税金・社会保険料等を支払えない、滞納している会社は多くある

資金繰りが厳しい会社の多くでは、税金や社会保険料を支払えない、滞納状態となってしまっています。

資金繰りが厳しい会社は赤字であることが多く、法人税など会社の所得にかかる税金の金額は大きくならず、支払えない状態となっている会社は少ないです。一方、消費税や源泉所得税、社会保険料を滞納している会社は多いです。

売上を上げた時、売上先から消費税を上乗せした金額を回収します。消費税上乗せ分の金額は消費税の納付期限まで会社が預かる形になります。源泉所得税と住民税特別徴収分は社員の給与から天引きし、納付期限まで会社が預かる形になります。社会保険料や労働保険料も社員の給与から天引きし、会社負担分も含めて後日、年金事務所や労働局に納付するものです。これらは会社が預かって後日支払う性質のものであり、預かった資金を運転資金に流用してしまうのはあってはならないことです。しかし銀行から融資を受けられないなどで資金不足に陥ってしまい、税金や社会保険料等を納付する前に運転資金に流用してしまっている会社は多いのが実情です。

税金・社会保険料等を支払えない会社が滞納を放置するとどうなるか

税金・社会保険料等を支払えない会社が、滞納している状態を放置していると、税務署や年金事務所等から差し押さえされてしまいます。税務署や年金事務所等は裁判での手続きを経ずいきなり差し押さえできます。差し押さえされるのは、会社の預金、不動産、売掛金、解約返戻金のある生命保険などです。これら、何を差し押さえてくるか、差し押さえされないと分かりません。

融資を受けている銀行の預金口座を差し押さえられたら、その銀行からしばらくは融資を受けられなくなります。また差し押さえられた銀行で信用保証協会保証付融資を受けていれば、銀行は信用保証協会に差し押さえのことを報告します。信用保証協会はどこの銀行の融資でも共通ですので、預金を差し押さえられた銀行だけでなく、他の銀行でも信用保証協会保証付融資を受けることがしばらく難しくなります。

会社が所有している不動産を差し押さえされた場合、差し押さえの事実を銀行が分かったら、会社の預金を差し押さえられた場合と同様です。銀行は、融資を出している会社が所有している不動産の登記簿を独自で調べることがあります。また銀行に担保に入れている不動産であれば、登記簿を定期的に調べることになっています。

売掛金を差し押さえられた場合、売掛先に税務署や年金事務所等から差し押さえの通知が行きますので、売掛先には当然、差し押さえの事実は分かってしまいます。そうなると売掛先からの信用を失うことになってしまい、最悪、今後の取引をしてもらえないかもしれません。

このように、税金や社会保険料等を滞納し、そのまま放置しておくと、税務署や年金事務所等から差し押さえされてしまいます。税金や社会保険料等は国民の義務なので支払うことは当然ですが、資金繰りが厳しくどうしても支払えない場合、税務署や年金事務所等に相談しなければなりません。なお住民税特別徴収分を支払えない場合は各市町村へ、労働保険料を支払えない場合は労働局へ相談しなければなりません。

ある運輸業の会社は、税務署からの督促の郵便、電話、呼び出し命令を全て無視し、その結果、メインの得意先への売掛金を差し押さえられてしまいました。その売掛先は上場企業であり、差し押さえされるような不安な会社と今後の取引はできないと、取引を打ち切られてしまいました。その得意先への売上が全売上の6割を占めていたその会社は、税務署からの差し押さえをきっかけとして倒産してしまいました。こうならないよう、税務署や年金事務所等からの通知は無視せず内容を確認し、支払いできないのなら誠意を持って話し合う必要があります。

税金を支払えない場合、税務署へどのように相談するか

法人税や消費税、源泉所得税の滞納の場合、税務署に訪問し相談します。税務署には「換価の猶予」「納税の猶予」という制度があり、その制度を使って分割支払いできないか相談します。最長12カ月分割の相談ができますが、税務署が認めてくれなければ分割支払いにできないので、粘り強く相談するしかありません。

社会保険料を支払えない場合、年金事務所にどのように相談するか

社会保険料を滞納した場合、年金事務所に訪問し、滞納分を分割支払いにできないか相談します。最長12カ月分割の相談ができますが、年金事務所が認めてくれなければ分割支払いにできないので、粘り強く相談するしかありません。今後1~2年程度の月次の損益計画書に基づいた支払い計画の資料を作ると相談しやすいです。なお分割支払いの相談ができるのは過去に発生した社会保険料であり、これから新規に発生する社会保険料は期日に納付していかねばなりません。