質問
当方、債務超過状態のコンピュータソフト開発会社です。直近の決算では、売上高が4400万円、経常損失760万円、累積赤字2700万円です。借入金残高は日本政策金融公庫1400万円、銀行1000万円、私(社長)と母親から合計2000万円です。毎月返済額は日本政策金融公庫が30万円、銀行15万円です。このような状況で、日本政策金融公庫にて2月より1年間、リスケジュール(返済猶予)してもらいました。
このような状態でも、お先真っ暗ではなく、徐々に仕事が復活してきているので希望を持っています。ただ、今はとにかく資金がありません。
もうこれ以上借入れは不可能と思っておりますが、先日、あるコンサルタント会社より中小企業等経営強化法による経営革新計画の承認を受ければ、信用保証協会の保証枠に別枠が設けられ、信用力の向上により融資が受けられる可能性があると聞きました。そのコンサルタント会社にサポートを頼むと50万円弱の費用が発生しますが、承認を得られなければ全額返金という約束です。
確かに承認を得られれば有利に違いないと思っておりますが、当方のような財務状態でも、経営革新計画の承認を受けられたら新たな融資の可能性はあるものでしょうか。
(U様)
回答
融資を受けられる可能性は、状況からすると、1%といったところでしょう。つまり、ほぼ無理ということです。
経営革新計画の承認を受けたからといってあなたの会社の信用が上がることは全くなく、融資審査はあくまで、あなたの会社の財務状況、融資の返済状況などをもとに行われます。銀行でも信用保証協会でも日本政策金融公庫でも同じです。経営革新計画の承認を得たところで、通常の融資審査となんら変わりません。
リスケジュール中は経営革新計画の承認を受けても融資は難しい
金融機関から見て、あなたの会社に対する融資審査のマイナス点は、
- 日本政策金融公庫の融資をリスケジュール(返済猶予)している。
- 決算で経常損失が大きく赤字である。
- 債務超過である。
この3つです。
1のリスケジュールしていることについて。リスケジュールしている状況では新たな融資は難しいです。最近(2019年時点)はリスケジュールしている企業でも融資が出るケースは増えていますが、リスケジュールしてから数年たっている企業で、経営改善計画書による経営改善が進んでいる状況でなければリスケジュール中の新たな融資は難しいです。あなたの会社ではリスケジュールを行ってから時間がたっていないため、新たな融資を受けるのは難しいと言わざるをえません。
2の経常損失が赤字であることについて。黒字化のため、売上増加、粗利率増加、経費削減などの経営改善策を行う必要があります。また赤字の状況で融資を通すには、どのように黒字化するのか、経営改善計画書を作成して銀行に説明する必要があります。
3の債務超過であることについて。社長とお母様からの借入を資本金に振り替えたり、債務免除したりして、2000万円分の債務超過を埋めることはできます(資本金への振り替えや債務免除を具体的に行う場合、税務面の影響も考えなければならないので顧問税理士に相談してください。)。それでも債務超過が残る場合、今後の決算での利益計上か、増資を行うことにより債務超過を解消する必要があります。なおこのような対策を行ったとしても、早くて次の決算の貸借対照表上で債務超過が解消されるため、次の決算が出るまでは債務超過状態は変わらず、融資審査に不利になります。
以上のように、融資審査を通しやすくするには、次の決算で債務超過解消、黒字化を達成すること。そして経営改善計画書により、今後も利益を出し続け早期にリスケジュールを解消する道を示すこと。これらが必要です。また融資審査時までにリスケジュールを解消できていることがベストです。
ただ、現時点で融資審査が通るかどうかについては、可能性は1%しかありません。今は無理でも将来、融資が通る可能性を高めるためには、上記1、2、3の問題を解消する必要があります。ただ、問題解消の努力は相当必要ですし、少なくとも半年~1年の期間は必要となることでしょう。このような中、今、経営革新計画の承認を受けたところで、融資審査が通る可能性が上がるわけではありません。今、50万円弱の費用を支払って経営革新計画の承認を受ける必要があるのかどうか、しっかり考えてみてください。
経営革新計画の承認を受けることにより得られる融資とは
最後に、経営革新計画の承認を受けることのメリットについて解説します。メリットは、「経営革新計画で承認された事業」に対し、信用保証協会で別枠の保証枠ができる、日本政策金融公庫で低金利の融資が受けられる、補助金、販路開拓支援、その他の支援を受けられる、です。
ここで押さえておかねばならないことは、経営革新計画の承認を受けることでこれらのメリットを必ず受けられるわけではなく、これらのメリットを受ける資格ができるにすぎない、ということです。
経営者の中には、経営革新計画の承認を受ければ、融資は必ず受けられると勘違いする人もいます。しかし融資は、上で述べたようにあくまで、銀行や信用保証協会、日本政策金融公庫による審査しだいです。経営革新計画の承認を受けているからといって、融資が通りやすくなるわけではありません。
経営革新計画の承認を受けた企業が、承認を受けた事実を銀行にアピールすることにより、経営革新計画で承認された事業のための融資が行われた事例は多くあります。ただ、融資が受けられた企業のほとんどは財務内容が悪いわけではなく、そしてリスケジュール(返済猶予)している状況ではなく正常に返済していました。経営革新計画の承認を受けていなくても融資が通る可能性が十分にある企業が、経営革新計画の承認を受けることによりその事業を目的とした融資が出た、ということです。
なお、経営革新計画で承認された事業のための融資が出た後は、経営革新計画通りに事業が行われているかどうか、金融機関はチェックします。その事業が進んでいなければ、経営革新計画で承認された事業で使うと言って出した融資が、別のことで使われてしまったのか、金融機関から疑われることがあります。