資金調達のタイミングを間違えた会社には何が起きるか
「明日、500万円の融資ができるところを探してもらえないか。」中小企業経営者からのこのような相談が、筆者のところにはよく来ます。しかし、それだけの短期間で資金調達を行うことは困難です。資金調達が間に合わなければ、取引先に謝って支払いを待ってもらうしかありません。ただし取引先からの信用はなくなってしまうかもしれません。
なぜこのような経営者はギリギリで資金調達を行おうとすることになってしまったのでしょうか。それは、資金繰り予定表を作っていず、行き当たりばったりの資金繰りを行っていたからです。
企業が資金調達すべきタイミングを誤らないためにまずやるべきこと
企業が資金調達すべきタイミングを誤らないために、まずやるべきこと。それは、資金繰り予定表を作成し、自社の資金繰りを6カ月~1年後まで予想することです。
資金繰り予定表を作成し、将来の資金繰りが見えるようになったら、今のままで資金繰りは回り続けるのか見てみます。そうすると近いうちに、資金不足となることが分かります。資金不足となれば、仕入や外注費、諸経費、給料の支払いができなくなり、会社は継続できなくなります。資金不足を防ぐには、利益を増やして会社に現金が残るようにするか、タイミング良く資金調達を行って会社の預金を増やすしかありません。
会社の利益を増やすのは経営者の仕事ですが、資金繰りを回すこと、そのために資金調達を行うことも経営者の仕事です。資金調達で真っ先にとるべき選択肢は、銀行からの融資です。経営者は融資の知識を深め、タイミングを見て適切に資金調達を行うことができれば、その会社は資金不足となりにくい安全な会社となります。
可能であれば、月商(1年間の売上高÷12カ月)の1カ月分の預金を常に保有できるような資金繰りで考えられるとよいです。それができるようになったら、月商の3カ月分の預金を常に保有できるまでになると、かなり安全な経営ができます。
なお経営者の中には、例えば前月に銀行から融資を1000万円受けていて、融資を受けた翌月に「500万円の融資をまた受けたい」となってしまう人もいます。それは、前の月に借りた1000万円では融資が足りなかったことを意味します。資金繰り予定表を作っていず、経営者の勘だけで行き当たりばったりで融資を受けると、資金繰りは困り続けることになります。
資金調達のタイミングが下手な会社は銀行から嫌われる
銀行が嫌がることの一つは、前回の融資から月日がたっていないのにまた融資を受けたいと企業から言われることです。銀行が目安として持っている、次の融資まで空けるべき期間は最低6カ月です。信用保証協会も同様で、前回の信用保証協会保証付融資から6カ月は空けるべきと目安を持っています。なお日本政策金融公庫は1年空けるという目安を持っています。前回の融資から月日がたっていないのに再び融資を受けたいと言ってくる企業は、計画性のない企業と銀行や信用保証協会から見られてしまいます。
資金調達のタイミングを考えるには、資金繰り予定表を作成します。それができると毎月月末にいくら現金が残るかが分かり、そして資金不足となる時期が見えてきます。銀行から融資を受けたい時期の3カ月前に銀行に相談をするのが、資金繰りを考慮した資金調達の基本です。そして希望通りの融資を受けたら半年以上は銀行から融資を新たに受けなくても問題ないか、資金繰り予定表を使って検討します。
資金調達のタイミングが分からなければこうすればよい
一方、資金調達のタイミングを考えるのが難しいとあなたが感じるのであれば、いっそのこと借りられる時にたくさん借りて預金を豊富にしておく、という方法もあります。資金不足となるタイミングに関係なく、借りられる時にたくさん借り、預金を多く持っていれば、資金不足に陥りにくく安全な資金繰りができます。月商の3カ月以上の預金を常に保有できる状態となると、かなり安全に経営できるでしょう。
最近は金利が低くなっているので、大きい金額を借りやすくなっています。借入を増やすのが嫌だからと借入金が少ない一方で現金も少ない企業より、借入金が多くあっても現金を多く持っている企業の方が、よほど安全な経営ができます。借入金はできるだけ少ない方がよい、という先入観をまずはなくすべきです。