銀行に融資を申し込んだら、担保を差し入れるよう要求されることがあります。銀行は融資に対し担保があれば、もし将来、返済されなくなれば担保をお金に換えて返済にあてることができます。プロパー融資(信用保証協会の保証が付かない融資)に対し担保を差し入れる場合もあれば、信用保証協会保証付融資に対し担保を差し入れる場合もあります。
担保とできるものにはいろいろあります。銀行の融資の担保として代表的なものは不動産です。また預金や有価証券も担保として差し入れることは多いです。他に在庫(商品・製品・原材料)、売掛金、機械なども担保となりうるものですが、銀行の融資ではそれらを担保にすることは少ないです。
例えばある銀行から5000万円のプロパー融資を受けていて、一方で3000万円で売却できる不動産を担保として銀行に差し入れていた場合。融資の返済ができなくなると銀行はその不動産を3000万円で売却することにより3000万円を回収でき(諸費用はここでは考慮しないものとします)、銀行の貸し倒れによる損失は2000万円(5000万円-3000万円)で済みます。もし担保がなければ銀行は5000万円の損失となってしまいます。このように返済ができなくなった時に備え、銀行は担保を要求してくるのです。
銀行の、不動産(土地・建物)・預金・有価証券の担保評価方法
担保としたものは、銀行は必ず担保価値がいくらあるか評価しています。担保価値が高いものを銀行に差し入れていれば、大きな金額の融資を銀行は行いやすくなります。不動産・預金・有価証券について、銀行は担保価値をどう評価するのでしょうか。
(1)銀行は不動産担保をどう評価するか
不動産には土地、建物があります。銀行では不動産の担保価値をどのように計算しているでしょうか。
銀行には不動産鑑定士がいて評価していることが多いです。銀行によって不動産の評価方法はまちまちですが、だいたいの金額は次のように把握できます。
土地の場合。土地のある場所の相続税路線価、近隣の土地の、国土交通省による公示地価、都道府県地価調査による基準地標準価格などを参考に1平方メートルあたりの価格を調べ、それに土地の面積を掛けて実勢価格を算出します。路線価は国税庁のサイト、公示地価や基準地標準価格は国土交通省のサイトで調べられます。なお路線価は実勢価格の80%程度となっており、80%で割り戻すと実勢価格となります。公示地価や基準地標準価格は実勢価格に近いです。
そうして計算された土地の実勢価格に「掛け目」を掛けて担保価値を計算します。融資の返済ができず銀行が競売する場合、実勢価格で売れるとはかぎらないため、銀行は掛け目を掛けて評価を低くしたものを担保価値とします。掛け目は銀行によってまちまちですが、70%あたりであることが多いです。
建物の場合。1平方メートルあたりの再調達価格(同等の建物を新たに建築する時に必要な金額。銀行では建物の構造によって決めていることが多い。)を調べ、それに建物の面積を掛け、そこから法定耐用年数に対し何年経っているか(例:木造住宅であれば法定建物年数は22年。築年数5年であれば22-5=17で17/22を掛ける。)を加味した上で計算することが多いです。
ただし建物の場合、用途の特殊性が強かったり(例えば工場の場合、他の用途に転用が難しい)、築年数が古かったりすれば、銀行は評価を0と見ることもあります。なお建物の場合も、銀行は掛け目を掛けて担保価値を計算します。掛け目は50%あたりであることが多いです。
(2)銀行は預金担保をどう評価するか
預金はどのような種類の預金でも担保となりますが、ほとんどの場合は定期預金・定期積金が担保となります。担保に差し入れる銀行で作成した定期預金・定期積金を担保とすることが普通です。担保価値は、預金の金額そのものです。
(3)銀行は有価証券担保をどう評価するか
有価証券も担保とできます。
担保として使われることが多いのは、上場企業の株式、社債、国債、地方債などです。この中でも上場企業の株式、国債は担保とされることが多いです。有価証券の担保価値をどれぐらいで見ているのか、銀行によりまちまちですが、上場企業株式は株価の50%、国債は額面の95%あたりが目安です。上場企業株式の場合、株価は大きく変動しますので株価が現在の半分となってもよいように、掛け目は50%あたりに低く抑えられています。