銀行が融資審査を行う時、何を考えているのでしょうか。財務内容や業績から見て企業の返済能力はどうなのかとともに、もし将来、万が一返済できなくなった時に代わりの手段で回収できないか、ということを銀行は融資審査で考えます。返済できなくなった時に代わりの手段で回収する、これを銀行では「保全」と呼んでいて、融資審査で銀行が必ず考えることの一つです。

保全は、融資の返済が将来できなくなった時に銀行が備えておくものです。そのため財務内容や業績が良く将来の見通しも明るい企業は、将来、返済できなくなる可能性が低いと銀行から見られ、保全がなくても融資を受けられることが多いです。逆に財務内容や業績が悪く将来の見通しも明るくないなど将来、返済できなくなる可能性が高いと銀行から見られる企業では、保全がなければ融資を行わない、と銀行は判断しやすいです。

では、保全とは具体的に何なのか、見ていきます。銀行が保全で考えることは、1.連帯保証人、2.信用保証協会や保証会社、3.担保、です。

銀行が融資審査の時に考える保全1 連帯保証人

保証人とは、もし融資を受けている会社が返済できなくなった時に、代わりに銀行に返済する義務を負う人のことです。保証人の中でも連帯保証人は、会社が返済できなくなった時、銀行が先に会社に取り立てたりもしくは会社に財産が残っているか調べたりしなくても、すぐに銀行が返済の請求をできる保証人のことを言います。銀行の融資の場合、ほぼ100%、保証人は連帯保証人となります。

ほとんどの融資では、会社の代表者のみが連帯保証人となります。代表者以外の連帯保証人を入れることは、金融庁や信用保証協会の指針で一部の例外を除き、行われません。なお代表者自身も連帯保証人に入らない、つまり保証人なしで融資を受けられる会社もあります。将来、返済できなくなる可能性がほぼない優良企業では、代表者が連帯保証人とならなくても銀行は融資を出してくれるのです。

銀行が融資審査の時に考える保全2 信用保証協会や保証会社

銀行の融資には信用保証協会保証付融資とプロパー融資(信用保証協会や保証会社の保証がつかない融資)があります。またオリックスなどノンバンクが保証会社として保証するノンバンク保証付融資もあります。

将来、返済できなくなる可能性が高い会社、つまり財務内容や業績が悪い会社は、信用保証協会やノンバンクの保証を付けたら融資を行うと銀行から言われることが多いです。一方、プロパー融資は信用保証協会やノンバンクの保証が付かない融資ですので、返済できなくなる可能性が低いと銀行から見られている企業が、受けることができます。

銀行が融資審査の時に考える保全3 担保

担保とは、融資を受けている会社がもし返済できなくなった時、売却して回収するために銀行に差し出すものです。担保の代表的なものは不動産です。他、預金、株式などの有価証券、機械や在庫、売掛金、生命保険なども担保になります。ただし不動産や預金以外は銀行から担保としてなかなか認めてもらえないので、現実では担保のほとんどは不動産となります。

ただし、担保となる不動産はどこの会社でも所有しているわけではありません。経営者の中には、銀行から融資を受ける場合、必ず不動産の担保が必要と思っている人もいますが、絶対に必要なわけではありません。しかし担保があれば、融資がなかなか受けられない会社でも融資が受けられる可能性が高くなります。また担保があれば融資の金額も大きくしやすいです。

銀行は融資審査で保全をどのように考えているか

以上、銀行が融資を行う時の保全は、1.連帯保証人、2.信用保証協会や保証会社、3.担保、この3つがあるという話をしました。

3つの中で、銀行が保全としての価値を最も見ないのは連帯保証人です。もし将来、企業が返済できなくなった時には連帯保証人に返済してもらいますが、その時は連帯保証人は会社に私財をつぎこんで財産がなくなっていることが通常です。また企業が他の銀行からも融資を受けているのであれば、他の銀行も連帯保証人に取り立てるので、自分の銀行だけが連帯保証人から多くを返済してもらうことは期待できません。

ではなぜ、銀行は融資で代表者を連帯保証人にさせるのか。代表者に、融資の返済の責任を持たせるためです。また、会社の財産を全て代表者個人に移して、会社だけつぶして代表者は私腹を肥やすことを防ぐ、というねらいもあります。

銀行が、将来返済できなくなった時のため、保全としての価値を重視しているのは、信用保証協会や保証会社による保証、それと担保です。

銀行が保全をとらない融資を企業は目指すべき

銀行から融資を受ける企業は、保全なしで融資を受けられるならそうするべきです。信用保証協会保証付融資やノンバンク保証付融資より、プロパー融資を目指すべきです。また不動産などの担保を入れなくても融資を受けられるならそうするべきです。最近は代表者も連帯保証人とならないで融資を受けられる会社が増えてきています。究極はそこまで目指したいものです。

保全を入れて融資を受けるのは、財務内容や業績が悪く、将来返済できなくなる可能性が高いと銀行から見られた企業です。将来、会社の業績が悪化するなどで銀行の融資審査が厳しくなった時に保全を入れて融資を受けられるよう、今のうちは保全なしで融資を受けていきたいものです。