銀行から新たな融資が受けられない。一方、多くの借入れがあり返済負担が大きい。このような会社は、すでにある借入れの返済を減額、もしくは猶予することを検討すべきです。融資の返済を減額・猶予することをリスケジュールと言います。では、リスケジュールを行うことのメリット・デメリットは何でしょうか。
リスケジュール(返済減額・返済猶予)を行うメリット
リスケジュールのメリットは、銀行への融資の返済が楽になり、資金繰りが改善されることです。
リスケジュールを行うと、資金繰りは改善します。例えば、事業で稼ぐ現金つまりキャッシュフローが年間で300万円、一方、毎月の返済金額が200万円、年間2400万円の返済である会社を考えてみます。
この会社は年間で、キャッシュフロー300万円-返済額2400万円=△2100万円となり、これだけの現金が1年間で減少します。この状態を放置していては、やがて資金不足に陥ってしまいます。年間2100万円の現金が減少するのであれば、それを補うために年間で2100万円の新たな融資を銀行から受けなければなりません。
しかし銀行が会社を評価してくれず、新たな融資をしてくれない場合。この会社は年間2100万円の現金が減少し、資金不足に陥ります。そこで、銀行にリスケジュールの交渉を行います。
例えば、毎月200万円の返済を、銀行でリスケジュールに応じてもらい、毎月の返済を0にしてもらえた場合。年間の返済額も当然0です。このようにリスケジュールを行えば、銀行へ返済していき現金が減っていくことはなくなりますので、資金繰りは回り出します。なお利息の支払いは別です。リスケジュールは元金の返済を減額・猶予することであり、利息はそのまま支払い続けます。
このように、リスケジュールのメリットは、銀行への返済が減額・猶予になることで資金繰りが改善されることです。
リスケジュール(返済減額・返済猶予)を行うデメリット
一方、リスケジュールのデメリットは、リスケジュールを行っている間は、その銀行から新たな融資を受けるのが難しくなるということです。それをおそれて、なかなかリスケジュールに踏み込めない経営者は多いです。
しかし考えてみてください。そもそも銀行が新たな融資をしてくれないから、その状況でこのまま既存の融資の返済を続けていけば資金不足に陥ってしまうため、リスケジュールを行うのです。リスケジュールを行うことで返済を楽にし、資金繰りを回るようにするのです。そもそも銀行が新たな融資をしてくれないのですから、リスケジュールによって新たな融資が受けられるのが難しくなるのを心配しても仕方ありません。
なぜリスケジュール中の会社は新たな融資を受けるのが難しいのか
そもそも、なぜリスケジュールを行っている会社は新たな融資を受けるのが難しいのでしょうか。
例えば、毎月返済の融資では、返済するごとに融資残高は減少していきます。融資残高が減少すれば、その分、銀行は新たな融資を出しやすいです。例えば現在の融資残高は、ある銀行で3600万円であるとします。そして返済金額は毎月100万円です。年間で1200万円返済しますので、1年後の融資残高は3600万円-1200万円=2400万円です。
融資残高の減少を見て銀行は、残高が減少した分、新たに融資をしてもよいと考えます。融資残高が3600万円から1200万円減少しているから、残高が減少した分に近い1000万円の融資を出そうと銀行は考えます。銀行が積極的に融資をしていきたい会社であれば2000万円の融資を出そうと銀行は考えるかもしれません。
一方、リスケジュールを行っている会社の場合。リスケジュールで返済猶予となったり、返済減額を大きく行ったりすれば、融資残高はなかなか減少していきません。リスケジュールを行うとその後、融資残高はなかなか減少していかないため、このような状況で新たな融資を銀行は行いにくいのです。
リスケジュール(返済減額・返済猶予)のデメリットは他にもあるのか
なお銀行でリスケジュールを行うと、二度と銀行から融資を受けられなくなると思っている経営者がいますが、そうではありません。リスケジュールした後、経営改善して利益が上がるようになれば、手元に現金が残っていきます。それが返済の元手になり、返済を再開できるようになります。そうなれば融資残高はまた減少していくので、銀行から新たな融資を受けられるようになります。リスケジュールしている間に経営改善を行って利益が多く上がるようになり、正常返済に戻せた会社は、新たな融資を受けられるようになります。
リスケジュールを行うと銀行だけでなく取引先などにもその情報が伝わってしまうのではないかと心配する経営者もいます。しかし銀行には守秘義務があり、リスケジュールの情報は漏らしません。帝国データバンクなど民間調査会社に情報を調べられて漏れるのではという心配もありますが、経営者が民間調査会社に、自社がリスケジュールを行っていることを言わなければ民間調査会社にも分かりません。経営者自ら外部に情報を漏らさなければ、リスケジュールは取引先などに分かることはありません。
リスケジュール(返済減額・返済猶予)のメリット・デメリットまとめ
リスケジュールのメリットは、銀行への融資の返済が楽になり、資金繰りが改善されることです。一方、リスケジュールのデメリットは、リスケジュールを行っている間は、その銀行から新たな融資を受けるのが難しくなるということです。しかし、そもそも銀行から新たな融資を受けられないからリスケジュールを行うのであって、新たな融資を受けるのが難しくなることを心配しても仕方ありません。
またリスケジュールを行っても経営改善して返済が正常化すれば銀行から新たな融資を再び受けられるようになります。リスケジュールした情報は、経営者が外部に漏らさないかぎり、取引先などに情報が漏れることもありません。