質問

飲食店のフランチャイズで起業した者です。

起業してまだ1年たっておらず、銀行からの最初の融資の返済が終わっていないところです。売上は順調であり、来期の出店を計画しています。出店のための資金繰りを考えているのですが、銀行への返済が済んでいない状態で、銀行から新しく融資は可能なのでしょうか。また、銀行にどのように相談をすればよいのでしょうか。

(O様)

回答

既存の融資の返済が全て済んでいないと銀行から新規の融資を受けられないわけではありません。銀行からの融資は1回しか行えないわけではなく、また前回の融資が完済していなくても、新たに銀行から融資を受けることができます。もちろん、銀行による審査に通る必要はありますが。

銀行から新たな融資を受けるにはまず試算表を用意すべき

飲食店で起業して1年たっていないとのことですが、1期の決算は終えていますでしょうか。終えていなくても、はじめの飲食店を開店して数カ月たっていますから、銀行に対して試算表を提出する必要があります。

企業は1年ごとに必ず決算書を作成し、その中で貸借対照表・損益計算書など作成されます。一方で期の途中、途中経過の損益計算書・貸借対照表などを表したものが試算表です。貴社で会計ソフトを使用し毎月の仕訳入力を行っているのであればその会計ソフトから試算表を出せます。そうでなければ顧問の税理士に試算表を作成してもらうよう相談してください。

なお毎月、試算表が作成されているのが会社経営のあるべき姿です。なぜなら毎月、損益を把握した上で経営者は経営すべきだからです。試算表を毎月作っていないと、前月や今期途中の売上・利益が分りません。そのような状態で今後どのように経営していったらよいか経営者は分かりません。

しかし実際問題、試算表を毎月作成していないのであれば、今後は毎月作成するとして、今回は上に述べた方法により試算表を用意してください。

銀行は飲食店への融資をどう考えているか

飲食店では、出店資金として融資を申し込まれた場合、資金の使い道(資金使途)が明確であるため、銀行は融資を前向きに考えてくれやすいです。

一方で運転資金、具体的には食材の仕入や人件費など諸経費支払いのための融資を飲食店から申し込まれても、銀行は融資に消極的です。その理由は、一言で言うと銀行は飲食店を「現金商売」と見ているからです。現金商売とは、日々の売上を現金で回収できるビジネスのことを言います。

飲食店は売上代金の回収が早いです。お客さんからの飲食代金の回収は、その場で現金回収か、クレジットカードや電子決済による回収です。クレジットカードや電子決済による回収でも数日で入金してもらえる場合が多いです。また食材は腐るため在庫として置いておけるのは一部の食材を除いて数日であり、飲食店で在庫金額が大きくふくらむことはないです。

このように飲食店は、他業種に比べ売上代金の回収が早く、また在庫も大きくならないことから、飲食店の会社が運転資金として融資を受ける必要はないだろう、と銀行は考えているのです。飲食店が運転資金で融資を受けたい場合は、赤字だから現金が足りなくなっているのではないか、と銀行は考えます。そうすると銀行は警戒し、融資を出そうとしません。

このように、飲食店は運転資金では融資を受けづらく、一方で出店資金としては融資を受けやすいという特徴があります。

飲食店が銀行から融資を受けるために用意すべき4つの資料

貴社は1店目の売上が順調とのことですが、銀行から融資を受けたいのであれば試算表を作成し、売上だけでなく利益もしっかり出ていることを確認してください。なお試算表を作成して赤字であったことが判明したのであれば、新規飲食店の出店の前に既存の飲食店を黒字化する取組を行うべきです。

また、新規出店する飲食店の損益計画、出店資金として必要な融資金額、そして銀行からの融資で得る資金を具体的に何の支払いにあてたいのか明細を作成してください。あわせて会社として、今後数年どのように売上・利益を上げていくか、経営計画を作成した方がよいです。

まとめます。以下の資料を作成し、銀行に説明することが、飲食店が融資の審査を通しやすくには必要です。◎は必ず作成すべき、○はなるべく作成したい資料です。

◎1期決算を経ていないのであれば試算表(1期決算を経ているのであれば決算書)

◎新規出店する飲食店の経営計画(5年程度の年次損益計画・計画達成のための具体的施策)

◎融資で得る資金の使い道(何にいくら使うのか)

○会社全体の経営計画(5年程度の年次損益計画・計画達成のための具体的施策)