在庫が多くなると資金繰りが厳しくなる

在庫を抱える事業を行う会社の場合。商品を仕入れて現金を支払い、そして商品が売れて現金が増えて返ってくるまで、現金は次のように変化します。

現金 → 在庫 → 売掛金 → 受取手形 → 現金

商品を仕入れると現金がなくなり商品になります。仕入れた商品が在庫となった後、商品が売れてもすぐに現金で回収することなく、売掛金になる会社は多いものです。そして売掛金は、売掛先から現金で回収される場合もあれば、受取手形として回収される場合もあります。受取手形となった場合、手形の支払期日にやっと現金として回収できます。

この動きの中、在庫→売掛金→受取手形である間は、現金の状態ではありません。その間、会社の現金は少なくなります。現金が少ないということは、資金繰りがその分、厳しくなるということです。

例えばある商品を100,000円で仕入れ、それが150,000円で売れる場合。会社にある現金は次のようになります。

現金 →在庫 →売掛金 →受取手形 →現金
100,000円 0円 0円 0円 150,000円

これを見ると分かるように、在庫→売掛金→受取手形の間は、会社に現金がない状態です。資金繰りが良い会社になるには、在庫→売掛金→受取手形となっている期間を短くすることが重要です。ここでは、在庫になっている期間を短くすることを考えてみます。

あなたの会社の在庫回転期間を計算してみる

あなたの会社にどれだけの在庫があり、その結果、資金繰りにどのような影響があるのか。それを見るのに良い指標があります。在庫回転期間です。

在庫回転期間は、商品を仕入れてからどれぐらいの月数もしくは日数で販売できるかを見る指標です。在庫回転期間の計算式は次のとおりです。

在庫回転期間(月数)=棚卸資産÷(売上原価÷12)

在庫回転期間(日数)=棚卸資産÷(売上原価÷365)

決算書を見て、棚卸資産が8000万円、売上原価が4億8000万円あれば、在庫回転期間は次のように計算されます。

在庫回転期間(月数)=8000万円÷(4億8000万円÷12)=2カ月

在庫回転期間(日数)=8000万円÷(4億8000万円÷365)=61日

在庫回転期間が長いということは、在庫を仕入れてから販売されるまでの期間が長いということです。その間、在庫は現金にならず、会社の資金繰りを苦しくします。ちなみに業種ごとの在庫回転期間の平均は建設業で約40日、製造業や小売業で約30日、卸売業で約20日です。しかし小売業でも雑貨小売業と食品スーパーでは雑貨小売業の方が在庫回転期間は長いように、取扱商品によっても在庫回転期間の平均は異なります。あくまで目安として考えてください。

またあなたの会社の過去とも比べてみます。前期、前々期と、決算書から在庫回転期間を計算し、比べてみます。直近期の在庫回転期間が過去より長くなっていれば、在庫は多くなっているということです。在庫が多くなれば、資金繰りは苦しくなります。それを借入れでしのげば、借入金が多くなります。

在庫が多くならないようにするにはどうするか

在庫が多くなったということは、在庫回転期間が長くなったことで分かります。そうならないよう、在庫管理に気を付けねばなりません。良い方法は、得意先から注文を受けてから仕入れたり、製造したりすることです。その場合、仕入れたり製造したりしてからすぐに売れるため在庫は多くなりません。しかし、業種や商品によってはその方法をとることは難しいです。商品を見込み発注して仕入したり製造したりする会社であれば、売れ残りがほとんどないよう商品の仕入れを抑えたいものです。しかし在庫が少なければ品ぞろえが薄くなり、販売機会を逃してしまうことが多くなります。バランスを考えねばなりません。

在庫が多く在庫回転期間が長い会社は、銀行からの評価が下がる

決算書に記載されている在庫の金額は、銀行も気にするものです。銀行は、銀行内で保有している業界平均の在庫回転期間データを使い、同業に比べその会社の在庫が多いか少ないかをチェックします。業界平均に比べて在庫が多い会社に対し、銀行はその原因を探ります。架空や不良の在庫があれば、在庫回転期間が長くなるので、疑われます。そして銀行が価値のない在庫と見たら、その分、差し引いて銀行は見てきます。

例えば棚卸資産が6000万円、貸借対照表の純資産が1000万円の会社の場合。棚卸資産6000万円のうち2000万円分は実態がないと銀行が見れば、その会社の実質的な純資産は貸借対照表の純資産1000万円から2000万円を引いて△1,000万円と見られます。純資産がマイナス、つまり実質債務超過の会社として、銀行からの評価が下がってしまい、融資を受けづらくなります。

在庫が多くなる原因をつかみ、少なくする対策を考える

在庫が多くなってしまうのは、次のような原因があります。

  • 社内で在庫管理体制ができていず、仕入れすぎたり、製造しすぎたりしてしまう。
  • 今後売れる見込みのない在庫をたくさん抱えてしまっている。
  • 架空の在庫を計上し、決算書をよく見せようとしている。

あなたの会社の在庫金額が大きければ、小さくするにはどうしたらよいか、対策を考える必要があります。在庫金額が少なくなれば資金繰りはその分、改善されます。またそのような会社は銀行からの評価が高くなり、融資を受けやすくなります。