あなたの会社の資金繰りが苦しい。その場合、銀行などから資金調達を行うとともに、会社の中に埋蔵金がないか探したいものです。埋蔵金を発掘するということは、具体的には現金に換えられる会社の資産を現金化することを意味します。あなたの会社の埋蔵金を発掘できないか考える材料として、直近の決算書一式の中から次の資料を見てみましょう。

会社の資産の現金化を考えるにあたって見る資料

  1. 貸借対照表
  2. 勘定科目内訳明細書
  3. 固定資産台帳

勘定科目内訳明細書とは

貸借対照表および損益計算書の各勘定科目の内訳明細書として、法令によって提出が義務付けられている書類のことです。決算日の翌日から2カ月以内に、法人税確定申告書や決算報告書などの書類と一緒に税務署に提出します。貸借対照表の資産、負債科目とも、原則、決算日に残高があるものはすべて内訳明細書に記載します。

固定資産台帳とは

固定資産を管理するために作成する台帳で、固定資産の名称や取得日、使用開始日、取得価額などを記入します。事業用の固定資産として何があるのか、その減価償却費はどのようになっているかなどを把握するために必要な台帳です。

これら資料の場所が分かったら次に、貸借対照表の資産の部にある勘定科目を上から一つ一つ見ていきます。各勘定科目の内訳が勘定科目内訳書に書いてあり、また固定資産科目の内訳は固定資産台帳に書いてあります。それら資産を一つ一つ見て、事業に不要と思われる会社の資産は現金化できないか、考え、書き出してみましょう。

会社の資産の現金化を勘定科目ごとにどう考えるか

では、勘定科目一つ一つ、会社の資産の現金化を考えていきましょう。着眼点を述べていきます。

現金預金

定期預金・定期積金

定期預金・定期積金について、銀行からの融資の担保になっていないかを調べてください。担保となっていなければ解約し現金化してください。

売上債権

受取手形

手形割引や裏書譲渡せず、手元に置いてある手形が何枚かある場合、手形を銀行で割引できないか相談してください。

売掛金

売掛金の明細を一つ一つ見ていくと、相手先から回収できていないものが発見されることがあります。回収できていない売掛金は、相手先に督促して回収し現金化してください。

棚卸資産

商品・製品

勘定科目内訳明細書には商品・製品の明細が記載されていることは少ないです。ただし決算期に棚卸を行っていれば在庫管理表を作っていることでしょう。

在庫管理表を見てみると、長い期間、売れずに眠ってしまっている在庫があるかもしれません。それらは、価格を下げてでも売って現金化できないでしょうか。まとまった量を安い金額で買い取ってくれる業者もあります。在庫は仕入れてから時間が経過するほど価値は減少していきます。場合によっては原価割れしてでも在庫処分し現金化する決断も必要です。

原材料

商品・製品と同様、材料として使用されずに眠っている在庫があれば、買い取ってもらえる業者がないか探してください。

仕掛品

製造途中にある製品を仕掛品と言います。製造の途中で長い期間止まっているものがあれば、早く製品にして販売する、製造を中止して原材料に戻す、など考えてください。

他流動資産

前渡金・前払金

仕入などに先立って、相手先に支払った場合に前渡金・前払金が計上されます。前渡金・前払金の中にはその後、仕入せずに放置されているものもあるかもしれません。前渡金・前払金が、その後の仕入に使われたかを確認してください。使われず仕入が中止になった前渡金・前払金があれば。相手先に返金してもらってください。

前払費用

前渡金・前払金と同様、前払費用として支払った費用に基づくサービスなどがその後、行われていない場合。相手先に返金してもらってください。

立替金

従業員や取引先のために会社が一時的に立て替えたものが立替金です。立替金が回収されず放置されていれば、相手先から回収してください。

仮払金

従業員の旅費など、経費の概算額を一時的に支払う時などに計上されます。仮払金が放置されていれば、経費の精算が済んでいないということです。精算により回収できる現金は回収してください。

未収入金

相手先に資産や役務を提供したが未回収である金額のことです。回収できていないものがあれば相手先より回収してください。

短期貸付金

貸付を行った相手先と借用書を交わしているか、まず確認してください。借用書を交わしていれば、借用書に記載の返済スケジュールに従って回収できているか確認してください。回収できていなければ相手先より回収してください。借用書を交わしていなければ貸付金を相手先からすぐに回収してください。すぐに回収できないのであれば、相手先に返済スケジュールを約束させ、借用書を交わしてください。

有形固定資産

建物・機械装置・車両運搬具・工具器具備品・一括償却資産・土地

固定資産台帳や勘定科目内訳明細書により一つ一つの固定資産を見ていきます。それらが事業に有効に使われているのかを確認してください。そうすると不要な資産が発見されます。不要な資産は売却し現金化してください。

無形固定資産

電話加入権

NTT東日本やNTT西日本のアナログ電話回線を引くことができる契約、あるいは回線を使用する権利のことを電話加入権と言います。

NTTに連絡して電話回線の新設を申し込む時、施設設置負担金を支払います。この施設設置負担金を支払った時点で、電話加入権を持ったことになります。電話加入権は実は売ることができる権利で、その権利は譲渡可能です。しかし近年は、電話加入権の価値はとても低くなっており、資産価値としてはないに等しいです。なおNTTでは、不要になった電話加入権は引き取りこそすれ、買い取りは行ってくれません。施設設置負担金も返金してくれません。そのため電話加入権の現金化は期待できません。

ソフトウェア

自社で利用する「自社利用目的ソフトウェア」と、開発したソフトウェアを販売する「販売目的ソフトウェア」とがあります。事業に使用していないソフトウェアがあれば売却し現金化できないか考えてください。

投資その他の資産

敷金

不動産の賃貸借の際、将来の退去時の原状回復や、万一の家賃滞納に備えて、大家さんに預ける金銭を敷金と言います。敷金は退去時までは返還されないため、現金化は期待できません。

差入保証金

不動産などの賃貸借契約を交わす場合、取引先と商取引を行う場合など、担保として相手先に差し入れる金銭が保証金です。賃借や取引が終了しているのに返還されないものがないか、まず調べてください。

取引先に差し入れている取引保証金について。その取引先との取引が、保証金を差し入れた時より小さくなっていたり、こちらの財務内容や業績が良くなっていたりしている場合。保証金を減額してもらったり、0にしてもらったりできないか、取引先との交渉の可能性を考えてください。

長期貸付金

貸付を行った相手先と借用書を交わしているか、まず確認してください。借用書を交わしていれば、借用書に記載の返済スケジュールに従って回収できているか確認してください。回収できていなければ相手先より回収してください。借用書を交わしていなければ貸付金を相手先からすぐに回収してください。すぐに回収できないのであれば、相手先に返済スケジュールを約束させ、借用書を交わしてください。

保険積立金

解約返戻金がある生命保険の場合、解約返戻金の7~9割を生命保険会社から借入できることが普通です。なおその生命保険を維持することが不要であれば借入ではなく解約し、解約返戻金を入金してもらってください。

繰延資産

創立費

法人の設立登記までに、法人を設立するために支出した費用が創立費です。既に支払った経費であるため現金化できません。

開業費

会社設立後から営業を開始するまでの期間に支払った費用が開業費です。既に支払った経費であるため現金化できません。