知人や親族からの借入れは、相手がお金を捨ててもよいと考えているのでないかぎり、とるべき資金調達手段ではありません。
銀行や政府系金融機関、ノンバンクといった、融資を行って利息収入を得ることを事業としているところでは、ある程度の貸倒れを見込んでいるものです。ただし、借りる相手が知人の場合、知人自らの貯金を貸してもらうことになります。そして返済できなくなった時に知人にかける迷惑はとても大きいです。
知人から借りるとしたら、会社が倒産し、経営者が次の人生に向け生活を立て直す時に頼るぐらいにすべきです。
知人から借りたお金はかなりの確率で返せない
筆者が経験してきたところでは、かなりの確率で、借りた知人に返済ができません。次のようなケースを見てきました。
「知人から1カ月後に返すと言って500万円を借りた経営者。しかし1カ月後に500万円用意できず、毎月、必ず来月には返すから、と言ってその場をしのぐが、資金がなく返せない。」
「5年間、赤字を続け、その間、親から5年間で2000万円借りた経営者。親が簡単に貸してくれたので甘えてしまって経営改善をしようとしなかった。親は老後資金として貯蓄していたのに、ほとんどなくなってしまった。」
「年長である知人の経営者にかわいがられ、2年間で7000万円を借りることができた経営者。金を借りることばかりしていて経営改善をせず、赤字を出し続け、借りた7000万円もすぐに消えてしまった。」
借りた経営者は、必ず返す、と思って知人から借りるものです。しかし、実際は、絶対に返せるという計算ができていないまま、借りてしまいます。「1カ月後には返すから。」経営者はこのように知人に頼み、お金を借ります。しかし、その「1カ月後」は、絶対にその日までに返せると計算して出た言葉であることがなかなかありません。知人から何としてでも借りたい経営者が、当てずっぽうに言ったのが「1カ月後」です。
では、このように言った経営者は、本当に1カ月後に返す気がないのでしょうか。そうではありません。知人に1カ月後に返すと言ったからには、必ず返そうと考えます。ではどのように、返すお金を作ろうとするのでしょうか。別のところから借りようとするのです。
知人からお金を借りる経営者の多くは、銀行や日本政策金融公庫、ノンバンクなどから借りられないから知人にお金を借りたのです。やはり銀行等から借入れができず、他の知人をあたります。もし他の知人から借りて初めの知人に返すことができた場合。次も同じことが繰り返されます。さらに他の知人にお金を貸してくれないか、頼みます。この繰り返しです。そして、新たに貸してくれる知人がとうとう現れなくなった時。最後に借りた知人へ返せなくなる可能性が高くなります。
それでも知人からお金を借りるのであれば、借用書や経営計画書を使って説得
数日後に売掛先等から入金がある見込みがあって一時的に知人からお金を借りたい場合など、どうしても知人から借りたい場合。
知人にお金を借りに行っても、簡単にはお金を貸してくれないでしょう。その場合、知人を説得するために、次の2つの方法があります。
- 借用書を作り、返済方法の約束をする。
- 会社をどうやって立て直していくか、経営計画書を作って見せる。
1.借用書を作り、返済方法の約束をする。
お金を貸してほしいと頼まれた側の心境を考えてみます。真っ先に考えることは、貸したお金は本当に返ってくるのか、でしょう。
知人の不安を完全に取り除くことは難しいですが、少しでも取り除くために、借用書を作って相手に差し入れると良いです。その借用書に、どのようなスケジュールで返済するか、記載して約束します。例えば知人から500万円を借りたい場合。毎月100万円ずつ月末に返す、というように約束し、借用書に記載します。
借用書には、収入印紙を貼らなければなりません。借用書は第1号文書にあたり、例えば500万円借りるのであれば、2000円の収入印紙を貼って割印します。借主が印紙代を負担します。
2.会社をどうやって立て直していくか、経営計画書を作って見せる。
お金を貸してほしいと頼まれた時、貸したお金が本当に返ってくるのか。知人としてはこれが何よりも不安です。その不安を少しでも取り除くために、会社をどうやって立て直していくのか、経営計画書を作成し、見せて説明するとよいです。
知人からお金を借りようとする企業の多くは、銀行や日本政策金融公庫などが融資してくれない状況です。そのような状況の会社は、財務内容が悪い場合が多いでしょう。会社をどうやって立て直していくか。口頭ではいくらでも「会社を立て直していく。」と言えるでしょうが、経営計画書まで作って説明できる経営者は、なかなかいないでしょう。経営計画書をしっかり作った上で、経営者からその内容を説明されると、お金を貸すことへの不安は和らぐものです。