資金調達に動く。
  6. 銀行からの借入れができないのであれば、ノンバンクからの借入れができないか資金調達に動く。
  7. 資金調達できないのであれば、どの支払いを遅らせるか、考えて交渉する

それぞれを説明します。

1.毎月の損益を分かるようにする。

 

「資金繰り改善のための7つの行動」の2番目に、経営改善を行って毎月利益が上がるようにする、とあります。そもそも毎月の利益がどれだけ上がっているか見えなければ始まらないため、まずは数字で見えるようにしなければなりません。毎月の損益を分かるようにすることが「資金繰り改善のための7つの行動」の1番目となります。

毎月の損益を分かるようにするには、毎月、試算表を作る必要があります。試算表とは、毎月どれだけ売上・利益があったのか、また原価や経費は何にいくらかかったのか、数値で出る財務資料のことです。

あなたの会社は前月いくらの売上・利益があったのかすぐに分かりますか。それが分からなければ毎月の損益は分かっていない状態です。前月の売上・利益を聞かれて、そこから初めて税理士に試算表を作ってもらうようではいけません。

試算表は言われたから作るものではありません。試算表は、経営者が毎月の損益を把握し、もっと多くの利益を出すにはどうしたら良いか考える、経営のための資料です。銀行などに言われなくても毎月試算表を作らなければなりません。試算表を見て経営者が、利益が多く出るようにするためにはどうすべきか、毎月考えられるようにしなければなりません。

資金繰り改善の第一歩は、毎月の損益を分かるようにすること、です。

2.経営改善を行うための今後1年の月次損益計画、今後3~10年の年次損益計画を作る。またその計画をもとに経営改善を行い、毎月利益が上がるようにする。

いくら銀行から借入れできたところで、毎月の損益が赤字であれば、借入れした資金は赤字の補てんですぐに消えてなくなってしまいます。毎月赤字を出すことは、経営者としてやってはいけないことであり、罪であると考えてください。

毎月黒字であれば、事業を行うにつれて現金は増えていきます。黒字企業であれば、銀行から借入金がある場合、毎月稼いだ現金で返済していけます。毎月稼いだ現金で全ての返済をまかなうことができないのであれば、新たに銀行から借入れして現金を増やしてまかなうことができます。黒字企業に銀行は融資を行いやすいです。いずれにせよ毎月の利益が黒字であれば、資金繰りはまわります。だから、経営者は何よりも経営改善を行って毎月黒字を出すことが重要なのです。

なお季節により売上・利益の増減が大きい会社であれば、毎月黒字を出すのは難しいこともあります。その場合でも平均して黒字を出せるようにします。そうなれば黒字の月で現金をためて、赤字の月をしのぐことができます。

経営改善を行うにあたってまず、今後1年の月次損益計画、今後3~10年の年次損益計画を作ります。どう経営改善を行うか具体的な対策を盛り込んだ上で、今後の損益はどうなるか書いていきます。「資金繰り改善のための7つの行動」の4番目に資金繰り表を使って資金繰り管理を行えるようにするとありますが、資金繰り表を作るために必要なのは、今後の損益計画です。

「資金繰り改善のための7つの行動」の1番目で毎月の損益が分かるようになれば、それを参考にして、今後どのように損益を推移させていくか、損益計画を立てやすいです。ここで損益計画ができたら、それを元に今後の資金繰り予定表を作って資金繰りを予測していきます。

3.売掛金の回収を徹底的に行う。

例えば、ある月の売上高は1500万円、経常利益は100万円になったとします。しかし売上高1500万円のうち300万円の売掛金が回収できなかった場合。実質的には100万円の利益ではなく△200万円の赤字となります。資金もそれだけ不足します。こう考えると毎月の損益は、全ての売掛金が回収できてこそ意味ある数字になる、ということが分かります。

