政府系金融機関とは、民間金融機関、つまり銀行や信用金庫などを補完する位置づけの金融機関です。

中小企業が、政府系金融機関のみから融資を受けるのは良い形ではありません。銀行や信用金庫を中心に融資を受けていき、民間金融機関を補完する形で政府系金融機関で融資を受けていくと良いです。中小企業が融資を受けられる政府系金融機関は、日本政策金融公庫と、商工組合中央金庫です。

政府系金融機関その1.日本政策金融公庫

日本政策金融公庫は、2008年にいくつかの政府系金融機関が合併してできた経緯から、その中に国民生活事業、中小企業事業、農林水産事業、この3事業があります。同じ日本政策金融公庫ではあるものの、実質、3つの金融機関が別々にあると考えてください。

あなたの会社は日本政策金融公庫の3事業のどこから融資を受けられるか

日本政策金融公庫の中には3事業ありますが、どのように使い分けるとよいでしょうか。この中で農林水産事業は、農業・林業・漁業や食品産業への融資を行い、業種が限られますので、国民生活事業と中小企業事業の比較で見てみます。

2015年の日本政策金融公庫データより
国民生活事業 中小企業事業
対象 小規模企業・中小企業 中小企業
1社あたりの融資残高 約700万円 約1億600万円
融資限度額 7200万円(別枠あり) 7.2億円(別枠あり)
融資先数 約89万社 約4.5万社
融資先企業の従業員数 9人以下が約90% 20人以上が75%

(平均75人)

日本政策金融公庫の国民生活事業では創業者~年商5億円あたりの比較的規模が小さい企業、中小企業事業では年商5億円あたり以上の比較的規模が大きい企業を中心に融資を行っています。ただし、年商により国民生活事業、中小企業事業、どちらで融資を受けられるかを日本政策金融公庫では区別していません。年商が1、2億円の企業でも中小企業事業で融資が受けられますし、年商10億円ぐらいの企業でも国民生活事業で融資が受けられます。

日本政策金融公庫の国民生活事業・中小企業事業、両方から融資を受けられる

中小企業が知っておいた方がよいことは、日本政策金融公庫の中の国民生活事業・中小企業事業・農林水産事業は、別々の金融機関と考えてよい、ということです。そのため、国民生活事業と中小企業事業、両方から融資を受けることが可能です。農林漁業や食品産業では、3つの事業から融資を受けることも可能です。また、同時期に2事業、ないし3事業で融資をうけることも可能です。

日本政策金融公庫の中の3事業では、融資の審査を別々に行っています。決算書等の資料の管理も別々です。3事業、それぞれで職員を採用し、事業間の人事交流もほとんどないようです。3事業は別々の金融機関と考えください。

日本政策金融公庫ではいくらまで融資を受けられるか

中小企業が、政府系金融機関の中で最も利用する機会が多いのは、日本政策金融公庫の国民生活事業です。国民生活事業では、7200万円の限度額(別枠あり)がありますが、実際は2000万円のハードルがあります。総額2000万円までは支店で審査を行い決裁しますが、2000万円を超えると支店審査の後、本部での審査・決裁を行います。本部審査の場合、一気に厳しくなります。2000万円までを目安としておくとよいでしょう。また国民生活事業では、運転資金であれば月商の1カ月分までを、融資総額の目安としています。また融資を受けてから次の融資まで、1年は空けることを求められます。

一方、日本政策金融公庫の中小企業事業では、7.2億円の限度額(別枠あり)があります。中小企業事業では、運転資金の他、設備資金等、金額が大きく返済期間が長い融資を行うことが多いです。

日本政策金融公庫へはどのように融資を申し込むか

日本政策金融公庫へ融資を申し込む方法は、直接申し込む方法、商工会議所・商工会を通じて申し込む方法、顧問税理士を通じて申し込む方法、民間金融機関を通じて申し込む方法、があります。

1.日本政策金融公庫へ直接、融資を申し込む

日本政策金融公庫の国民生活事業では、近くの支店を探し、直接申し込むことができます。訪問か電話で、融資を申し込むと申込書類について後日、連絡が郵送で来ます。申込書類を日本政策金融公庫に送付すると、面談日の連絡が来ます。面談してから2、3週間で審査結果が出ます。

日本政策金融公庫の中小企業事業でも、近くの支店を探し、直接申し込むことができます。ただ国民生活事業より支店は少ないです。

2.日本政策金融公庫へ商工会議所・商工会を通じて融資を申し込む

日本政策金融公庫の国民生活事業へ、商工会議所・商工会を通じ、融資を申し込むことができます。商工会議所等を通じて融資を申し込む場合、マル経融資(小規模事業者経営改善資金)という制度融資を使うことが普通です。商工会議所等の会員となり、商工会議所等から経営指導を受けた上、推薦してもらう必要があります。マル経融資の方が、通常の融資よりは若干、審査が通りやすいです。

3.日本政策金融公庫へ顧問税理士を通じて融資を申し込む

日本政策金融公庫の国民生活事業の融資申込み窓口となっている税理士事務所は多くあります。あなたの会社の顧問税理士がそうであれば、税理士を通じて融資を申し込むことができます。

4.日本政策金融公庫へ民間金融機関を通じて融資を申し込む

多くの銀行・信用金庫では、日本政策金融公庫と提携しています。ただ紹介してくれるだけでなく、銀行・信用金庫が融資を行うのと協調して日本政策金融公庫が融資を行うことが普通です。銀行・信用金庫のみでは多額の融資を行うことができない場合、日本政策金融公庫と協調することにより多くの融資を行うことができます。また日本政策金融公庫の方でも、銀行・信用金庫が融資を行うのなら信用できるとして、協調して融資を行いやすいです。

なお多くの銀行・信用金庫では、日本政策金融公庫の、国民生活事業、中小企業事業、両方と提携しています。

政府系金融機関その2.商工組合中央金庫(商工中金)

商工組合中央金庫(商工中金)は、政府が46%、民間が54%を出資する金融機関で、政府系金融機関に分類されます。年商5億円あたり以上の比較的規模が大きい企業を中心に融資を出しています。ただ年商いくら以上でないと融資を行わない、と明確にしているわけではありません。年商1、2億円あたりの企業でも、商工組合中央金庫から融資を受けることは可能です。

商工組合中央金庫へ融資を申し込む場合、近くの支店を探して直接、融資を申し込みます。また商工組合中央金庫では、プロパー融資(信用保証協会保証付融資)の他、信用保証協会保証付融資も行います。また日本政策金融公庫では行わない返済期間1年以内の手形貸付、手形割引、外国為替取引も行います。預金も受け入れており、このような点で民間金融機関に近いです。