銀行融資にはプロパー融資、信用保証協会保証付融資がある

銀行融資の分け方の一つに、プロパー融資、信用保証協会保証付融資(以下、保証付融資)という分け方があります。違いは、もし将来、企業が融資を返済できなくなった時に、どこが貸し倒れを負担するかです。プロパー融資であれば銀行が100%負担しますが、保証付融資であれば信用保証協会が企業の代わりに銀行に返済(代位弁済と言います)します。代位弁済後は信用保証協会が企業の債権者となります。保証付融資で信用保証協会が負担する割合は80%ですが、利用した保証制度によっては100%負担することもあります。

また信用保証協会ではなくノンバンクが保証会社となった銀行融資もあります。ただ銀行融資は、依然、プロパー融資と保証付融資が主流です。ここでは保証付融資について見てみます。

プロパー融資は銀行が100%貸し倒れを負担しますので、融資審査は厳しくなります。それで融資をなかなか受けられない会社が、信用保証協会に保証してもらい銀行から融資を受けます。

創業したばかりの会社や、創業して2~3年ぐらいしか経っていずまだ銀行から融資を受けたことがない会社は、保証付融資か、日本政策金融公庫の国民生活事業で融資を受けるのが普通です。会社が成長して業績や財務内容が良くなり、融資返済の実績が付いていけば、銀行からプロパー融資を受けられるようになっていきます。

信用保証協会とは何か

信用保証協会とは、銀行が企業に対し行う融資を保証することで融資を容易にし、企業の育成を金融の面から支援する機関です。信用保証協会は全国47都道府県、それぞれ1つ以上あります。銀行は信用保証協会の保証が付いている融資なら、もし返済できなくなっても信用保証協会から代位弁済されるため、安心して融資を実行できます。なお融資実行時には企業が信用保証協会へ保証料を支払います。

企業が信用保証協会を利用する第一の目的は、銀行からプロパー融資を受けることが難しいからですが、他にも保証付融資のメリットがあります。

国や地方公共団体は、信用保証協会の保証を付けることを前提とした定型の制度融資を用意しています。制度融資の中には、低い金利の融資、利子補給を受けられる融資、信用保証協会に支払う保証料の一部もしくは全部が補助される融資があります。このように制度融資を使うと利子や保証料が得になるというメリットがあります。

また保証付融資は、プロパー融資より返済期間を長くできます。返済期間は長ければ長いほど返済の途中での貸し倒れリスクが増すため、銀行はできるだけ返済期間が短い融資を行おうとします。しかし信用保証協会の保証があればこの限りではありません。運転資金でも7~10年程度の長い返済期間の融資も可能です。

信用保証協会を利用できる企業

信用保証協会が利用できる企業には一定の条件があります。企業規模、所在地、業種の条件です。

ⅰ.企業規模

次の表の資本金要件・従業員要件いずれか一方が該当していれば、信用保証協会を利用できます。こちらの表が原則ですが、信用保証協会によって条件が別に定められている場合があります。

 業種 資本金 従業員
製造業等(建設業・運送業・不動産業含む) 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
サービス業 5000万円以下 100人以下
小売業・飲食業 5000万円以下 50人以下
医療法人等 300人以下

この中で下記業種は要件が異なります。

 業種 資本金 従業員
ゴム製品製造業
(自動車または航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く)
3億円以下 900人以下
ソフトウェア業、情報処理サービス業 3億円以下 300人以下
旅館業 5000万円以下 200人以下

ⅱ.所在地

各信用保証協会の管轄区域に、法人の場合は本店または事業所、個人事業主の場合は住居または事業所のいずれかを有し、事業を営んでいることが必要です。

ⅲ.業種

農林・漁業、性風俗関連業、金融業、宗教法人、非営利団体(NPO法人を除く)、LLP(有限責任事業組合)、その他信用保証協会が支援するのは難しいと判断した場合には利用できません。なお、許認可や届出等を必要とする事業を営んでいれば、当該事業に係る許認可等を受けていることが必要です。

信用保証協会の保証が受けられない資金使途

信用保証協会の保証が受けられる融資は、企業が事業を行うのに必要な資金に限られ、次の場合には保証を受けることができません。

ⅰ.転貸資金

取引先や子会社等への貸付を行うための資金は、原則として保証は受けられません。

ⅱ.子会社設立のための株式引受資金

原則、保証は受けられません。ただし、企業の経営維持、業容拡大のために必要不可欠のものと認められる場合には保証を受けられることもあります。

ⅲ.旧債振替資金

銀行が信用保証協会保証付融資の全部または一部を、既存のプロパー融資の返済にあてることを旧債振替と言います。旧債振替を認めると、銀行はプロパー融資を保証付融資に切り替えていくことにより銀行の貸し倒れリスクを大きく減らすことができます。ただそれは信用保証の制度の趣旨にそぐわないため、旧債振替資金は原則、保証を認められません。

