銀行に融資を申し込むと、審査が行われます。融資審査のために必要な資料で決算書は必須ですが、それ以外の資料の提出を銀行が要求してくることがあります。

そもそも、なぜ銀行は決算書の他にも資料の提出を要求してくるのでしょうか。銀行がいろいろな資料の提出を要求してくるのは、融資審査を通すためです。融資を断るのなら、資料の提出を要求することなく断ります。融資を行っても大丈夫である裏付けをとるために、追加の資料を銀行は要求してくるのです。

融資審査を行うにあたり、決算書以外で銀行が要求してくる中で特に多いのは、1.試算表、2.月次資金繰り表、3.経営計画書です。またこれらの資料は、銀行から要求されなくても自主的に提出することで、融資審査を有利にできます。融資を申し込まない時でも普段からこれらの資料を作っておけば、銀行に融資を申し込む時にあわてて作らずに済みます。またこれらの資料は融資のためだけでなく、日ごろから経営に生かせるものです。

融資審査に備え普段から用意しておくべき資料1 試算表

試算表とは、前回の決算の後、今期今までの損益を累計したものです。試算表では決算書と同様、期の途中経過の損益計算書・貸借対照表が表されます。毎月、仕訳入力していれば、試算表を会計ソフトからすぐに出せます。

決算書では前期の業績や財務内容が分かります。一方、今期、今までの業績は試算表でしか分かりません。前回の決算から3カ月経過していれば、銀行は融資審査にあたり試算表を要求してくることは多いです。

試算表を作っていない会社は今期の業績が分からず、銀行も今期の業績が見えないままでは新たな融資を出しづらいので、試算表を出すことができないと融資審査で不利になってしまいます。試算表の提出を銀行から要求されているのに出せないようでは、融資審査は進みません。また、毎月の損益を把握していない経営者を見て、銀行員はあきれてしまうかもしれません。この経営者は現在の業績も把握しないで、どうやって経営しているのか、これが、試算表を作っていない会社に対し銀行員が抱く思いです。そういう点でも、融資審査は厳しくならざるをえません。

銀行が試算表を要求してきた場合、そこから顧問税理士に試算表の作成を依頼する経営者がいます。しかし試算表は本来、経営者が今期累計や前月単月の損益を把握するためのものです。試算表は銀行の融資審査のために作るのが第一の目的ではありません。銀行から要求されれば税理士に頼んで試算表を出してもらえばよいという意識の経営者は問題です。試算表を毎月出して経営者が経営を振り返り、そしていつでも銀行に試算表を提出できるよう、毎月、仕訳入力を行うようにしてください。

融資審査に備え普段から用意しておくべき資料2 月次資金繰り表

将来6カ月~1年ぐらいの、資金繰り予定は月次資金繰り表で表せます。今後の資金繰りはどうなのか、いついくら資金不足となるのか、資金繰り表を作ることで見えるようになります。また銀行からの借入予定を資金繰り表に入れることにより、しばらくは資金不足になることなく回るのか、銀行は資金繰り表を見て知ることができます。

資金繰り表も試算表と同様、融資審査で銀行から提出を要求されることの多い資料です。銀行から要求されても資金繰り表を提出しないと、銀行はその会社の将来の資金繰りを見ることができません。新たな融資を出したとしてもすぐに資金不足に陥ってしまうのではないかと、銀行は慎重にならざるをえません。

また銀行から提出を要求されなくても自ら資金繰り表を作り、いついくら資金が不足するのかを普段から把握しておくことは重要です。資金繰り表を作ると資金不足となるタイミングが分かるので、資金不足となる月の3カ月前ぐらいには、銀行に新たな融資の相談を行いたいものです。

月次資金繰り表の作り方・書き方・予定表編

融資審査に備え普段から用意しておくべき資料3 経営計画書

経営計画書とは、将来5年~10年程度の、毎期の損益がどのようになっていくかを表したものです。経営を改善していくことで利益が上がっていく計画であることが望ましいです。損益の数字とともに、そこに書いてある売上・利益をどのように作っていくのか文章にすることで経営計画書の内容が充実します。

経営計画書は試算表や資金繰り表に比べて、融資審査で銀行から要求されることは少ないものです。しかし銀行から提出を要求されなくても自ら経営計画書を作成し銀行に提出することで、銀行はその会社が将来、どのように損益が推移していくのか分かります。また利益を上げていくためにどのようなことをその会社は取り組んでいくのか、銀行は把握できます。将来、利益が上がっていくこと、そして利益を上げていくために何をするのか取組みが分かることにより、銀行は融資を行いやすくなります。

経営計画書は、財務内容や業績が悪いなど通常であれば融資審査を通しづらい企業が、審査を通しやすくするために特に有効となる資料です。例え今が赤字でも、経営計画書により黒字になっていく道筋が見えれば、銀行は融資をしやすくなります。融資の返済の原資は企業が将来稼ぐ利益から得られる現金ですが、経営計画書を見ることで、将来、利益が上がっていき、その利益から返済を行っていくことも見えてきます。そのため経営計画書があると融資をしやすいのです。