筆者は今まで、資金繰りが厳しい中小企業を何千社と見てきました。資金繰りが厳しい企業には、特有の現象が起こっているものです。その現象をまとめてみました。資金繰りが厳しい中小企業のうち何割で、それぞれの現象が起こっているかも書きました。
- ノンバンク(銀行ではないの金融会社)から借入れがある。…80%
- 知人や親族から借入がある。…80%
- 税金や社会保険料の滞納がある。…40%
- 買掛金の未払いがある。…30%
- 銀行への返済の減額・猶予、いわゆるリスケジュールを行っている。…30%
- 給料の遅配が起こっている。…10%
- 経営者の個人信用情報がブラック(延滞や債務整理などが記録された状態)である。…10%
これらの現象は、資金繰りがうまく回っている会社ではまず起こっていないものです。 現状の資金繰りが厳しく、かつ起こっている現象の数が多いほど、資金繰りの厳しさの度合いは増します。
一方、資金繰りが厳しくない会社でも、赤字が続いたり銀行から融資を受けられなかったりして資金繰りが厳しくなっていけば、これらの現象が起きてくるものです。
それぞれの現象を説明します。
1.ノンバンク(銀行ではない金融会社)から借入れがある。
資金繰りが厳しい中小企業の80%には、ノンバンクからの借入れが見られます。ノンバンクとは、銀行ではない金融会社のことです。以下の金融会社があります。
- 企業に融資するノンバンク(ビジネクスト・ビジネスパートナーなど)
- 個人に融資する消費者金融(アコム・アイフル・プロミスなど)
- クレジットカードのキャッシング
- 銀行が個人に融資するカードローン(ほとんどのカードローンはノンバンクが保証会社となっていて、また金利が高いことから、ノンバンクとして考えます。)
企業が銀行から融資を受ける場合に比べて、ノンバンクでは年利10~20%と金利が高いです。
銀行から融資が受けられないと、ノンバンクから高い金利でお金を借りてでも資金を回そうとする経営者は多いです。資金繰りが厳しい中小企業の大半に、ノンバンクからの借入れが見られます。
2.知人や親族から借入がある。
資金繰りが厳しい中小企業の80%には、知人や親族からの借入れが見られます。銀行から融資が受けられないと、ノンバンクとともに、知人や親族から借入れしようとする経営者は多いです。
3.税金や社会保険料の滞納がある。
資金繰りが厳しい中小企業の40%は、税金や社会保険料を滞納しています。
法人税や消費税、個人の給与から差し引く源泉所得税や住民税などの税金は、後払いです。社会保険料も、個人の給与から天引きして、会社負担分と合わせて年金事務所に納めます。このような後払いの特徴があることから、資金繰りが厳しい中小企業は、いったん手元に現金が残ると税金や社会保険料の支払いのためにとっておくことなく、運転資金として使ってしまいがちです。そのため、資金繰りが厳しい中小企業には税金や社会保険料の滞納が起こりやすいです。
4.買掛金の未払いがある。
資金繰りが厳しい中小企業の30%は、仕入先や外注先へ支払期日どおりに支払えず、待ってもらっている買掛金があります。
税金や社会保険料と同様、買掛金も後払いです。資金繰りが厳しい中小企業は、毎月の買掛金の支払いの工面に頭を悩ませることが多いです。銀行から融資を受けられたらよいのですが、銀行が融資を行わないと、支払期日に買掛金の支払いができず、買掛先に謝り支払いを待ってもらわざるをえなくなります。
ほとんどの経営者は税金や社会保険料の支払いより買掛金の支払いを優先させるものですが、税金や社会保険料を滞納しても資金繰りが回らない企業は、一部の買掛先へ支払いを待たせてしまうことになりやすいです。
5.銀行への返済の減額・猶予、いわゆるリスケジュールを行っている。
資金繰りが厳しい中小企業の30%は、銀行からの既存の融資の返済をリスケジュール(返済減額・返済猶予)しています。
定期的に銀行から融資を受けられたらリスケジュールする必要はないですが、業績が悪化するなどで銀行の融資審査が厳しくなり融資を受けられなければ、返済を続けていくことがとても負担になります。そうなると、銀行と交渉してリスケジュールを行ってもらうしかありません。
6.給料の遅配が起こっている。
資金繰りが厳しい中小企業の10%で、従業員への給料の遅配が起こっています。
ほとんどの経営者は、従業員への支払いだけは絶対に遅れてはならない、支払いを最優先させるべきものと考えています。資金繰りが厳しい中小企業は、税金や社会保険料を滞納し、買掛金の支払いを待ってもらい、銀行への返済をリスケジュールします。それでも資金繰りが回らない企業は、従業員の給料を待ってもらわざるをえなくなります。給料の遅配が起こっている会社は、末期の状態であることが多いです。
7.経営者の個人信用情報がブラック(延滞や債務整理などが記録された状態)である。
資金繰りが厳しい中小企業の経営者の10%は、経営者の個人信用情報がブラックです。ブラックとは、経営者個人での借入れや、経営者が連帯保証人となっている会社でのノンバンクからの借入れの、延滞が起こっていたり、過去に債務整理していたりする状態です。
資金繰りが厳しい中小企業に起こっている現象の1つもあってはならない
以上、資金繰りが厳しい中小企業に起こっている7つの現象を説明しました。あなたの会社はいくつ当てはまるでしょうか。7つの現象をもう一度掲載します。
- ノンバンク(銀行ではないの金融会社)から借入れがある。
- 知人や親族から借入がある。
- 税金や社会保険料の滞納がある。
- 買掛金の未払いがある。
- 銀行への返済の減額・猶予、いわゆるリスケジュールを行っている。
- 給料の遅配が起こっている。
- 経営者の個人信用情報がブラック(延滞や債務整理などが記録された状態)である。
これらの現象、1つでも当てはまれば、あなたの会社は黄信号です。異常な状態です。すぐに経営改善を行い、起こっている現象を解消しなければなりません。
慢性的に資金繰りが厳しい状態であると、経営者はこれらの現象が起こっている状態が当たり前と感じるようになります。しかしそれは異常な状態であり、経営改善を行わないまま放置していると、現象が増えてしまいます。ますます資金繰りがひどい状態になり、行きつく先は倒産です。だから、1つでも現象が起こっていればすぐに経営改善を行わなければならないのです。