資金調達したいが経営者に経験がなく、どうしたら良いか分からない。銀行や日本政策金融公庫から融資をなかなか受けられない。そのような時、経営者はコンサルタントに資金調達を相談することがあります。コンサルタントが顧問に入り資金繰り改善・経営改善を行うのではなく、資金調達だけを経営者はコンサルタントに求める場合。その報酬は融資実行額に対する成功報酬で決められることが多いです。
この成功報酬は出資法で5%が上限と決められています。なお報酬の名目が成功報酬ではなくコンサルタント料でも、実質成功報酬であれば同様です。着手金を取る場合も、この5%の中に含めなければなりません。
出資法
第四条 金銭の貸借の媒介を行う者は、その媒介に係る貸借の金額の百分の五に相当する金額を超える手数料の契約をし、又はこれを超える手数料を受領してはならない。
資金調達コンサルタントは、依頼をした企業が融資を受けられるようにする仕事です。経営計画書や資金繰り表、資金必要理由などの資料を経営者と話し合った上で作成し、資金調達できる可能性を高めます。資金調達コンサルタントが銀行の担当者と知り合いであれば、その銀行を紹介してくれることもあります。
成功報酬を数十%もとる暴利の資金調達コンサルタントに気をつける
出資法で決められている上限の成功報酬をはるかに超えた成功報酬をとる資金調達コンサルタントがいます。30%や50%など、暴利を取ります。常識的な判断ができる経営者であれば成功報酬を数十%もとられたら問題と考えられます。しかし経営者が資金繰りに追われてワラにもすがる思いであり、常識的な判断ができる状態でない場合。経営者はとにかく資金調達できればよいと考え、このような暴利の成功報酬をOKしてしまいます。
また暴利の成功報酬で引き受ける資金調達コンサルタントは、たいてい、やってはならないやり方をします。やってはならないやり方とは、銀行に提出する資料を偽造することです。特に決算書を偽造します。銀行は融資審査で決算書の内容を最も重視しますので、偽造の決算書を作って融資を受けられるようにします。偽造した決算書を使って銀行から融資を引き出すことは、刑法の詐欺罪にあたります。
融資を受けられても、数十%もの成功報酬を資金調達コンサルタントに取られれば、資金はすぐに尽きてしまいます。例えば成功報酬を40%取られた場合。3000万円の融資が受けられたとして、3000万円×40%=1200万円の成功報酬を資金調達コンサルタントに取られてしまうと、企業の手元には3000万円-1200万円=1800万円しか残りません。これだけ成功報酬を取られてしまえばすぐに資金はなくなってしまいます。
また資金調達コンサルタントは、大きな成功報酬を得た後、その企業の面倒をもう見ません。銀行では、融資先企業に対し毎期、決算書を要求します。融資を受けた後、次の決算を迎え、新しい決算書を提出すると、前の期の偽造した決算書とのつじつまが合わなくなってしまいます。そこで決算書の偽造が銀行に分かってしまいます。
銀行に決算書の偽造が分かってしまったら、銀行は新しい融資を二度と出さなくなります。もしくは一括返済を求められるかもしれません。また銀行が本気を出した場合、経営者に対する損害賠償請求、また刑法の詐欺罪で訴えてくるかもしれません。
決算書を偽造したのは融資ブローカーであると言っても、融資ブローカーを使って融資を受けようとしたのは経営者です。また実際に融資を受け、偽造した決算書の成果を享受しています。経営者が責任を問われます。
成功報酬は低くても着手金をもらって逃げる資金調達コンサルタントもいる
融資を受けられるようにするならともかく、着手金だけもらって逃げる悪質な資金調達コンサルタントもいます。50万円、100万円と多額な着手金を受け取り、経営者と連絡を取れなくする。もしくは連絡とれても「今、取り組んでいる最中。」と言い続けて半年、1年たって何も動いていないケースです。資金調達コンサルタントが初めに暴利の成功報酬、または常識的でない着手金を要求してきたら、経営者は怪しいと思わなければなりません。
悪質な資金調達コンサルタントに暴利の成功報酬を支払う前にやるべきこと
このような暴利をとる悪質な資金調達コンサルタントに資金調達を依頼する企業は、銀行や日本政策金融公庫から融資が受けられない状況なのでしょう。決算書を偽造して数十%もの成功報酬を支払うより、やるべきことはいろいろあります。資金繰り策、経営改善策をいろいろ行うべきです。
資金繰り策のうち一つは、銀行からの既存の融資の、今後の返済を減額、もしくは猶予する、いわゆるリスケジュールを銀行と交渉することです。仕入先などどうしても支払わなければならないものがあるのであれば、ノンバンクから一時的に借りるのも一つです。そして事業が黒字になるように、利益を大きくしていくように、経営改善を早急に進めていかねばなりません。
筆者のところに相談に来る経営者から、過去に数十%もの暴利の成功報酬で資金調達コンサルタントに頼んで融資を受けたという話を聞くことが時々あります。そこまでして融資を受けたところで、状況をより悪化させるだけでないか、よく考えてください。