土地を買う、建物を建てる、機械や車両を買うなど、企業が設備投資することはよくあることです。ただ、設備投資には大きな資金が必要です。大きな資金を用意するには資金調達が必要です。

銀行は設備投資の資金を融資しやすいものです。設備資金の融資は使い道がはっきりしていて、融資を行う理由が分かりやすいからです。

ただ、融資を受けないで自己資金で設備投資を行ったり、設備資金ではなく運転資金として銀行に申し込んで融資を受けたりする経営者がいます。

設備投資を自己資金で行うと、当然、資金繰りは厳しくなります。設備投資は金額が大きくなりますので、銀行から融資を受けて行うべきです。また融資を受けるにしても、銀行に運転資金として申し込んで受けた融資を設備投資に使ってしまうと資金繰りが厳しくなります。それには次の2つの理由があります。

  1. 運転資金で申し込むと、設備資金に比べて返済期間が短い。
  2. 運転資金で融資を受け設備資金で使うと、借入れの枠がなくなってしまう。

1.運転資金で申し込むと、設備資金に比べて返済期間が短い。

設備資金の融資を申し込まれた場合、銀行は返済期間を長くするのが普通です。設備には減価償却を行うための耐用年数が設定されていますが、返済期間を耐用年数になるべく近づけることを銀行は考えてくれます。

設備投資を行うと、その設備は長い期間、投資の効果を発揮してくれます。例えば機械を購入したら、長い期間に渡り機械が稼働し、生産をしてくれます。そのため、設備資金の融資は設備が稼働する長い期間で返済すればよい、と銀行は考えます。そして返済期間の目安の一つが、減価償却を行うための耐用年数です。

ただあまりにも長い返済期間とすると、その間に企業の業績が悪化し貸倒れとなるリスクが高まることも、銀行は考えねばなりません。設備の耐用年数と、その会社に融資してもリスクが少ないと考えられる年数、そして融資制度や金融機関で決められている返済期間の上限の年数、それらが考慮されて返済期間が決まります。設備資金の融資は5年~15年、場合によっては20年返済にしてくれることもあります。

一方、運転資金の融資は、設備資金の融資より返済期間は短くなります。運転資金として短い返済期間の融資を受け設備投資に使ってしまえば、返済のペースが早くなり、また設備投資の金額は大きくなることが普通であるため、その後の資金繰りが厳しくなってしまいます。

2.運転資金で融資を受け設備資金で使うと、借入れの枠がなくなってしまう。

設備資金の融資と、運転資金の融資は、金融機関では別ものとして考えています。信用保証協会では、運転資金の保証は多くても総額で月商の3カ月分までという目安があります。日本政策金融公庫(国民生活事業)では月商の1カ月分までという目安があります。一方、設備資金は別に考えます。

例えば年商1億8000万円の会社、12カ月で割って月商は1500万円です。運転資金の融資を信用保証協会で保証してもらう場合、総額、月商の3カ月分、4500万円までが目安です。現在、信用保証協会保証付融資を、運転資金で3000万円借りている会社が、新たに設備投資を2000万円行いたいとします。そのための融資を、設備資金ではなく運転資金として受けると、信用保証協会の保証を運転資金として使う分は3000万円+2000万円=5000万円となり、満額の保証を受けられない可能性が高いです。また、それで信用保証協会の保証を付けて融資を受けても、信用保証協会が運転資金分の保証の目安としている金額に達してしまうため、今後、新たに運転資金の融資を受けたい時に受けにくくなってしまいます。設備投資の融資は、設備資金で銀行に申し込むべきです。

なぜ設備資金ではなく運転資金で融資を受けようとする経営者が多いのか

ここで疑問に思うのが、なぜ設備投資の資金を、設備資金ではなく運転資金として融資を受けようとする経営者がいるのか。それは、設備資金の融資を申込むと銀行に提出しなければならない書類が多いからです。

設備資金の融資の場合、設備の見積書、契約書、発注書や、設備投資したことでどれだけの効果があるのか、例えば売上・利益がどれだけ上がるのか、シミュレーションしたものを銀行は要求してきます。さらに、融資が出て設備の購入先に代金を支払った後、購入先から領収書をもらって銀行に提出するよう要求してきます。このようなことを面倒くさがって、設備資金ではなく運転資金として銀行に融資を申し込む経営者が多いのです。

ただ設備資金の融資は、上で述べたように銀行は返済期間を長くしてくれやすいこと、運転資金として出せる融資上限の目安とは別ものとして設備資金の融資を見てくれること、というメリットがあります。そしてこれらのメリットは、会社の今後の資金繰りに良い影響があります。

設備投資を行う場合は銀行から融資を受けること、そして設備資金として融資を申し込むこと。これらは自分の会社の資金繰りを厳しくしないための、経営者が守るべき基本です。