毎月黒字が出ても回収できない売掛金があれば、実際の損益は赤字になりかねません。売掛金は100%回収することが重要です。そのためには各売掛先の、売掛金発生・回収の状況を常にチェックする必要があります。支払期日に売掛先が入金してこなければすぐに回収に動く。また売掛先の倒産や資金繰り難などで回収できない事態を防ぐために売掛先の信用状況の把握を常に行う。これらも重要です。また売掛先から後で売掛金を値引きされないよう、売掛先には毅然とした態度をとることも重要です。

4.資金繰り表を使って資金繰り管理を行えるようにする。

「資金繰り改善のための7つの行動」の5番目に、銀行からの借入れができないか資金調達に動く、とあります。銀行が融資審査を行うにあたり、資金繰り表の提出を求められることは多いです。そのため資金繰り表を作ることが、銀行からの資金調達に動くことより「資金繰り改善のための7つの行動」の先の順番となります。

資金繰り管理とは、将来の資金繰り予定表を作り、資金繰りが破たんしないよう管理していくことを言います。今後6カ月~1年先あたりまでの毎月の資金繰りを予測する資金繰り予定表、今後2~3カ月先あたりまでの毎日の資金繰りを予測する資金繰り予定表を、自社が最も資金繰り管理を行いやすいように作ります。

資金繰り管理の中では、いつ資金が不足するのかを予測します。資金繰り不足となる日が将来あるのであれば、銀行からの借入れをまず考えます。借入れできない場合は各種の支払いを遅らせることを考えます。優先的に行うべき支払いはどれか、支払いを遅らせてもよい支払いはどれか、資金繰り表を見て考えます。遅らせた支払いはその後どうやって支払っていくかも資金繰り表を見て考えます。

5.銀行からの借入れができないか、資金調達に動く。

資金繰り表があれば、早い時期に、いつ資金不足となるか分かります。資金不足を補うための手段の第一は、銀行から借入れすることです。

銀行へは、資金不足となる直前ではなく早い時期に相談することが大事です。銀行の融資審査は長ければ2カ月ぐらいかかることもあります。銀行の審査期間は企業がコントロールできるものではありません。そのため、資金不足となる2~3カ月前には銀行に融資の相談を行うことが大事です。

6.銀行からの借入れができないのであれば、ノンバンクからの借入れができないか資金調達に動く。

業績が悪かったり、借入金が多すぎたりなどで、銀行から借入れできない会社もあります。その場合、他の資金調達手段を考えます。その一つが、銀行以外の金融会社、いわゆるノンバンクから借入れすることです。

ノンバンクの金利は銀行に比べてずっと高く、無担保融資ですと年利15~18%にもなります。ただノンバンクから借入れできる金額は、無担保融資で金融会社1社あたり100~200万円程度と少額です。金利が高いとは言っても利息額にするとそんなに大きい金額にはなりません。

ただし銀行から借入れできない中、そして銀行からの既存の借入れの返済を毎月続ける中でノンバンクから借入れした場合。ノンバンクからの高金利の借入れで銀行の低金利の借入れを返済することに結果的になってしまい、本末転倒です。ノンバンクから借りざるをえないのであれば、銀行への返済の減額・猶予、いわゆるリスケジュールを行っておきたいです。

7.資金調達できないのであれば、どの支払いを遅らせるか、考えて交渉する。

銀行、ノンバンクなどから資金調達できない、もしくは資金調達をし尽くしてしまいもう資金調達手段がない。この場合、いよいよ支払いを遅らせることを考えます。どの支払いを優先的に支払い、どの支払いを遅らせるか、資金繰り表を見て考えます。そして遅らせた支払いはいつ、いくらずつ支払いを行っていくのか、資金繰り表を見て考えます。そして支払いを遅らせる先には誠意をもって交渉します。

中小企業が資金繰りを改善するために、まずはすぐ動かねばならない3つのこと

以上が「資金繰り改善のための7つの行動」とその順番です。特に1.毎月の損益を分かるようにすること、2.経営改善を行って毎月利益が上がるようにすること、3.売掛金の回収を徹底的に行うこと、この3つはすぐに行動しなければなりません。これを行うだけでもあなたの会社の資金繰りは大きく改善します。