中小企業が融資を受ける場合、大きく次の3つの金融機関が考えられます。

  1. 銀行・信用金庫・信用組合
  2. 政府系金融機関
  3. ノンバンク

これらの金融機関、どのように使い分けたらよいのでしょうか。

金融機関の使い分け1 銀行・信用金庫・信用組合

銀行には、メガバンク、地方銀行、信用金庫、信用組合があります。メガバンクとは三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行のことを言い、各都道府県にある地方銀行と区別します。これらの使い分けをどのようにしたらよいのでしょうか。

まずメガバンク。年商10億円以上の会社でないと、なかなか相手にしてもらえません。一部のメガバンクでは年商10億円未満の中小企業に信用保証協会保証付融資を勧めてきますが、年商10億円未満の会社がプロパー融資(信用保証協会保証付でない融資)をメガバンクから受けることは期待できません。

年商10億円未満の会社は、信用保証協会保証付融資を受けるのなら、メガバンクではなく地方銀行・信用金庫・信用組合で受けた方が良いです。将来、プロパー融資も受けることを期待できるからです。

プロパー融資は信用保証協会の保証が付かない分、銀行等での融資審査のハードルは高いです。しかしプロパー融資には信用保証協会の保証枠(保証の上限)のような制限がないため、プロパー融資を受けられるならそれで受け、信用保証協会保証付融資の保証枠は空けておき、将来、業績が悪化するなどプロパー融資を受けられない時のために備えておきたいです。

また地方銀行・信用金庫・信用組合は、1本が数千万円となる融資だけでなく、1本が数百万円程度の小さな金額の融資にもこまめに対応してくれます。また企業が依頼すれば、銀行・信用金庫・信用組合の方で担当者を付けてくれ、担当者が毎月訪問してくれるようになります。特に地方銀行の中でも規模の小さな銀行や、信用金庫・信用組合は、さらにきめ細やかに対応してくれます。地方銀行・信用金庫・信用組合は、地域に根付いている金融機関として、地域の企業と共存共栄のスタンスです。それがメガバンクとの違いです。

企業の業績が悪くなった場合、親身になって相談してくれる人が、地方銀行・信用金庫・信用組合には多いです。一方、そういう時のメガバンクの姿勢は厳しいです。そこを考えても、年商10億円未満の企業はメガバンクではなく地方銀行・信用金庫・信用組合を中心に融資を受けていきたいです。

ただし、信用金庫・信用組合から融資を受ける時に気を付けないといけないことがあります。信用金庫・信用組合には、支店がある地区内に事業所がない会社に対して融資できないという規制があります。困るのが、会社の事務所を、信用金庫・信用組合の支店がある地区内から、その信用金庫・信用組合の支店がない地区に移転する時です。地区外に移転すると、今まで融資をしてくれた信用金庫・信用組合がとたんに融資をしてくれなくなることがあります。信用金庫・信用組合から融資を受けようとする場合、今後の事務所の移転予定も考慮する必要があります。

最後に、メガバンクのメリットは、地方銀行・信用金庫・信用組合に比べて大きな金額の融資を行いやすいこと、優良な企業に対してはとても低い金利で融資を提案してくれやすいこと、海外展開やM&Aなど広いアドバイスを求めやすいことです。年商10億円以上の会社はメガバンクや、地方銀行を中心に融資を受けていくとよいです。

金融機関の使い分け2 政府系金融機関

中小企業が融資を受けることのできる政府系金融機関には、日本政策金融公庫と、商工組合中央金庫があります。また日本政策金融公庫には3つの事業があります。国民生活事業、中小企業事業、農林水産事業です。

日本政策金融公庫のホームページを見ると、日本政策金融公庫の役割は「一般の金融機関が行う金融を補完すること」を旨とする、とあります。政府系金融機関の職員は、民間金融機関を差し置いて融資を積極的に行わない、という意識が高いです。民間金融機関を中心に融資を受けていき、政府系金融機関は民間金融機関の補完で融資を受けていく、と考えるとよいです。

日本政策金融公庫の国民生活事業は創業者~年商5億円あたりの比較的規模が小さい企業、中小企業事業では年商5億円あたりからの比較的規模が大きい企業を中心に融資を行っています。ただし、あくまで目安です。年商によって、国民生活事業、中小企業事業、どちらで融資を受けられるか、日本政策金融公庫では区別していません。年商が1、2億円の企業でも中小企業事業で融資を受けられますし、年商10億円あたりの企業でも国民生活事業で融資を受けられます。また農林水産事業は農林漁業・食品産業の企業に融資を行います。

なお日本政策金融公庫の中の国民生活事業・中小企業事業・農林水産事業は、別々の金融機関と考えてよいです。そのため、国民生活事業と中小企業事業、両方から融資を受けることも可能です。

商工組合中央金庫は、年商5億円あたりからの比較的規模が大きい企業を中心に融資を行っています。ただし、年商いくら以上でないと融資を行わないと明確にしているわけではありません。年商1、2億円あたりの企業でも、商工組合中央金庫から融資を受けることは可能です。

金融機関の使い分け3 ノンバンク

ノンバンクとは、銀行・信用金庫・信用組合や、政府系金融機関とは別の、貸金業を営む金融会社のことを言います。数百万円の無担保融資を専門にしたり、売掛債権担保融資や不動産担保融資を専門にしたりするなど、それぞれのノンバンクで特徴があります。

銀行等に比べて金利は高く、無担保融資であれば5%~18%になります。銀行等で融資を受けられるのならノンバンクは使わないようにします。しかし銀行等から融資を受けることが困難であれば、売掛先等から入金があるまでをつなぐ資金、会社の立て直しのための運転資金など、臨機応変な使い方ができます。

ただノンバンクから融資を受けるのであれば、高い金利で受けたノンバンクの融資から低い金利で受けた銀行等の融資を返済することにならないよう、銀行等からの融資の返済の減額・猶予、つまりリスケジュールを行う必要があります。

まとめ それぞれの金融機関の特徴を覚えてうまく使い分けていこう

以上、それぞれの金融機関の特徴と使い分け方を述べてきました。年商10億円未満の企業は地方銀行・信用金庫・信用組合を中心に、年商10億円以上の金庫はメガバンク・地方銀行を中心に、融資を受けていきます。そして政府系金融機関は民間の金融機関の補完として融資を受けていきます。銀行・信用金庫・信用組合や政府系金融機関で融資を受けられない場合はノンバンクで融資を受けることも考えますが、その場合は銀行等の融資はリスケジュール(返済減額・返済猶予)するべきです。

それぞれの金融機関の特徴を覚えて、うまく使い分けていきたいものです。