質問

会計事務所を営んでいます。

リスケジュール(返済減額・返済猶予)を行った後、経営改善して、正常先として新規の融資を企業が受けられるようになる方法を教えてください。

リスケジュールしている融資を元の返済ペースに戻すこと以外に私が人から聞いたのは、融資残高が年間キャッシュフローの10年以内に収まるのであれば、銀行によっては他の銀行分も含め、リスケジュールしている融資の全面借り換えに応じてくれる可能性がある、というものです。もしそうであれば、全面借り換えを視野に入れたリスケジュール脱出計画を具体的にお客様に提案できます。いかがでしょうか。

(M様)

回答

リスケジュールをしている融資の全面借り換えとなれば、その後は正常返済になります。企業の状況によっては、銀行はリスケジュールしている融資の全面借り換えに応じてくれるかもしれません。ただしリスケジュールしている融資の1つの銀行での全面借り換えは、銀行からするととてもハードルが高いことです。全面借り換えすることにより、複数の銀行ではなく、1つの銀行がその企業の融資を全て引き受けることになるのですから。

企業が将来、財務内容が問題ない状態になるという確信を銀行が持ち、またその企業と深くつきあうメリットを銀行が感じるのでないかぎり、リスケジュールしている融資の全面借り換えしてくれるケースはなかなかないでしょう。ただし他の銀行の融資が、信用保証協会の保証が付いていたり担保を入れていたりしている場合。それらを1つの銀行にまとめられて、保全を図る(もし返済できなくなっても信用保証協会が弁済したり担保を売却して回収できたりする)ことが可能であれば、リスケジュールしている融資を1つの銀行に全面借り換えできる可能性は高くなります。

私が手掛けたケースでは、4つの金融機関から融資を受け、リスケジュールしていた企業が、メインバンクと日本政策金融公庫(今まで融資なし)で借り換えして返済が正常化しました。メインバンク以外の3つの金融機関でプロパー融資(信用保証協会保証付でない融資)があり、また3つの金融機関で不動産担保を入れていたものの担保価値はなかったのですが、日本政策金融公庫に融資を出してもらい、残り3つの金融機関のプロパー融資を補充しました。日本政策金融公庫は民間金融機関を補完する存在ですので、実質はメインバンク1つで全面借り換えしたと同じと言えます。

このように、リスケジュールしている企業が、1つの金融機関で全面借り換えすることは、その金融機関が融資を全て抱えるほどのメリットを感じ、かつ保全を図ることができないかぎり、ハードルは高いものです。

また1つの銀行で融資をまとめることによる企業側のメリットも考えなければなりません。1つの銀行ではなく複数の銀行から融資を受けている方が、企業としては融資の選択肢を多く持てることになり、また銀行間で競争させることもできることから、メリットは大きいです。そこをなぜ、全面借り換えして1つの銀行にまとめるのか。メリットがなければ、意味がありません。

また返済の正常化を図る方法としては、リスケジュールしているそれぞれの融資の返済金額を元に戻す他、リスケジュールしている融資を複数の銀行で借り換えて返済金額を抑えた上で返済の正常化を図る方法もあります。借り換えする場合、信用保証協会保証付融資では「経営改善サポート保証」という制度で借り換えることにより15年返済とできますが、プロパー融資では長い返済期間での借り換えを行うことが難しく、銀行との交渉となります。

リスケジュールしている融資を1つの銀行で全面借り換えする場合。リスケジュールしている複数の銀行での融資の返済金額を正常に戻す場合。リスケジュールしている融資を複数の銀行で借り換えして正常返済にする場合。いずれも、リスケジュール状態を脱出し、正常な返済になることを意味します。その結果、再び銀行から融資を受けられるようになります。