銀行は融資審査にあたって企業の返済力をどう計算するか
あなたの会社が銀行に融資の申込みをした後、銀行は融資審査を行いますが、その中で銀行が最も重視すること。それは「この会社は最後まで返済を行うことができるかどうか」です。つまり「返済力」です。
企業が融資の返済をできる力を見るために、銀行は決算書の中の、損益計算書をチェックします。返済力をすぐに見ることのできる計算式があります。それは「当期純利益+減価償却費」です。これで計算されたものを年間キャッシュフローと言います。
年間キャッシュフローとは、1年間でその企業がどれだけの現金を稼いだか、という指標です。正確にキャッシュフローを計算するにはキャッシュフロー計算書という書類を作りますが、中小企業でキャッシュフロー計算書を作っている会社はなかなかありません。そのため銀行は、簡易的に、当期純利益+減価償却費という計算式を年間キャッシュフローとして計算します。
なお減価償却費は、実際に現金が流出しない経費であるので、減価償却費も引かれた後の利益である当期純利益に減価償却費を足して、年間キャッシュフローが計算されます。なお減価償却費は販売費及び一般管理費の中にありますが、企業によっては加えて売上原価にもあり、それも加えて減価償却費を計算します。
年間キャッシュフローが、企業が銀行に1年間、融資を返済する金額(元金のみ。毎月の返済額×12カ月で年間の融資返済額が計算されます)を上回っていれば、その企業は返済できる力がある、と銀行に見られます。
銀行が融資審査で企業の返済力を見る例
例を挙げます。損益計算書を見ると、当期純利益 500万円、減価償却費1500万円であった場合、年間キャッシュフローは 1500+500=2000万円です。この企業がこれから銀行に融資を申し込むとします。企業が現在、すでに存在している借入金の年間返済額が 1800万円、申し込む融資の年間返済額が 1200万円であるとすると、その融資が実行になった後の年間返済額は 1800+1200=3000万円です。
年間キャッシュフロー2000万円<融資実行後年間返済額3000万円
となりますので、銀行はその企業の融資の返済力が乏しいのでは、と見ます。そうなると、この企業は新たな融資を受けることができないのでしょうか。
返済力が乏しければ、銀行は融資審査で企業の資金調達力を見る
世の中、年間キャッシュフローが融資の年間返済額を上回っている中小企業は、あまりありません。下回っている企業の方が圧倒的に多数です。そのような企業に対し、銀行は「では今後、銀行から資金調達をし続けていける力があるか」を見ます。
年間キャッシュフローが 2000万円、年間返済額が3000万円であれば、1年間に現金預金が3000-2000=1000万円減少することを意味します。これが続くと、そのうち現金預金の底が尽き、融資の返済が困難となります。そこで銀行から新たな融資を受けることにより現金預金残高を回復させる必要があります。
年間キャッシュフローが年間返済額を下回っている、一見、返済に乏しいとされる企業。そのような企業でも、同じ銀行、もしくは別の銀行から、将来も新たな融資を受け続けられるのであれば、返済は継続できることになります。
将来も銀行から新たな融資を受け続けられるかは、決算書の内容と、将来どのように売上・利益を上げていくかを書いた経営計画書などにより判断されます。そのために、次の2点が重要です。
- 利益はできるだけ多く上げられるようにして決算書の内容を少しでも良くすること。
- 経営計画をしっかり書くこと。
この2点が、返済力が乏しいと見られる企業でも銀行から融資を受けられるようにするために重要です。