銀行が融資審査を行う稟議書とはどのような仕組みか

銀行は、融資審査を稟議の方法で行います。銀行の審査では、企業から融資の申込みを受けた担当者が稟議書を作成し、稟議書が銀行内で回覧されることにより融資審査され、最終決裁者で、融資を行うかどうか決裁されます。

稟議書は、銀行内で以下の順番で回覧されます。

申込みを受けた担当者(支店内の営業係であることが多い)が稟議書を作成→営業係長→融資係→融資係長→副支店長→支店長

支店長が審査の最終決裁者となる場合はこのとおりですが、銀行内部で決められている審査の権限のルールにより、本部(審査部・融資部などの名称の部署)が審査の最終決裁者となる場合もあります。その場合、支店長の後、本部に稟議書が回覧されます。

誰が審査の最終決裁者になるか、下記の項目により銀行内でルールが決められています。

  • 支店長の「格」(銀行内で中心となる店舗の支店長は権限が大きい)
  • 今回の融資が実行された後の、その銀行のその企業に対する融資の総額
  • 企業の債務者区分・信用格付
  • 信用保証協会による保証の有無
  • 担保より保全されている金額

などです。なお、権限のルールにより、本部の後に銀行の役員、さらに頭取まで稟議書が回覧、審査され決裁される場合もあります。

銀行が融資審査を行う稟議書の中はどうなっているか

融資審査において、稟議書の中では、次のことが書かれます。

企業の概略

業種、取扱商品、創業・設立年月、住所、営業所、沿革など

業績

直近3期の決算内容(損益計算書・貸借対照表の主要項目)、直近の試算表の内容

融資の金額

証書貸付・手形貸付の場合は金額、当座貸越の場合は極度額(限度額)

融資の方法

証書貸付・手形貸付・当座貸越・商業手形割引など

返済期間と返済方法

(例)返済期間5年60回払い・3カ月後一括返済

金利

固定金利・変動金利の別、何%の金利

金利の算定根拠

(例)金利1.500%(短期プライムレート1.375%+信用格付6格上乗せ基準0.500%-0.375%)

資金使途

(例)仕入支払資金・機械購入資金

返済ができる根拠

(例)直近決算、当期純利益500万円+減価償却費1000万円=年間キャッシュフロー1500万円。今回の融資の返済が加わると全銀行の返済合計3000万円となり年間キャッシュフローを上回るが、他行も当社への融資姿勢は積極的であり、今後の調達に問題ないと考える。

保全

融資残高の合計と、信用保証協会や保証会社による保証額、担保価値(担保は不動産・株式・預金など)を加えた保全額とを比較し、もし返済できなくなったら保全によりどれだけ回収可能か。

融資以外の企業との取引状況

預金の平均残高、取引している項目(ビジネスクラブ会員・クレジットカード・ネットバンキングなど)、年間の手数料収入など

意見

担当者による意見。今回の融資を行って問題ないかどうか。その根拠は何か。過去の実績はどうか(例:当社は30年前より当行をメインバンクとして取引。返済状況も問題なし。)、融資以外にその企業からどんな収益をねらえるのか(例:振込を当行で多くやってもらえる、従業員の給与入金口座を当行に指定してもらえる)、など。

融資審査の稟議書は銀行の中でどのように回覧されるか

稟議書が作成された後、上で述べたように稟議書は銀行内で何人かに回覧、審査されます。稟議書が回ってきたら、その銀行員は稟議書を読み、自分としては融資を実行したいかどうか、根拠とともに書いていきます。私が勤めていた銀行では、稟議書に「可」「不可」欄があり、どちらかにシャチハタ印を押した上で、意見を書いていました。

稟議書の内容や、回覧された銀行員による意見をもとに、最終決裁者である支店長や本部が、融資を実行するかどうか最終審査、決裁します。融資を実行する場合でも条件を付けることもできます。稟議書に書かれたよりも、融資の金額を下げる、返済期間を短くする、金利を高くする、などです。

融資の審査で稟議書にどう書かれるかをイメージし銀行取引する

このように、融資審査の稟議書で書かれている内容が分かると、審査を有利にするために稟議書で前向きなことを書いてもらい審査を通しやすくするにはどうしたらよいか、イメージできるのではないでしょうか。融資を積極的に出してくれる銀行では手数料取引を増やす、前向きな意見を書いてもらうために経営計画書を提出して説明しておく、などです。

また、あなたの会社が銀行に提出した書類は、融資審査において、稟議書に添付してくれます。会社の業務内容や取扱商品が書かれたパンフレット、経営計画書など、銀行から求められなくても積極的に提出することにより、あなたの会社をアピールして審査を有利にできます。

稟議書の中で書かれることをイメージし、銀行で融資の審査を有利に進めてもらうにはどうすればよいか、考えてみてください。