銀行の最も大きな収益源は融資を行うことによる利息収入です。しかし日本銀行の統計によると国内銀行の貸出金利(長期・ストック)は、

  • 2001年4月 2.278%
  • 2011年4月 1.607%
  • 2021年4月 0.773%

と大きく下がっていて、それだけ利息収入は少なくなります。そのため銀行は次の行動をとっています。

  • 貸出競争により融資量を増やす
  • 近隣銀行と合併して競争力を高める
  • 投資信託・生命保険はじめ手数料収入を増やす

ここで、銀行は融資料を増やしている、という部分に注目してみましょう。銀行・信用金庫を合わせた総貸出残高は

  • 2001年4月 517兆円
  • 2011年4月 458兆円
  • 2021年4月 578兆円

とここ10年、増え続けています。

金利が下がり利息収入が減少しているため、各銀行は融資量を増やして利息収入を増やしていく、という行動をとっています。ここ最近(2021年)は以前に比べ融資審査がゆるくなり、各銀行、積極的に融資を行っている状況です。

融資量を増やすために銀行は各支店へ大きな融資量のノルマを課している

銀行で融資量を増やすため、各銀行では本部から各支店へ、大きな融資量のノルマを課しています。例えばある支店で2021年3月末時点の融資量が200億円とすると、2021年9月末の融資量は205億円と、5億円増やすように、です。

なおこの例でいうと、半期で5億円の融資を実行すればよい、というわけではありません。融資は返済されていくものです。2021年3月の融資量が200億円で、その後、半期で新規融資を全く行わず一方で20億円の返済が進むと、このままでは融資量は200億円-20億円=180億円となってしまいます。25億円を超えて新たな融資を行わなければこのノルマは達成できません。

なお銀行で融資量の考え方は、平均残高期末残高、2つの考え方があります。平均残高の場合、例えば2021年4月~9月の平均残高を出すのであれば4月1日~9月30日の1日ごとの融資残高をその期間の日数183日で割って算出します。一方、期末残高は単純に、9月30日の残高のことです。

利息は1日単位で加算されるので、平均残高の方が、銀行の収益のもととしての融資量を表すのに適します。一方、期末残高も、それが大きければ翌期からの平均残高に寄与しますし、対外的には期末残高でその銀行の融資量を表すので見栄え的にも良いです。銀行は、平均残高、期末残高、両方をノルマとしています。

本部から融資量のノルマを与えられた支店は、支店内の営業係それぞれへ、ノルマを割り振ります。ある支店では融資量を半期で5億円増加させるノルマとなっている場合。返済分を加味して半期で30億円の融資実行、それを営業係の5人で割り振ってそれぞれ6億円ずつ、というようにです。

銀行のノルマを利用して融資を受ける

あなたの会社がスムーズに融資を受けるには、この銀行員のノルマを利用してみるとよいです。

銀行が特にノルマに追われる時期は9月と3月です。銀行では半期ごとにノルマが割り振られます。銀行の決算期は3月、半期では9月なので、期末・半期末の融資量の残高を大きくするために3月・9月は特に追い込みの時期です。

本来、期初の4月・10月に融資を大きく増やせばその期の平均残高は大きくなりやすいものですが、4月・10月は前の期が明けた直後であり、銀行員はホッとし気が緩んでいる時期です。それよりも3月・9月で、期末残高を大きくするために特にこの時期は銀行員が融資を大きく増やそうとする時期です。

この時期は、ふだんは融資審査がなかなか通らない会社でも融資が通りやすくなる時期です。本来なら時期によって審査の基準が変わってはならないものです。しかし支店長で決裁できるだけの融資金額に抑えて支店長で審査をゆるくして決裁したり、本部で決裁する融資案件でも支店長が本部へ交渉しゴリ押しして審査を通したりすることが多くなります。ノルマを達成しようと営業活動するのは営業係ですが、支店長は自分の支店の営業成績が、直接自分の評価・賞与に大きく影響してきます。

銀行からその後、融資を受けやすくするためにもあえて融資を受ける

3月・9月に銀行員は特にノルマに追われることを利用し融資を受けることによって、あなたの会社はその銀行での融資実績を作ることができます。銀行は融資先会社ごとの融資残高を毎月、集計しています。その融資先会社で過去に実績のある融資残高までは、その後も新たな融資を行いやすくなります。銀行が特にノルマに追われる時期を利用して銀行から多くの融資を受けておけば、その後の融資審査も有利になりやすいのです。

またこの機会に、ふだんはなかなか受けられないプロパー融資(信用保証協会保証付でない融資)を受けて実績を付けておくのも一つです。信用保証協会の保証を付けないプロパー融資は銀行での審査は厳しいですが、プロパー融資を受けた実績を付けておけば、その後もプロパー融資を受けやすくなります。銀行が3月・9月に融資に協力してほしいと言ってきたら「プロパー融資なら協力するよ」と言うと、今まで保証付融資しか受けられなかった銀行でもプロパー融資を出してくれるかもしれません。

今まで融資を受けてこなかった新規の銀行で融資を受けることも考えてみましょう。銀行は、今まで融資を行ったことがない新規先の会社に対しての融資審査は厳しいです。しかし3月・9月で融資量を特に増やさなければならない時期に、新規企業からアプローチされたらふだんより審査をゆるくして融資を出すことが多くなります。また銀行では新規融資先の獲得というノルマもあり、それを達成していない支店では新規融資先を獲得できて融資料も増やせて一石二鳥です。このように新規の銀行で融資実績を付ければ、あなたの会社はその後の融資の選択肢を増やすことができます。