銀行担当者の資質により今後の融資が左右される
銀行に融資を申し込んでも、銀行員の資質により、融資の行く末が大きく左右されることがあります。銀行員にも、さまざまな人がいます。あなたの会社を担当する銀行員の資質によって普通であれば審査が通る融資が受けられなければ、つらいものです。
銀行から担当を付けられた場合。担当の仕方にはいくつかあります。得意先係の担当者としてこちらに訪問してくる、銀行の融資窓口で融資を申し込んだら担当者として稟議書を書くなど。どのような担当の仕方にしても、銀行の内部で担当が決まります。
こちらから銀行の担当を選べないと、時には仕事ができない銀行員にあたることもあります。そういう銀行員が担当者となると、普通であれば審査が通る融資が受けられないこともあります。
対策は、多くの銀行とつきあい、多くの銀行から融資を受けておくことです。例えば3つの銀行から融資を受けていれば、3つのうち2つの銀行の担当者が仕事ができない担当者でも、1つの銀行の担当者が有能な銀行員であれば、その銀行員に頼ることができます。また、多くの銀行とつきあうほど、有能な銀行員と出会える可能性が高くなります。
また新規の銀行へ融資を申し込もうとする場合でも、初めから1つの銀行に決めるのではなく、複数の新規銀行に融資の相談をする方がよいです。あなたの会社に多くの新規銀行が営業に来ている場合、そのうち1つの銀行に融資を申し込むからと他の銀行を断っては、もったいないです。
銀行員には優秀な人もいればそうでない人もいます。営業に来る時は良さそうな銀行員と思っても、いざ融資を申し込んでみると、こちらの会社のことをよく知ろうとしなかったり、稟議書作成に取り掛かるのが遅かったりと、資質に問題がある人もいます。これらは仕事を任せてみて分かってくることです。
銀行担当者による傾向
銀行員によって資質はさまざまですが、その銀行員の背景によって、傾向はあります。ここでは、1.得意先係・融資係の傾向、2.新人・若手・ベテランの傾向、を見てみます。
1 得意先係・融資係の傾向
銀行の支店の中には、得意先係、融資係、預金係がいます。得意先係は外を回って営業を行い、融資案件を受け付けてきます。融資係は融資の審査を行う係です。預金係は支店の窓口で預金の入出金や振込を受け付けたり事務処理を行ったりする係です。融資では、得意先係と融資係が関わります。
得意先係と融資係では、銀行内での人事評価の違いがあります。
得意先係は営業ですので、営業成績を上げるほど評価されます。銀行内では半期(4月~9月、10月~3月)ごとに営業成績のノルマが課せられます。融資のノルマには、融資量、融資の中で信用保証協会保証付融資の量、新規融資先獲得件数などがあります。得意先係は融資が実行されないと営業成績にならないので、融資審査をなるべく通したいと考えます。得意先係が外を回って受け付けてきた融資案件はその得意先係が融資審査の稟議書を書きますが、融資審査が通るように前向きな意見を書いた上で、稟議書を回すものです。
一方、融資係は、融資審査をしっかり行って貸し倒れを出さないことが銀行内で評価されます。貸し倒れを出さないためには、融資審査に慎重にならざるをえません。少しでも将来の返済が危なそうな融資案件であれば審査を通さないように否定的な意見を稟議書に書き、最終決裁者である支店長や本部へ意見を伝えようとします。
以上を考えると融資の申し込みは、融資をしたがっている得意先係に対して行った方が良いことになります。銀行から得意先係の担当者を付けてもらい、その得意先係に申し込みたいものです。
担当者が付けられておらず、融資を申し込む時は銀行の支店の融資窓口に行って融資係に申し込まなければならず、そして融資がいつも通りづらいのであれば、融資係に融資を申し込んでいるからかもしれません。得意先係の担当者を付けてもらえないか銀行に相談してみてください。
2 新人・若手・ベテランの傾向
銀行員でも、銀行に入社して1、2年目あたりの新人か、年齢が20代半ばから30代前半あたりの銀行の仕事に慣れてバリバリ働いている若手か、30代後半以降のベテランかによって傾向があります。
