銀行に融資を申し込んだら審査が、稟議の方法で行われます。融資の申し込みを受け付けた銀行員が稟議書を書き、銀行内で稟議書が回覧され、支店長や本部で、融資を行うかどうか最終決裁されます。
稟議書では、融資を行うかどうか審査するため、いろいろなことが書かれます。会社の事業内容や取扱商品、業績や財務内容、融資の資金の使い道、信用保証協会や担保など保全面、融資により銀行が得られる収益など、融資審査の材料として稟議書に書かれます。
担当者は、稟議書に書く材料を集めなければなりません。また稟議書が銀行内で回覧される中、上司や支店長、本部から稟議書の内容について質問があったら、担当者はすぐに答えられなければなりません。このようなことから稟議書を書く担当者は、融資審査を行う会社のことを、決算書や試算表など提出されている資料以外からも知ろうとします。
では銀行は、企業のどういうところを見るのでしょうか。なお銀行では、決算書や試算表などの数字には表れない企業の状況を定性要因と呼び、数字で表される定量要因とは区別しています。定性要因は融資審査を行うための稟議書に書かれる他、銀行が融資先企業に付ける信用格付の点数の材料ともしています。
銀行が融資審査で見るポイント1 経営者の資質はどうか
会社が今後どうなっていくか、カギを握るのは経営者です。銀行は企業のことを見ようとする時、まず経営者の資質がどうであるかを見ます。経営者が自分の会社を今後も維持・発展させていけそうな人か、そして経営者は信用できる人なのか、銀行は見てきます。
会社の経営理念・ビジョンや、会社を今後どうしていきたいか、今後どのようなことをやろうとしているのか、熱く語れる経営者は、銀行から印象が良いです。経営者の話がうまくなくても問題ありません。普段から自分の会社の経営をどうしていくかしっかり考えていている経営者であれば、銀行に経営者の思いは十分、伝わることでしょう。
また銀行は、経営者が信用できる人か、見ています。銀行との約束を守れない経営者は、いくら将来のビジョンを熱く語れる人でも、銀行からの信用を失っていくことでしょう。
銀行との打合せの中で、経営者が銀行と約束することはよくあります。例えば、売上入金の一部をその銀行の預金口座に入るようにする、預金残高を融資後1カ月は1000万円以上に保つ、というような約束です。このような銀行との約束は、経営者としたらどうでもよいと思っていても、銀行にとっては重要なことです。
この例の約束では、預金残高を多くすることで銀行はその会社との取引採算を良くしたり(預金残高が多い会社は、融資金額から預金金額を引いた実質の融資金額が少なくなり、銀行がもらえる利息はほぼ変わらないので、銀行としては取引の採算が向上します)、保全を図れたりします(もし返済できなくなった場合、銀行は預金と融資を相殺できます)。
このような約束は、銀行内では稟議書や議事録に記録しています。銀行との約束を経営者が忘れていたり、そもそも守る気がなかったりしたら、銀行ではそのことに目が行き、その経営者を信用できない人と見るようになります。信用できない経営者の会社に対し、銀行は当然、融資審査を厳しくします。
銀行が融資審査で見るポイント2 現場はどうなのか
銀行員は、融資を受けようとする会社の事務所、工場、店舗、倉庫など、事業が行われている現場を見るよう心がけています。銀行員は、その会社が何をやっているか知っておくべきですし、また不自然なところがないか銀行員は観察してきます。例えば、在庫が決算書上では5000万円もあるのに、倉庫の中の在庫は1000万円分もないように見えたら、架空在庫の計上を疑います。
また現場の印象で、銀行員がその会社に抱く印象が決まりやすいです。社員に覇気がない、社員の態度が悪くあいさつもろくにできない、社内が散らかっていて整理整頓できていない、時計が止まりっぱなし、窓が割れっぱなし。このような現場を見て銀行員は、この会社に融資しても大丈夫か、心配になります。
銀行が融資審査で見るポイント3 業界動向はどうなのか
業界の現状や将来も、銀行員は気になるところです。また稟議書を書く担当者が、上司や支店長からつっこんで聞かれやすいところです。
これから衰退していく業界にある会社の場合、今後は業績が低迷していく可能性が高く、銀行はそのような会社に融資しにくいです。ただ、衰退する業界の中で独自性を発揮し生き残っていける会社はあります。衰退する業界にいるのであれば、自分の会社はどのように対策して生き残っていくのか、銀行に伝えると良いです。
また競争が激しい業界では、自分の会社がどのように同業他社と差別化し競争に勝っていくのか、裏付けとなる技術力や商品力とともに、銀行に伝えたいです。
銀行が融資審査で見るポイント4 新聞・雑誌などの掲載コピー
新聞や雑誌に掲載されたことがあれば、そのコピーを銀行に渡しておくと良いです。銀行はその会社が世間からどう見られているのか分かり、その会社への理解が深まります。掲載されたコピーは稟議書に添付されることが多く、自社のアピール材料となります。
自社をアピールし融資審査を有利にしよう
以上のように、決算書や試算表などで現れる数字(定量要因)以外に、数字には表れない定性要因を銀行は見てきます。経営者の資質、現場、業界動向など、銀行が見るポイントです。銀行にアピールすることで良い印象を持ってもらい、稟議書にも良いことを書いてもらい、融資獲得につなげていってください。