売上・利益減少すると、銀行からの融資はどうなるか

決算の結果、売上・利益減少となった。売上・利益の減少が、両方、もしくは片方であっても、そのままにしていれば、以前より銀行から融資を受けにくくなるかもしれません。

この場合、銀行に対し、売上・利益の減少した原因と今後の対策を、どのように説明するか。これにより、銀行が受ける印象は全く異なります。銀行に、あなたの会社の良いイメージを与えることにより、今後の融資の受けやすさが違ってきます。

銀行は、融資先企業の売上減少、利益減少、利益の赤字化に、目を光らせています。売上・利益が減少すると、人件費・賃借料など固定費の負担が重くのしかかります。また借入金の返済負担・利息負担が重くのしかかります。そうなると、企業は経営の危機に直面しかねません。銀行の融資審査で、決算書の内容が一番、重視されることです。銀行が企業の売上減少・利益減少を気にかけることは、当然のことです。

しかし世の中、売上・利益が減少している企業はたくさんあります。はたして、そのような企業は全て、銀行から融資を受けることが困難となっているのでしょうか。

今後の融資審査を有利にするため売上・利益減少の理由を説明する

売上・利益が減少しても、変わらずに融資を受けている企業はたくさんあります。そのような企業は、売上・利益減少の原因を銀行が納得いくように説明しています。さらに経営計画書を作成し、今後の業績回復への道筋を立て銀行に説明している企業もあります。そのような行動ができると、あなたの会社が今後も融資を受けやすくなります。

銀行は、あなたの会社だけではなく、他にも売上・利益減少した企業をたくさん見ています。その中で、売上・利益が減少した理由を「不景気のせい」にしてなんの改善策も銀行に示さない企業もあれば、売上・利益が減少した原因を分析した上、経営計画書にて業績回復への道筋を銀行に説明している企業もあります。売上・利益減少の原因を分析し対策をとろうとしない企業よりも、しっかり分析・対策をとろうとする企業の方を銀行が高く評価するのは当然です。

では、どのように銀行に売上・利益減少の原因を分析し説明したらよいでしょうか。

売上減少の原因をどう分析し、銀行へ説明するか

売上減少について。まずは次のように集計してみます。

  • 商品別の売上金額を、過去3~10年分、集計し、表にする。
  • 得意先別の売上金額を、過去3~10年分、集計し、表にする
  • 地域別・支店別の売上金額を、過去3~10年分、集計し、表にする

このような表を作成すると、どこで売上が減少しているかが見えてきます。そして売上が減少した部分において、その原因を分析し、銀行に説明してください。

利益減少の原因をどう分析し、銀行へ説明するか

利益減少について。下記の観点を参考に、まずは原因を分析してください。そして銀行に説明してください。

  • 売上減少がどう影響したか。
  • 原価率(売上原価÷売上高)が増加したのか。していればどこの部分が特に増加し、その原因は何か。
  • 経費(販売費及び一般管理費)が増加したのか。していればどこの部分が特に増加し、その原因は何か。
  • その期、特別の原因があったのか(例:不動産売却で損失、役員退職金支払い)

売上・利益減少の原因を分析したら経営計画書を作り銀行へ説明

売上・利益の減少の原因を分析し、銀行に説明したら、今後どのように業績を回復させるのか、経営計画書を作成し、銀行に説明してください。

例えば、売上増加の対策としては、新商品の開発・営業力の強化・広告戦略の見直しなどがあります。利益増加の対策としては、粗利率の高い商品の販売に力を入れる、人件費削減を行うなどが考えられます。

売上減少の原因分析の方法と銀行への説明方法の例

(単位:百万円)

2017年
3月期
2018年
3月期
2019年
3月期
合計 548 576 487
A商品 317 345 296
B商品 138 128 131
C商品 93 103 60

2019年3月期は前期に比べ売上高は89百万円減少しました。B商品が3百万円増加となったものの、A商品が49百万円、C商品が43百万円の減少しことが響きました。A商品の売上減少の原因は、他社で競合商品が発売されたこと、C商品の売上減少の原因は、主要販売先D社が購入を抑えていることです。

今後の売上増加策として、A商品では弊社商品の改善により競争力を上げていくこと、C商品では新たな販路を開拓すること、を行います。

利益減少の原因分析の方法と銀行への説明方法の例

(単位:百万円)

2017年
3月期
2018年
3月期
2019年
3月期
売上高 548 576 487
売上原価 435 458 409
売上総利益 113 118 78
販売費
一般管理費
87 88 70
(うち人件費) 38 40 32
営業利益 26 30 8
営業外利益 1 2 2
営業外費用 4 6 5
経常利益 23 26 5
特別利益 0 0 1
特別損失 0 1 26
税引前
当期純利益
23 25 △20
法人税等 11 13 0
当期純利益 12 12 △20

2019年3月期は、売上高が前期比89百万円減少しました。また粗利率(売上高総利益率)が前期20.5%(118÷576)から16.0%(78÷487)と低下したことも響き、売上総利益は前期比40百万円の減少となってしまいました。粗利率低下は、仕入価格の値上げをされてしまったことが主な原因です。

人件費を8百万円減少させたなど、販売費一般管理費の削減努力をしたのですが、営業利益は前期比22百万円減少の8百万円となってしまいました。また、役員Eの退職により役員退職金を25百万円支払い、当期純利益は赤字となってしまいました。

売上向上策と、仕入先の開拓による仕入価格の抑制、また余剰人員を早期退職制度により退職を促すなど経費削減努力を進め、次期決算では経常利益を20百万円に回復させることを目指します。