ⅳ.保証の対象業種と非対象業種を兼業する企業が保証を申込む場合

信用保証協会が保証した融資が、保証対象業種の事業に使用されることが明確な場合のみ保証を受けられます。

ⅴ.事業外の資金

住宅資金・営業外の車両購入資金・婚礼資金・生活資金などは事業に直接関係ないもので、保証は受けられません。例えば会社名義で保証付融資を受け、代表者等の個人名義の不動産の購入に使うことはいけません。

プロパー融資と信用保証協会保証付融資をどう使い分けるか

銀行からの融資には、プロパー融資、保証付融資、ノンバンク保証付融資という分け方があります。これらをどう使い分けたらよいでしょうか。

まず保証付融資とノンバンク融資、どちらを優先させるか。保証付融資を受けられるなら、ノンバンク保証付融資を使う必要はありません。ただ信用保証協会の保証には金額の上限があります。それを補完するものとしてノンバンク保証付融資を考えたいです。

次に保証付融資とプロパー融資の使い分けについて。プロパー融資の審査が通るなら、保証付融資よりもプロパー融資を受けるようにします。理由は次の2つです。

(1)信用保証協会による保証枠

(2)審査の厳しさ

(1)信用保証協会による保証枠

信用保証協会による保証には、上限の金額があります。一般的に保証枠と呼ばれます。無担保でしたら8000万円、担保を含めれば2億8000万円です。またこの保証枠とは別に、経営革新計画やセーフティネット保証による別枠をとれることもあります。

一方、プロパー融資にはこのような枠はありません。

なお保証枠があるとは言っても、信用保証協会は、銀行が融資審査を行うのと同じように保証の審査を行います。企業が銀行へ返済できなくなったら代わりに信用保証協会が銀行に代位弁済しなければならず、その後は信用保証協会が企業に対し債権者となるものの全額回収できない可能性が高いからです。業績や財務内容、売上規模により、保証枠を満額使えなかったり、そもそも保証してもらえないかもしれません。

このような保証枠がある中、会社が成長するにつれ運転資金や設備資金など、多くの融資が必要になってきます。保証付融資のみ受けていたら、この保証枠が埋まってしまえば、それ以上の保証付融資は受けられなくなります。保証付融資のみの状態を早く卒業し、プロパー融資でも受けられるようにしていきたいです。

(2)審査の厳しさ

信用保証協会は、融資を保証することで企業が銀行から融資を受けることを容易にし、企業の育成を金融の面から支援する使命があります。保証を行うには信用保証協会の審査が必要ですが、このような使命があるため、銀行のプロパー融資の審査より信用保証協会の保証審査の方が通りやすいものです。

なお保証付融資の場合でも、信用保証協会の保証審査に加えて銀行でも融資審査を行います。ただし保証付融資では、将来、企業が返済できなくなった時に銀行が貸し倒れを負担する金額は20%のみ(制度によっては0%の場合もあり)なので、信用保証協会の保証審査が通ったら銀行の方でも融資審査を通しやすくなります。つまり、総合的に考えてプロパー融資より保証付融資の方が審査が通りやすいということです。

そう考えると、審査が厳しいプロパー融資を受けられるのであれば信用保証協会の保証枠は後にとっておいた方がよいことになります。将来、会社の業績や財務内容が悪化して銀行のプロパー融資を受けられなくなったに備え、信用保証協会の保証枠を空けておきたいです。

プロパー融資をどう受けられるようにしていくか

保証付融資とプロパー融資の使い分けについて分かりました。しかしプロパー融資を受けられなければ、使い分けようがありません。プロパー融資の審査は厳しいですが、どのようにプロパー融資への道を作っていけばよいでしょうか。

(1)銀行間を競争させる

あなたの会社に融資を行う銀行が一つしかない場合、その銀行が保証付融資しか行おうとしなければ、プロパー融資への道は開けません。複数の銀行から融資を受けていき、新規で営業に来る銀行も含めて銀行間で競争させれば、プロパー融資への道が開けてきます。

いくつかの銀行から融資を勧められているのであれば、プロパー融資の提案を行ってもらいましょう。

例えば、あなたの会社がA銀行から3000万円を全て保証付融資で、B銀行から1500万円を全て保証付融資で受けていたとします。その中C銀行が、新規融資先の開拓を目的として訪問してきました。

