銀行が融資審査で最も考えることは、出した融資が最後まで返済されるのかどうかです。企業から最後まで返済されなかったら、銀行は大きな損失を出してしまいます。では銀行は融資審査で、企業の返済能力をどのように見ているのでしょうか。返済能力が高いと見られる企業は、銀行から融資を受けやすくなります。
融資審査で企業の返済能力を銀行にどうアピールするか1 長期融資の場合
返済期間1年を超える運転資金(長期運転資金と言います)や設備資金の融資の場合、毎月の分割返済を行っていくのが基本です。その返済原資、つまりどこから返済のための資金を持ってくるのか。事業で利益を上げ、それで生み出される現金(キャッシュフローと言います)を原資に融資の返済がされていくのが理想の形です。
キャッシュフローは、簡易的には当期純利益+減価償却費で計算されます。例えば直近の決算書の損益計算書を見ると、当期純利益は300万円の黒字、減価償却費が600万円ある場合。この会社は1年間で300万円+600万円=900万円の現金を生み出した、と銀行は見てきます。キャッシュフローは900万円となります。
またこの会社の毎月の返済金額が200万円、年間の返済金額が2400万円である場合。事業で生み出した年間キャッシュフロー900万円を原資に返済を年間2400万円行うと、差し引き△1500万円、不足することとなります。900万円のキャッシュフローで2400万円の返済はできませんので、もともとあった現金を使わなければなりません。1年間で現金が1500万円減少することとなります。しかしもともと1500万円の現金がなければ資金不足に陥りますので、穴埋めするための融資を定期的に受けていく必要があります。
年間返済金額が2400万円の会社では、年間2400万円以上のキャッシュフローがあれば、キャッシュフローを原資として返済していけます。しかし、年間の返済金額までキャッシュフローを稼ぐことができている中小企業はなかなかありません。この例の会社では年間1500万円の現金が減少します。それを穴埋めするために、年間で1500万円の新たな借入れを起こさなければ、資金繰りは回りません。このような会社は、現金が減っていくにつれ新たな融資を受け、現金を補てんすることが必要です。
審査を有利にするために。長期融資を受けたい場合の返済能力の説明の仕方
返済能力を銀行に示しアピールすることにより、融資は受けやすくなります。返済能力について、下記3パターンあります。それぞれ解説します。
- 直近決算の損益計算書でキャッシュフローが年間返済金額(新たな融資実行後)を上回っている。
- 直近決算の損益計算書でキャッシュフローが年間返済金額(新たな融資実行後)を下回っているが、利益が今後上がっていき今後はキャッシュフローが上回る計画を立てられる。
- 直近決算の損益計算書でキャッシュフローが年間返済金額(新たな融資実行後)を下回っていて、かつ今後もキャッシュフローが上回る見込みがない。
1.直近決算の損益計算書でキャッシュフローが年間返済金額(新たな融資実行後)を上回っている。
直近決算の損益計算書で年間キャッシュフロー(当期純利益+減価償却費)が、新たな融資実行後の年間返済額を上回る会社であれば、銀行から融資を受けやすいです。例えば年間キャッシュフローが2000万円あり、また既存の融資の毎月返済金額が100万円、新たに受けたい融資の毎月返済金額が50万円である場合。新たな融資を受けた後の毎月返済金額は100万円+50万円=150万円になります。年間にすると150万円×12カ月=1800万円で、年間返済金額をキャッシュフローが上回ります。キャッシュフローで融資の返済ができる会社であると見られ、銀行から新たな融資は受けやすいです。
2.直近決算の損益計算書でキャッシュフローが年間返済金額(新たな融資実行後)を下回っているが、利益が今後上がっていき今後はキャッシュフローが上回る計画を立てられる。
新たな融資の返済金額を追加した後の年間返済金額に対し、直近決算の損益計算書で計算したキャッシュフローが下回ってしまう会社の場合。融資を受けやすくするには、追加資料で今後の経営計画書を作ると良いです。今後5年程度の毎期の損益計画を作成し、利益が上がっていくことにより、今後のキャッシュフローが大きくなり返済金額を上回る見込みであることを示します。
3.直近決算の損益計算書でキャッシュフローが年間返済金額(新たな融資実行後)を下回っていて、かつ今後もキャッシュフローが上回る見込みがない。
新たな融資の返済金額を追加した後の年間返済金額に対し、直近決算の損益計算書で計算したキャッシュフローが下回ってしまう会社の場合。
融資を受けやすくするためには、追加資料で今後の経営計画書を作ります。今後5年程度の毎期の損益計画を作成し、利益が上がっていくことで今後のキャッシュフローが大きくなることを示します。
しかし既存の融資の返済金額が大きいなど、今後の経営計画書で利益が上がっていく計画を書いても、キャッシュフローが年間返済金額を上回る見込みがない場合。そのような会社は定期的に融資を受けて、返済が進むにつれ減っていく現金を補てんしなければなりません。経営計画書により将来利益が上がっていきキャッシュフローが大きくなる計画を示すとともに、今後の月次資金繰り予定表を作り、何月にどこの銀行でいくらの融資を受ける予定なのかを示すと良いです。
融資を今後も受けていくことで資金繰りが回るということを資金繰り表で示します。また、他の銀行も自分の会社への融資姿勢は積極的であることを、今回新たな融資を受けようとする銀行に伝えるようにします。
融資審査で企業の返済能力を銀行にどうアピールするか2 短期融資の場合
短期融資とは、返済期間1年以内の融資を言い、長期融資とは違った返済能力の見方を銀行はします。短期融資で代表的なのは、つなぎ資金、季節資金です。それぞれ、銀行に返済能力をどうアピールするか説明します。
融資審査を有利にするために、つなぎ資金の返済能力の説明の仕方
建設業などによく見られる、材料費や外注費などの支払いが先に来て売掛金の入金が後に来る、その間をつなぐための融資をつなぎ資金と言います。つなぎ資金の場合、売掛金を回収し、それを返済原資に融資を一括返済するので、契約書や発注書などの資料を用い、いつ、いくらの売掛金入金があるのか、銀行に示します。
融資審査を有利にするために、季節資金の返済能力の説明の仕方
1年の間で在庫備蓄の時期と在庫を販売する時期がはっきりと分かれ、その結果、資金不足となる時期と資金が潤沢になる時期とがはっきりと分かれる会社の場合。資金不足となる時期をつなぐ資金の融資を季節資金と言います。季節資金の場合、在庫備蓄と在庫販売の流れを表にして示し、在庫販売で入ってくる金額で返済できることを銀行に示します。
銀行に返済能力をアピールすることで融資審査を有利にしよう
以上、新たな融資審査にあたり、銀行へ返済能力をアピールする方法を説明しました。返済能力について、融資審査に有利になる説明を行ったり、資料を提出したりすることによって、融資を受けられる可能性を高くできます。