知人から借金する時、知人へ約束するのは「いつ返すのか。」です。例えば6月30日に「7月31日に返します。」と約束して知人から借金したとします。資金繰りが厳しい会社の社長が知人から借金した場合、いつ返すのかを知人に約束しても、約束の日に返せることは少ないです。知人は返済を促しますが、返せるお金がないのに返すことはできません。

そもそも、資金繰りが厳しい会社の社長が知人から借金する目的は何なのでしょうか。買掛先など取引先へ支払うお金がなく、その支払いにあてること、が目的であることが大半です。

知人から借金できたら買掛先など取引先への支払いにあてるため、借金したお金はすぐなくなってしまいます。その後、約束の日に返すことは、多くの場合できません。なぜなら約束の返済日にも、知人への返済の他、いろいろな支払いがあるからです。なお資金繰り表を作りいつ返せるか計算した上で知人に借金をお願いする経営者はめったにいません。

約束の日に返せなかった場合、当然ですが知人から催促が来ます。その催促に悩んでいる経営者は多いですが、一方で貸した知人の方はもっと悩んでいます。借金した方は、知人から借金しその資金を使い、返せないというだけの話です。一方で貸した方は、自分のお金を自分のために使わず人に貸して返ってこないという話であり、より深刻です。

知人からの借金を一括で返しても問題ないか経営者は考える

知人から借金して返せない経営者は、まずその知人へ、申し訳ないと思う気持ち、そしてお金を貸してくれたことへの感謝の気持ちを持たなければなりません。しかし返せる現金はないのですから、事情を知人に説明した上で、どのように返済していくか、誠意を持って話し合いしていかねばなりません。

知人は、一括で返すよう要求してくることでしょう。しかし借りた方は、その後、売掛金が多く入ったり銀行から融資を受けられたりして一時的に現金が多くなっても、一括で知人に返済するのは待ってください。知人へ借金を返すのは、資金繰り表を見て、一括で返しても問題ないと確認した上で行うべきです。

なお銀行から融資を受けられ、その資金を知人へ一括で返済した場合、銀行はそれを知ったら怒ります。知人へ返済する資金を借りたいと銀行へ申し込んだ上で、銀行の了解のもと知人へ返すのならよいです。ただ実際は、知人への返済を目的とした融資を銀行が行うことはめったにありません。

借金を分割での返済とできないか知人に相談する

しかし知人には借金を返さなければなりません。知人へは、分割返済できないか相談してください。12カ月分割、36カ月分割など、知人から借金している金額や、その知人との関係、また知人自身の資金繰りを考えながら、知人へ相談してください。できるだけ長い期間をかけた返済の方が、自分の会社の資金繰りは当然、楽になります。

借りて返せず迷惑をかけているのはこちらです。その中で、現金ができたら全てを知人へ返済したくなるのは当たり前のことです。ただ自分の会社の資金繰りを考えず知人へ一括返済し、自分の会社が立ち行かなくなってしまってはいけません。貸してくれた知人に申し訳ないという気持ちを持ちながらも、割り切って考え、分割返済にしてもらう相談を知人に行います。

なおどうしても知人に一括返済したいのなら、その後、自分の会社が倒れても後悔はないと覚悟した上で一括返済してください。

知人からの借金を返せという督促を無視するとどうなるか

なお知人から返済を促されてもこちらが無視する場合、知人は何をしてくるでしょうか。知人は弁護士に相談し、仮差し押さえしてくることが、考えられることの一つです。本差し押さえは裁判での判決・和解等を経た上でないと行えませんが、仮差し押さえはできます。債務者が自分の財産を別に移すことを本差し押さえの前にやってしまうのを防ぐためです。

仮差し押さえは債務者の財産に対し行いますが、会社の預金口座や不動産に仮差し押さえしてきたらどうなるか。仮差し押さえされた預金口座が融資を受けている銀行の口座であったり、仮差し押さえされた不動産が銀行に担保に入れている不動産であったりすれば、その会社に融資している銀行の方も、融資を一括で返せと要求してくることもあります。そうなればやっかいです。

なお知人から会社として借金しているのではなく経営者個人として借金している場合でも同じです。経営者は会社が銀行から受けている融資の連帯保証人になっているのが通常です。経営者個人の預金口座を知人から仮差し押さえされてしまい、かつ仮差し押さえされた預金口座が会社で融資を受けている銀行の口座であったら、銀行は融資を一括で返せと要求してくることもあります。

こう考えると、知人からの借金を放置してはいけません。誠意を持って相談しなければなりません。

なお知人から、返済方法を定めた公正証書を作成してほしいと言ってくることがあります。そのねらいは、公正証書を作成することで返済が滞った時、裁判での判決を得るなどの段階を踏まなくても本差し押さえができる、ということです。借金している方としては、公正証書を作成するのはなるべく避けたいですし、もし公正証書を作成するのなら長い期間での分割返済とさせてもらうなど、誠意をもって知人に相談したいものです。