銀行に担保を差し入れることによるデメリットには何があるか
銀行に担保を差し入れると、その使用・処分が制限されます。
不動産を担保に差し入れた場合。その後も不動産を自由に使用できます。また売却などの処分もできますが、売却しても不動産に付いている担保(抵当権・根抵当権)を外すことはできません。担保が付いている不動産を買おうとする人はほとんどいないため、実質的に処分が制限されることとなります。
預金や有価証券を担保に差し入れた場合。銀行が預金通帳・預金証書・有価証券を預かることになりますので、自由に使用、処分ができなくなります。
担保に差し入れると、このように使用・処分が制限されます。また融資の返済ができなくなると、担保としたものは銀行により換金され、返済にあてられます。このようなことから、銀行から担保を要求されても安易に応じるのではなく、担保を差し入れてもよいものかどうか、しっかり考えたいです。
銀行が担保を要求してくる5つのケースと交渉方法
銀行は、次のような時に担保を要求してきます。
- 新たに融資を申し込んだ場合
- リスケジュール(返済金額の減額・猶予)を申し込んだ場合
- 会社の業績が悪化した場合
- 不動産購入資金の融資を申し込んだ場合
- 当座貸越を設定したい場合
それぞれのケースについて、担保を差し入れてもよいものか、銀行とどう交渉したらよいか見ていきます。
1.新たに融資を申し込んだ場合
新たに融資を申し込んだ場合、銀行から担保を差し入れるよう要求されることがあります。まずは、担保なしで融資を受けられないか銀行と交渉したいです。
銀行としては、融資を行う場合、担保を差し入れてもらえるにこしたことはありません。融資を申し込んだはじめから銀行は担保を要求してくることがありますが、企業側としては「担保なしで融資を考えてほしい。」と言い切った方がよいです。そうすれば、銀行は担保なしの前提で融資審査をしてくれます。
そして審査の結果「担保を差し入れてもらえなければ融資はできません。」と言われた場合。そこから担保なしで融資を受ける交渉を行うことは困難です。この場合、希望の融資金額を減らしたり、希望の返済期間を短くしたりして、担保なしで融資が受けられないか妥協点を探るのも一つです。
このように交渉しても銀行から担保の要求が変わらないのであれば、別の銀行にも融資を申し込んでみたいです。それで担保なしで融資を行ってくれる銀行が見つかるとよいです。
自社や代表者などが所有する不動産は、銀行に簡単に担保として差し入れるより、後々のためにとっておいた方がよいです。もし将来、どうしても担保を差し入れなければ融資が受けられない場合に備えてです。
新たな融資を申し込んだ時、銀行から担保を要求され、言う通りに担保を差し入れるのは得策ではありません。担保なしで融資を出してくれる銀行がないか、あたってみたいです。
2.リスケジュール(返済金額の減額・猶予)を申し込んだ場合
銀行から新たな融資が出ない中、既存融資の返済が資金繰り上、難しくなった場合。銀行に交渉して返済金額を減額・猶予してもらうことができます。これをリスケジュールと言います。リスケジュールを銀行に申し込んだ場合、それを受ける条件として銀行は担保を要求してくることがあります。
しかし、銀行からそのように要求されても担保を差し入れない方がよいです。銀行はこの機会にと担保を要求してきますが、全て言うことを聞いていれば銀行の思うままとなってしまいます。
リスケジュールを行う必要がある会社では多くの場合、複数の銀行から融資を受けています。リスケジュールの交渉を行う場合、融資を受けている全ての銀行に対し行うのが基本です。その中で一つの銀行からの担保の要求を受け入れることは、銀行間で不公平となってしまいます。一つの銀行で担保を差し入れると、他の銀行からも担保を差し入れるよう要求されてしまいます。全ての銀行に差し入れできるだけの担保となるものがあればよいですが、そうではないので、収拾がつかなくなってしまいます。
リスケジュール交渉の場面で銀行から担保を要求された場合。一つの銀行だけに担保を差し入れると他の銀行からも要求されてしまうことを理由とし、全ての銀行に対し担保を差し入れることなしでリスケジュールをお願いしている、と伝えるべきです。
3.会社の業績が悪化した場合
決算書・試算表を銀行に提出し業績が悪化していることが分かると、銀行から担保を差し入れるよう要求されることがあります。この場合は新たな融資を申し込んだわけではなく、既存融資の保全を強化(将来、返済できなくなった時に担保を換金して返済にあてられるように)するため、銀行は担保を差し入れるよう要求してきます。
この場合、銀行に担保を差し入れる必要はありません。会社にとって全くメリットがありません。
ただ、担保の要求を断るだけでは銀行に対し印象は良くありません。業績が悪化し、将来、既存融資の返済ができなくなるのではと銀行は心配しています。今後の経営改善計画書を作成し、銀行に提出して説明し、経営改善に向けて対策をとっていくことを銀行に伝えた方がよいです。
4.不動産購入資金の融資を申し込んだ場合
自社で使用する土地・建物を購入するために、銀行に融資を申し込むことがあります。不動産購入のための融資は原則、その不動産を担保に入れなければなりません。この場合、融資を受けて購入する不動産を銀行に担保として差し入れるのは問題ありません。
中には、この場合でも担保を銀行に差し入れるのを嫌がり、銀行から運転資金の名目で融資を受け不動産購入にあてようとする会社もあるかもしれません。ただ、運転資金として借りると、不動産購入資金として借りるよりも返済期間は短く設定されてしまいます。運転資金で借りたものを不動産購入資金にあてると資金繰りが厳しくなりますのでやるべきではありません。
5.当座貸越を設定したい場合
当座貸越とは、融資を受けられる限度額(極度額)を設定し、極度額まではいつでも自由に融資を受けたり返済したりできる融資方法です。極度額いっぱいを借り続けることができることから当座貸越は、極度額数百万円ならまだしも数千万円の場合、優良企業でないかぎり担保を差し入れなければ設定が難しいものです。
当座貸越を設定しようと銀行に申し込み、担保を要求された場合。他の銀行にも担保なしで当座貸越を設定できないかあたってみたいです。
どこの銀行も担保を差し入れないと当座貸越を設定しないと言うのであれば、従うしかありません。