銀行や日本政策金融公庫から融資を受けられない会社。そのような会社は、銀行等の既存の融資の返済をリスケジュール(返済減額・返済猶予)して返済負担を軽くした上で、別の金融会社から借入れして会社の立て直し資金とすることが考えられます。
ここで言う別の金融会社には、ビジネクストやビジネスパートナーなどの企業向けノンバンク、アコムやアイフルなどの個人向け消費者金融があります。また銀行等が融資商品として出している個人向けカードローンもあります。
個人で借入れする時に必ず出てくるキーワードが「総量規制」です。総量規制とは、個人の借入れ総額が、原則として年収等の3分の1までに制限される規制のことで、貸金業法に定められています。
総量規制の対象となる借入れ、対象とならない借入れとは
総量規制は、貸金業者から借入れしたものが対象となり、銀行・信用金庫・信用組合・労働金庫からの借入れ(銀行からのカードローンなど)は総量規制の対象外です。クレジットカードについては、キャッシングで借入れするものは総量規制の対象ですが、ショッピングで商品やサービスを購入する場合(分割払いも含む)は総量規制の対象外です。また信販会社のショッピングクレジットも総量規制の対象になりません。
総量規制は、個人の借入れ総額の規制ですので、法人の借入れは対象外です。一方、個人事業主の事業資金は総量規制の対象です。ただし借入れする個人事業主の事業実績や事業計画などに基づいて返済が見込まれるなど、返済能力があると認められる場合は3分の1を超えて借入れできます。
総量規制の除外・例外となる借入れがある
総量規制が除外、例外となる借入れがあります。総量規制での除外・例外の意味は、次の通りです。
除外…総量規制の対象とならない借入れ。総量規制の借入れ残高に含まない。
例外…総量規制の借入れ残高として算入するものの、例外的に年収の3分の1を超えた場合でも、その部分についての返済能力があるか判断された上で借入れできるもの。
総量規制の除外となる借入れ
- 不動産の購入や改良のための借入れ(住宅ローンなど)、またそのつなぎのための借入れ
- 不動産を担保とした借入れ(借入れする人もしくは担保提供者の居宅を除く)
これは、不動産を購入・改良するため以外の借入れです。例えば不動産を担保にした使い道自由である借入れなどです。
- 売却予定の不動産の売却代金により返済できる借入れ
- 自動車購入時の、自動車を担保とした借入れ(自動車ローン)
- 有価証券を担保とする借入れ
- 高額療養費のための借入れ
総量規制の例外となる借入れ
- 借入れする人にとって一方的に有利となる借り換え
借り換え後の金利が下がること、借り換え後は段階的に残高を減らしていくこと、借り換え後の1カ月の負担額が借り換え前を上回らないことが必要です。
- 借入れする人やその親族などで緊急に必要と認められる医療費のための借入れ
- 社会通念上、緊急に必要と認められる費用を支払うための借入れ
10万円以下、3カ月以内の返済が要件です。
- 配偶者と合わせた年収の3分の1以下の借入れ
配偶者の同意が必要です。
- 銀行等から借入れを受けるまでのつなぎ資金のための借入れ
銀行から借入れすることが確実であることが確認でき、1カ月以内の返済であることが要件です。
総量規制の計算で、他社で枠が空いているカードローンはどう考えるか
例えば、貸金業者A社で借入れしたい、もしくはカードローンの枠を作りたい場合。そして他社で既にカードローンの枠があるが、枠いっぱいに借入れしていない場合。A社は総量規制の計算で、他社分はカードローンの極度額ではなく借入れ残高で計算します。
例えば年収450万円の人が、貸金業者A社にカードローン100万円の枠を作ろうと申し込んだとします。そしてその人は、他に貸金業者B社でカードローンの枠が200万円あり、現在の残高は100万円であったとします。A社は、年収450万円の3分の1、150万円をその人に貸付けできる限度と考え、他社のカードローン残高100万円を差し引いた、50万円までの貸付け、もしくはカードローンの枠を設定できることになります。
総量規制では他社の借入れは個人信用情報を見て調べられる
借入れの申込みを受けた貸金業者は、個人信用情報機関が保有する個人信用情報を見て、他の貸金業者からの借入れ残高を調査します。また借入れ中も定期的に、個人信用情報を見ます。他社分も含めた総借入れ残高が年収の3分の1を超えた場合は、カードローンの極度額の減額や、新規借入れの停止を行います。
必要なくても将来に備えて個人で銀行カードローンを作っておくのもよい
総量規制は2010年6月より実施されました。それまでは、年収による借入れの制限はなく、個人信用情報に問題がなければ、多くの借入れを個人でできたものでした。筆者は2004年に勤めていた銀行からコンサルタントとして独立したのですが、銀行を辞める直前に、銀行員としての信用を生かしてカードローンを多く作り独立に備えました。
経営者であれば、今は個人での借入れが必要なくても銀行カードローンの枠を作っておく、というのも将来の備えの一つとなります。消費者金融ではなく銀行からのカードローンであれば、個人信用情報の見栄えはそんなに悪くならないものです。
もし将来、業績が悪化し、会社で銀行等から借入れできず預金が少なくなってしまった場合。既存の融資のリスケジュール(返済減額・返済猶予)を行うことは当然として、緊急の資金繰りに活きてくるのが、過去に作っておいたカードローンです。カードローンは金利が高めなので使わないにこしたことはないですが、万が一の会社の危機の時に、生きてきます。