給与は、事業を行う中で最も優先すべき支払いです。給与の遅延は、極力やらないようにしたいです。
資金繰りが厳しく、支払わなければならないものの中から一部の支払いを遅らせなければならない場合。支払いの優先順位付けを行います。支払いを遅らせる優先順位は次のとおりです。
- 銀行返済
- 税金・社会保険料
- 諸経費
- 買掛金(仕入・外注)
- 給与
このように給与の支払いは、最優先です。給料日に給与が入ってこないと、社員は「会社は大丈夫か?」ととても不安になります。また社員は、給料日に給与が入ってくるものとして生活を組み立てています。1日でも遅れると不安になり、中には生活できなくなる人も出てきます。次の仕事を探し出す社員も出てきます。給与は社員それぞれの生活の元になるものです。
また給与の遅延により、社員のやる気は一気に下がります。社員が働いてくれないと、会社は存続できません。他のいろいろな支払いは遅らせても、これは遅らせられません。銀行返済・税金・社会保険料・諸経費・買掛金の支払いを止めれば、給与は捻出できるのではないでしょうか。
社員への給与がどうしても遅延する場合、社員へどう伝えるべきか
給与をどうしても支払えない場合、支払いを遅らせる順番は、経営者→役員→社員、です。経営者や役員への給与を遅らせて資金繰りを回すことができるのであれば、そうすべきです。経営者の給与は当然、後回しです。役員も経営側の人であり、これだけ資金繰りが厳しくなったのは経営者とともに役員の責任でもあります。非常事態の時にこそ、役員に協力を求めるべきです。一般社員の給与を最優先に支払います。
それでも社員への給与を遅延せざるをえない場合。3~5日前に経営者が直接、社員に伝えます。それより前であると、社員としては、まだ給料日まで日数があるから社長が何とかしろと思うものです。一方、給料日当日や前日に給与は遅延になると言われても、社員はどうしようもなくなります。
給与の遅配への理解を社員に求める際のポイントは、次の3つです。
- 社員に対し経営者が給与遅延のおわびの姿勢を見せ、正直に事情を話す。
- 社員に対し、遅延した給与はいつ支払いできるのか話す。
- 社員に対し、遅延した給与の一部でも支払う。
1.社員に対し経営者が給与遅延のおわびの姿勢を見せ、正直に事情を話す。
給与の遅配という事態が起きると、当然、社員は不安に思い、中には感情的になる社員もいるでしょう。まずは経営者が頭を下げることで、社員の高ぶった感情を抑えなければなりません。経営者が頭を下げることで「社長も大変なんだ。」という同情心を社員に抱かせ、今後の社員との交渉を行いやすくします。
まずは謝罪。その上で、なぜ給与遅延となってしまったのか、経営者は正直に社員に情報を公開すべきです。会社の経営や資金繰り状態と、今後、会社をどのように立て直していくか、を話します。社員は給与遅延への怒りとともに、今後、会社はどうなってしまうのか不安に思っています。現状を正直に伝えた上で、会社をどのように立て直していくか話してください。
2.社員に対し、遅延した給与はいつ支払いできるのか話す。
いつ、遅延した給与の支払いをできるのか社員に提示することで、社員の不安を多少抑えることができます。
社員には生活がありますので、社員には遅延した給与をいつ支払うのか、支払日を伝えます。日次資金繰り表を作って資金繰りをシミュレーションし、確実に支払える日を考えなければなりません。遅延した給与の支払日を伝えた後、その支払日にまた支払えなかったら、社員から社長への不信感はとても大きくなります。
3.社員に対し、遅延した給与の一部でも支払う。
社員の不安は、社長が遅延した給与の支払いを本当にしようとする気があるのか、というところにもあります。また社員には生活がありますので、貯金がない社員であれば特に、給与の遅延で生活に困ってしまいます。
例えば、はじめ一律 10万円を支払うというように、支払える金額は支払うべきです。そのことで給与は必ず支払うという意思を社員に見せるとともに、社員が生活できるようにします。
全社員に全額、給与を支給できないのであれば、いくらなら支給できるのか日次資金繰り表で考え、一部でも給料日に支払うことで、社員の不安を抑えることができます。
給与を遅延する場合、社員はどんな動きをすることが想定されるか
以上のように社員との話し合いがうまくいけばよいのですが、社員によっては退職する以外に、労働基準監督署に相談する、合同労働組合に相談する、裁判を起こす、ということもあります。いくら経営者が社員に給与遅配について謝罪しても、このような社員の動きは止められませんので想定しておく必要があります。
このように、給与を給料日に社員に支払えない場合、まずは社員の立場や気持ちを考えた上で行動していくことが、困難を乗り切るために重要です。