資金繰りが苦しい、もう会社が持たない。このような時、会社の存続をあきらめてしまうのか、それともなんとか踏ん張るのか。踏ん張ろうとする経営者の方が多いのではないでしょうか。

資金繰りが苦しい時に多くの経営者がやろうとするのは資金調達でしょう。銀行や日本政策金融公庫に融資を受けられないか相談します。しかし資金調達はすでにやり尽し、これ以上の資金調達手段がないという会社の場合。経営者が次に考えるべきことは、支払いを遅らせることです。

緊急の資金繰りとは何か

資金繰りが苦しい状態では、緊急の資金繰りを組まなければなりません。資金繰りを回すには、現金の入りを増やすか出を減らすしかありません。現金の入りとは売上の入金か資金調達になりますが、すぐに売上を上げて入金を増やすことは難しいですし、また資金調達はできるのならすでにしていることでしょう。そう考えると、緊急の資金繰りではいかに出を減らすかを中心に考えていかねばなりません。

現金の出を減らすには、経費削減を行うか支払いを待ってもらうかです。経費削減は当然行うとして、支払い予定にあるものの支払いを先延ばしにしたり分割支払いにしたりしなければなりません。支払いを遅らせる先に交渉することが必要です。

日次資金繰り表を作り、将来3カ月程度の毎日の資金繰りを見えるようにした上、日次資金繰り表を見ながらどの支払いを遅らせるか考え、シミュレーションします。また遅らせた支払いも後日、支払いしなければなりません。支払いを遅らせる先に対し、いつであったら支払えるのか、また一括での支払いが難しければ分割で支払えないか、交渉していかねばなりません。日次資金繰り表があれば、支払い予定をシミュレーションすることで支払い計画を立てることができます。

日次資金繰り表(日繰り表)の作り方

緊急の資金繰りでの支払いの優先順位の考え方

今は、全ての支払いを行うと資金不足に陥ってしまう状態です。支払いの優先順位を付けなければなりません。緊急の資金繰りでは、支払いの優先順位をどのように考えたらよいのでしょうか。

企業の支払いは次の5つに分かれます。

  1. 銀行返済
  2. 税金・社会保険料
  3. 諸経費
  4. 買掛金(仕入・外注)・手形
  5. 給与

この中で支払いの優先順位が高い方から順番をつけると、5→4→3→2→1です。なぜこの優先順位なのかの理由は、その支払いを止めても事業を続けられるかどうかです。

給与の支払いを止めたら、社員のやる気は大きく下がり、生活できなくなる社員も出てきて社員は辞めていくことでしょう。仕入先や外注先の支払いを止めたら、仕入れができなくなったり、外注先が仕事を請けてくれなくなったりします。そうなると事業の継続は困難です。そう考えると、給与と買掛金の支払いの優先順位を高くすべきです。

一方、銀行への融資返済を止めても事業を続けていくことができます。銀行返済の優先順位は後にします。また税金・社会保険料の支払いは国民の義務なので、支払いを止めるべきではないですが、一方で給与や買掛金の支払いを止めて事業を続けられなくなれば、税金や社会保険料を支払っていくこともできません。銀行の融資の返済を止めても資金繰りが回らないのであれば、税金や社会保険料の支払いを止め、分割支払いにできないか、税務署や年金事務所などと交渉します。

緊急の資金繰りでは支払いの優先順位の順番で止めていく

日次資金繰り表で将来3カ月程度の資金繰りを見て、まずは銀行への返済が支払い予定にあるか、探します。資金繰り表の中に銀行への返済予定があったら、すぐに銀行に訪問し、返済を止めてもらえないか相談します。融資の返済を減額もしくは猶予することをリスケジュールと言います。利息は支払わなければなりませんが、元金の返済は止められるものです。銀行融資のリスケジュールを行って、資金繰りが回るか、日次資金繰り表でシミュレーションします。

日次資金繰り表で、銀行融資の返済を0にして資金繰りが回ればよいのですが、それでも回らない場合。日次資金繰り表の中で、税金や社会保険料の支払い予定がないか、見てみます。数万円程度の小さな支払いを止める交渉するのは手間がかかるので、大きな金額の税金や社会保険料の支払いがないか、見てみます。

納付書で支払うのであれば支払わず、税務署や年金事務所へ分割支払いの交渉を行います。納付書での支払いではなく預金口座からの引き落としであれば、口座残高をカラにして引き落しできないようにすることも考えます。

税金や社会保険料の支払いは国民の義務です。当然支払うべきものですが、しかし給与や買掛金の支払いを遅らせて会社が継続できないようになるのなら、税金・社会保険料の支払いを止めて分割支払いの交渉をするしかありません。詳しくは下記ページを見てください。

税金・社会保険料を資金繰りが厳しく支払えない時どうするか

銀行融資、そして税金や社会保険料の支払いを止めて、また日次資金繰り表でシミュレーションします。それでも資金繰りが回らない場合、諸経費の支払いを止める、それでも資金繰りが回らなければ買掛金や手形の支払いを止める、という順番で考えていきます。買掛金や手形、諸経費の支払い、給与の支払いを止める方法は下記ページを見てください。

買掛金・諸経費・手形の支払いを待ってもらう交渉はどう行うか

社員へ給与を支払えず遅延する場合、社長はどうすべきか

資金調達もやりつくし、資金繰りが持たないのであれば緊急の資金繰りを組まねばなりません。緊急の資金繰りでは、日次資金繰り表を用いて、支払いの優先順位を付けていきます。会社の存続をあきらめず、資金繰りを組んでください。