下の表は、中小企業がとることのできる資金調達の手段と、とるべき優先順位です。

資金調達の手段には大きく、融資、出資に分かれます。この表では、融資・資産売却・知人から調達、この3つの手段を合わせて融資等、と表しています。

融資等と出資とでは、それぞれのメリット・デメリットがあります。あなたの会社の戦略により、どちらの手段が良いか違いますので、分けて考えます。融資等と出資とで表を別にし、融資等の中では、企業がとるべき優先順位を1番から表しました。

融資等
資金調達の手段 資金の出し手 詳細 優先順位
融資 銀行(信用金庫・信用組合) プロパー
信用保証協会保証付
ノンバンクによる保証付
個人向けカードローン
政府系金融機関
ノンバンク 無担保
有担保
資産売却 ファクタリング
固定資産リースバック
知人から調達 知人・親族 融資
少人数私募債
出資
資金調達の手段 資金の出し手
出資 ベンチャーキャピタル
事業会社・個人投資家

企業がとるべき資金調達の手段は、なぜこのような優先順位になるのか

表で記載した資金調達の手段の優先順位には理由があります。その理由を知ることで、あなたの会社にとって最適な資金調達のプランを立てることができます。

1.銀行・政府系金融機関からの融資が、ノンバンクや、銀行カードローン(個人向け)の融資より優先順位が高い理由

まず金利の違いがあります。銀行・政府系金融機関から融資を受ける場合、金利は3%以下ですが、ノンバンクや銀行カードローン(個人向け)では、無担保であれば3%~15%にもなります。

次に、受けられる融資金額の違いがあります。無担保の場合、銀行・政府系金融機関からであれば、企業に信用がついてこれば数千万円、数億円の融資を受けることも可能です。一方、ノンバンクや銀行カードローン(個人向け)であれば、いくら信用がついてもせいぜい300~500万円までです。

またノンバンクから融資を受けてしまうと、そうしなければ資金が回らない企業と見られ、銀行・政府系金融機関からの信用が落ちてしまいます。ノンバンクから融資を受けた事実を銀行・政府系金融機関が知れば、その後、銀行・政府系金融機関からの融資が出づらくなります。

以上が、ノンバンクや、銀行カードローン(個人向け)からよりも銀行・政府系金融機関から融資を受けることを優先すべき理由です。

2.銀行・政府系金融機関・ノンバンクからの融資が、知人・親族からの資金調達よりも優先順位が高い理由

知人や親族からの資金調達は、最終手段と考えるべきです。万が一返済できなくなった時、迷惑をかけられる相手であるかどうか、想像すると分かります。

銀行・政府系金融機関・ノンバンクは、事業として融資を行っています。そのため、ある程度の貸倒れは見込んでいます。一方で知人や親族の場合、知人や親族が保有している貯金を切り崩して貸してくれることになります。

あなたの会社が銀行等へ返済できなくなったら、銀行等は貸倒れ処理をするだけです。一方、知人や親族へ返済できなくなったら、その知人や親族は大きな痛手を被ってしまいます。

3.銀行・政府系金融機関からの融資が、資産売却よりも優先順位が高い理由

資産売却(ファクタリング・固定資産リースバック等)は、持っている資産を売却することで資金を手に入れる資金調達手段です。無駄に保有している資産を売却するならまだしも、そうでなければ資産は安易に売却すべきではありません。銀行・政府系金融機関から融資が受けられない時にやむをえずとる手段の一つとして、資産売却を考えます。

4.銀行からの融資の中で、プロパー融資を最優先し、次に信用保証協会保証付融資、最後にノンバンク保証付融資を考えるべき理由

銀行の融資の中で、信用保証協会やノンバンクが保証しないのがプロパー融資、信用保証協会が保証するのが信用保証協会保証付融資、ノンバンクが保証会社となるのがノンバンク保証付融資です。

プロパー融資の場合、もし企業が返済できなくなったら銀行が損失を全てかぶります。一方、信用保証協会やノンバンクが銀行融資の保証をしていれば、もし企業が返済できなくなった場合、一部もしくは全額を、代わりにいったん返済(代位弁済)してくれます。その後、企業や、連帯保証人である社長が、信用保証協会やノンバンクに返済していきます。

この優先順位の理由について。まず、融資審査の厳しさの違いがあります。プロパー融資と、信用保証協会保証付融資、ノンバンク保証付融資の中では、プロパー融資が最も審査は厳しいです。一方、信用保証協会やノンバンクが保証すれば、銀行としては貸倒れリスクが小さくなるので、融資をしやすくなります。そのため、プロパー融資をせっかく受けられるのならそれで受けるべきです。業績や財務内容が悪化するなど、銀行からの評価が厳しくなりプロパー融資が受けられなくなった場合に信用保証協会保証付融資・ノンバンク保証付融資を考えたいです。

また融資上限の有無も、優先順位の理由です。プロパー融資では、一つの銀行から受けられる融資総額の上限はありません。一方、信用保証協会保証付融資・ノンバンク保証付融資には、総額いくらまで保証する、という上限があります。プロパー融資は上限がないので、プロパー融資を受けられるならそれで受け、将来に備えて信用保証協会やノンバンクの保証枠を空けておきたいです。

次に、プロパー融資を受けられない企業が、信用保証協会、ノンバンク、どちらの保証を付けた融資を優先させるべきか。最近は銀行とノンバンクの提携が多くなり、ノンバンク保証付融資の商品を用意する銀行が増えてきました。ただし依然、信用保証協会保証付融資の方が主流です。信用保証協会保証付融資を受けられるなら、ノンバンク保証付融資を受ける必要はありません。ただ信用保証協会保証付融資には上限があり、それを補完するものとしてノンバンク保証付融資を考えたいです。

またノンバンク保証付融資では、保証審査にあたりノンバンクが企業の代表者の個人信用情報をしっかり見ます(一方、銀行や信用保証協会では個人信用情報を見ないことが多い)。個人信用情報に傷がある代表者の場合、ノンバンクの保証審査が通らない可能性が高いです。そうなると融資を申込んだ銀行でも、なぜノンバンクの保証審査が通らなかったのか理由を探ってくるかもしれず、それも嫌なところです。

5.銀行のプロパー融資を政府系金融機関の融資より優先させるべき理由

政府系金融機関に比べ、銀行のプロパー融資の方が融資審査は厳しいです。中小企業が融資を受ける政府系金融機関でまず思い付くのは日本政策金融公庫ですが、その基本理念は「国の政策の下、民間金融機関の補完を旨としつつ、社会のニーズに対応して、種々の手法により、政策金融を機動的に実施する。」です。一方、民間企業である銀行は、貸倒れを出さないことへの意識がより高いので、銀行のプロパー融資の方が審査は厳しくなります。

信用保証協会保証付融資より銀行のプロパー融資を優先させることと同じ理由で、銀行のプロパー融資は政府系金融機関の融資より優先させるべきです。銀行のプロパー融資が受けられない時に、信用保証協会保証付融資や政府系金融機関での融資を考えたいです。