C銀行は保証付融資で提案したいと言ってきたとします。その時、次のように言ってみます。

「保証付融資の提案であればうちはいらない。A銀行とB銀行で十分、間に合っている。プロパー融資であれば考える。」

新規融資先の開拓は、どこの銀行でも力を入れています。C銀行は、プロパーでよいから融資を出して、新規融資先を獲得したいと考えるかもしれません。このようにしてプロパー融資の道を作っていきます。

また既存の銀行でも、銀行間を競争させてプロパー融資で提案させるようにします。既存のB銀行が保証付融資を行いたいと言ってこれば

「A銀行で保証付融資は間に合っている。プロパー融資であれば検討したい。」

と言ってみてはどうでしょうか。

(2)銀行にとって行いやすい資金使途でプロパー融資を提案してもらう

銀行にとってプロパーで行いやすい融資とはどのようなものか。融資金額、返済期間、資金使途、この3つの条件があります。融資金額は小さいほど、返済期間は短いほど、資金使途が明確であるほど、銀行はプロパーで融資を行いやすくなります。プロパーで行いやすい融資の代表的なものは、つなぎ資金、季節資金、賞与資金・納税資金の融資です。

ⅰ.つなぎ資金

例えば建設業は、外注費や材料費の支払いが先に来て、工事代金の回収が後となりがちです。このように支払いが先行する場合、支払時に融資を受けて売掛金回収時に一括で返済する融資をつなぎ資金と言います。

ⅱ.季節資金

例えば衣服の製造業は、製造して在庫を増やす時期と、販売の時期がはっきりと分かれ、在庫を増やす時期に資金を多く必要とします。このように1年の間で、資金が必要な時期と回収する時期が明確に分かれる事業の場合、資金を必要とする時期に融資を受け、売上代金が多く回収される時期に返済する、その間をつなぐ融資を季節資金と言います。

ⅲ.賞与資金・納税資金

賞与や納税は一時的に大きな支払いとなりますが、その支払い資金を賞与資金もしくは納税資金と言います。次の賞与や納税の時期までの短期間での返済となります。

これらの融資は銀行にとってプロパーで行いやすいです。融資金額が大きくならないこと、返済期間が短いこと、資金使途が分かりやすいこと、が理由です。

例えば、いきなり銀行に金額3000万円、返済期間5年の希望で運転資金のプロパー融資を申し込んでも、審査が通るのは優良企業でないかぎりなかなか難しいです。一方、金額500万円、返済期間6カ月の賞与資金でプロパー融資を申し込めば、金額が小さく、返済期間が短く、資金使途は明確であることから銀行は審査を通しやすいです。

審査が通ってプロパー融資を受け、返済が進めば返済実績となり、銀行はもっと踏み込んだプロパー融資を行いやすくなります。次は金額が大きく、返済期間が長いプロパー融資を提案してくれるかもしれません。

(3)信用保証協会保証付融資と抱き合わせでプロパー提案をしてもらう

保証付融資とプロパー融資を抱き合わせで提案してもらうよう銀行にお願いし、プロパー融資の道を作っていく方法もあります。抱き合わせとは、例えば保証付融資4000万円、プロパー融資1000万円を同時、もしくは近い時期に実行してもらうことを言います。

銀行は融資を増やしたいものですが、銀行にとってリスクの小さい保証付融資をやはり積極的に行いたいものです。そこで銀行間を競争させ、保証付融資とプロパー融資の抱き合わせで提案してきた銀行で融資を受けたいと言って、抱き合わせ融資を提案させるように誘導します。そうすれば銀行はプロパー融資でリスクをとりながら、一方で保証付融資も行えることになります。

ちなみに信用保証協会は、協会単独よりプロパー融資との抱き合わせの方が、保証を承諾できる金額を増やしやすいです。銀行が同時にプロパー融資を行うということは、銀行もその会社に積極的に融資しようとしていると言えます。銀行が前向きな評価をする企業であれば、信用保証協会も保証金額を増やしやすいです。

 

以上のように、今まで保証付融資しか受けてこなかったのであれば、プロパー融資を受ける道を探りたいです。そして、ある銀行でプロパー融資を受けられたのなら、他の銀行にもアピールします。そうすると他の銀行でもプロパー融資を検討してくれるようになります。銀行は他の銀行がプロパー融資を行っていると、自分の銀行も安心してプロパー融資を行いやすいものです。

プロパー融資は、企業から銀行へ仕掛けていかなければなかなか受けられるものではありません。このように銀行に仕掛けてみてください。