どのような会社でもコンサルタントは資金調達できるのか

「あなたの会社が資金調達できるようにします。」をうたい文句にして、資金調達を売りにするコンサルタントは、多く存在します。

筆者は2004年に、それまで7年半勤めていた地方銀行を退職し、コンサルタントとして独立しました。独立当初は資金調達のコンサルティングをメインの仕事としていました。しかし資金調達のみを売り物にするコンサルタントの弱点は、相談してきた企業が業績悪化して赤字が出ていたり、債務超過となっていたりする場合、資金調達に成功するのが難しくなることです。

企業の業績が黒字であり、決算書の内容もまずまずであれば、資金調達は成功しやすいでしょう。知識にとぼしい経営者は、資金調達のコンサルタントに相談して資金調達できます。しかし赤字や債務超過である企業の場合。銀行や日本政策金融公庫は、そのような企業を厳しく評価します。いくらコンサルタントが資金調達を得意にしているといっても、赤字や債務超過である企業は、厳しい審査をされ融資を受けられないことが多いです。それが資金調達コンサルタントの限界です。

資金調達コンサルタントは、可能性を引き上げる仕事ではあるが

業績が黒字であり、決算書の内容もまずまずである企業の場合。経営者が独自に動いた場合の資金調達の可能性が60%であるとして、資金調達コンサルタントは可能性を80%に引き上げます。しかし赤字や債務超過である企業の場合。通常では資金調達の可能性が5%しかないところ、可能性を10%に引き上げます。確かにコンサルタントは資金調達の可能性を高めるのですが、これが限界です。

もしかしたら、5%の可能性を80%へ引き上げるコンサルタントがいるかもしれません。しかしそのようなコンサルタントは、決算書の偽造・粉飾決算を行い、銀行を欺いて資金調達を行うものです。

決算書の偽造・粉飾決算は犯罪です。詐欺罪にあたります。銀行を欺いて融資を受けたことが見つかれば、刑事で訴えられてもおかしくありません。時々、粉飾決算で逮捕された経営者のニュースを見かけます。通常の資金調達コンサルタントでは、赤字や債務超過の企業で資金調達を行うことは、90%無理なのです。

赤字に陥った企業の、本当の問題解決策は何か

そもそも赤字に陥った企業は「赤字を黒字にする経営改善を行うこと」が問題解決策なのであって、「赤字を埋めるために資金調達を行うこと」は問題解決策になりません。黒字で決算書の内容もまずまずである企業が、コンサルタントを、資金調達の可能性を高めるために活用するのはよいでしょう。しかし赤字や債務超過の企業が、資金調達コンサルタントを頼りにするのは無理があります。

筆者も、独立当初は資金調達のコンサルティングを仕事の中心にしていましたが、相談に来る企業のほとんどは「赤字だから資金調達したい」と言ってきました。そのような企業の問題解決策は「資金調達」なのだろうかと疑問に思い、仕事の方向を変えました。赤字や債務超過など厳しい状態に陥ってしまった企業、資金繰りが厳しい企業を立て直すという仕事。資金繰り改善、経営改善のコンサルティングに方向を変えました。

厳しい状況に陥っている経営者は、問題解決策を資金調達に求めると失敗します。赤字を早急に黒字にしなければなりません。資金が流出している原因をつきとめ、流出を止めなければなりません。銀行や日本政策金融公庫から新たな融資が受けられないのであれば、既存の融資の返済を続けるのは資金の流出となりいずれ資金が尽きてしまいます。銀行等と交渉し、リスケジュール(返済減額、返済猶予)してもらわねばなりません。その上で事業が赤字であれば早急に経営改善して黒字化しなければなりません。

銀行等への返済のリスケジュールと、黒字化への経営改善の過程で、資金が足りなくなるかもしれません。その場合はノンバンクから資金調達を行い、会社を立て直すための資金として活用する手があります。このような場合、経営者に知識がとぼしければ、資金調達のコンサルタントに頼ってもよいでしょう。しかし経営改善を進めなければ、いくらノンバンクから調達できても、資金はすぐに消えてしまいます。

事業が赤字で資金不足に陥った経営者は真っ先に資金調達を考える

筆者は数千名の中小企業経営者からの資金繰りの相談を受けてきました。ただ、事業が赤字で資金不足に陥った経営者のほとんどは、資金調達に問題解決を求める傾向があります。資金調達できれば経営の問題は解決するのだ、と思ってしまっています。しかし資金調達しても、赤字を出し続ければ資金はすぐに消えてしまいます。

資金繰りが厳しければ、事業の赤字を黒字にすることにまず取り掛かります。その間の資金繰り改善策として、既存の銀行融資のリスケジュール、ノンバンクからの資金調達に動く、という考え方を経営者は持ちたいものです。