まず銀行に入社して1、2年目あたりの新人の銀行員。特徴は、仕事にやる気があるが、業務知識が少ないことです。銀行に入社して半年ぐらいしてから得意先係として企業を担当する銀行員もいます。このような銀行員があなたの会社の担当者となった場合。その上司や先輩など、フォローしてくれる銀行員とも知り合いになっておきたいです。
日常のやりとりはその新人の銀行員とのみで行っても、融資の相談をする時は上司や先輩に同席してもらうなど心がけたいものです。新人の銀行員だけに融資を相談すると、進め方が分からないとして放置されたり、金額・資金使途・使いたい融資制度など、こちらの意図が全く反映されなかったりすることがこわいです。
次に、年齢が20代は半ばから30代前半で銀行の仕事に慣れてバリバリ働いている若手銀行員の場合。銀行内では役職が付き始め、出世していけるかどうかの分かれ道である年代です。このあたりの銀行員で得意先係であれば、営業成績を上げるためにやる気を持って融資の稟議書を書き、また支店内の上の方に対し、融資を行いたいとアピールしてくれることを期待できます。ただ、みんながそうではありませんので、担当者がどのような銀行員かはしっかり見たいものです。
最後に、30代後半以降のベテランの銀行員。この年代であれば、得意先係長、次長(副支店長)、支店長などの役職がある人とない人とにはっきり分かれます。30代後半であれば得意先係長や次長(副支店長)、40代になれば次長(副支店長)となっていればまずまず出世していると言えます。銀行員で支店長になれる人は少なく支店長であれば出世していると言えます。
30代後半、40代、50代で平社員や、ちょっとした肩書が付いているだけの銀行員の場合、出世コースから外れています。このような銀行員で、仕事にやる気のある人は少ないです。出世コースから外れていて自分は営業成績を上げなくてもよいと考えている人が多く、そのような銀行員が企業から融資を申し込まれると、稟議書を書かなければならず面倒に思います。そのような銀行員が稟議書を書いてもしっかりと書いてくれないことも多く、融資審査が通りづらくなってしまいます。
このような銀行員があなたの会社を担当し、実際にやる気がなさそうな感じであったらつらいものです。融資を申し込む際はその上司にも同席してもらい協力してもらうなど、別の銀行員を巻き込みたいものです。
頼りになる銀行員・頼りにならない銀行員の見極め方
あなたの会社を担当する銀行員が頼りになる人かそうでないかは今後の融資に大きく影響してきます。
頼りになる銀行員には次の特徴があります。
- 定期的に企業に訪問してくれる。
- こちらから融資の話をしないでも銀行員の方から融資の提案をしてくれる。
- 融資を申し込んでからすぐに必要書類を指示してくれたり、稟議書を書いてくれたりするなど仕事が早い。
- 融資審査を通そうと上司や信用保証協会などに積極的にアピールしてくれる。
- 決算書を提出した時、銀行として問題とする箇所を指摘し、どう改善していくべきかアドバイスをくれる。
このような銀行員が担当に付いてくれると、企業としては心強いです。このような銀行員と出会うためにも、多くの銀行とつきあいたいです。
銀行員の転勤は2~3年ごとにあります。今の担当者は自社に貢献してくれる人でも、次の担当者がやる気がない人になるかもしれません。これまでの担当者は毎月訪問してくれ、コミュニケーションをしっかりとれていたものが、担当者が変わったとたん、全く訪問してくれなくなり、融資の提案を全くしてくれなくなることもあります。やはり多くの銀行と付き合い、このようなリスクを減らしておきたいものです。
なお銀行の担当者のできがあまりにもひどい場合、担当者の上司や支店長などに頼み、担当者を代えてもらうことはできます。ただ上司や支店長の立場を考えると、その担当者に担当を外れるよう言うのは気を使うものです。また担当者は地区により決められていることが多く、担当者を代えることで銀行員は非効率な動きをせざるをえなくなってしまいます。その上で、担当者を代えてほしいと銀行に相談する場合は、その理由をしっかり伝えたいものです。