銀行の収益源は、企業への融資による利息収入だけではありません。他にいろいろな手段で銀行は収益を得るようにしています。ましてや金利が低くなっている現状では、利息以外の収益源を銀行は増やさなければなりません。

銀行は、融資先企業それぞれでいくらの収益を得ているか、毎月集計しています。融資審査の稟議書には、ここ3年~5年ぐらいの、毎月の収益が掲載されています。融資による利息とその他の収益とでいくらの収益を得ているのか、そして今後も収益をどれぐらい得られそうなのか。融資審査で見られることの一つです。

業績や財務内容が芳しくない会社でも、利息以外の収益を銀行が多く得られていれば、融資審査を有利にする材料となります。銀行は、たくさん稼がせてくれる会社との取引は深めたいからです。

銀行が融資以外で得られる、日常取引での4つの収益源

融資による利息以外で銀行が企業から得られる収益には何があるでしょうか。

1 手数料取引

利息以外の、銀行が企業から得る収益の一つ目は、手数料が発生する取引です。

企業が銀行へ支払う手数料には、振込手数料、手形取立手数料、外国為替手数料、インターネットバンキング手数料、貸金庫手数料などがあります。

取引が行われるごとに発生する手数料1件1件は小さい金額かもしれません。しかし取引が多くなれば、銀行が得られる手数料は大きくなります。例えば振込手数料、1件の手数料が300円だとして、振込が1カ月100件あれば3万円、年間で36万円と金額が大きくなります。

このように手数料が発生する取引を多く行ってもらうほど銀行は収益を多く得られることから、銀行は、インターネットバンキングを開設してほしい、外国為替取引を行ってほしいなど、自分の銀行でいろいろ取引を行ってほしいと言ってきます取引を増やしてもらうため、時には、振込手数料など手数料を定価より安くしてくれることもあります。

2.付帯取引

利息以外の、銀行が企業から得る収益の二つ目は、付帯取引です。

付帯取引とは、融資以外の取引のことです。公共料金など口座振替、税金や社会保険料の納付、投資信託、生命保険、損害保険などがあります。M&A仲介、融資先同士を取引先として紹介するビジネスマッチングなどで手数料をとる銀行もあります。また銀行の関係会社が販売している商品、例えばクレジットカード、経営者クラブ、リースなどもここに入ります。

それぞれ、銀行や銀行の関係会社に多くの手数料が入ります。銀行とその関係会社を含めた銀行グループとして収益を大きくしようと、いろいろなサービスを用意しています。

3.従業員との取引

利息以外の、銀行が企業から得る収益の三つ目は、従業員との取引です。

融資先企業の従業員と取引を開始し、取引を深めることで、銀行は収益を増やそうとします。まずは自分の銀行に、従業員の預金口座を作ってもらい、給与振込口座にしてもらうことから始まります。

従業員が多ければ多いほど、銀行は預金口座を多く増やせるチャンスがあります。そこで銀行は経営者に、従業員口座を作ってもらうようお願いすることがよくあります。例えば従業員が30人いて、うち20人がその銀行で預金口座を開設し給与振込口座にすれば銀行は取引を多く増やせます。

ちなみに従業員の多くは、給与振込口座としている銀行で預金量が大きくなるものです。毎月給与が振り込まれ預金量が多くなること、その口座から公共料金など口座振替したり、クレジットカードを引落したりすることが多く預金残高を多めにしておこうとすること、がその理由です。

給与振込口座とすることで預金残高が増え、1人平均100万円の預金残高があって20人の従業員であれば、合計2000万円もの預金量となります。またその口座でインターネットバンキングを開設し、振込や口座振替などを行う人が多いため各種手数料を銀行は多く得られます。住宅ローンや車のローンもその銀行で従業員が借りてくれれば、個人向け融資も増やせます。

このように、従業員との取引は銀行が収益を多く増やせるチャンスです。

4.関係会社との取引

利息以外の、銀行が企業から得る収益の四つ目は、関係会社との取引です。

融資先企業に関係会社があれば、本体の会社と同様、関係会社への融資による利息、手数料取引、付帯取引、従業員との取引による収益を得られます。

銀行が融資以外で得られる日常取引での収益源をアピールしよう

以上のように、銀行は企業からの収益を、融資だけでなくその他の取引を含め、多く得ようと努めています。そして銀行は、融資先企業それぞれからどれだけ収益を得られているかを見ています。融資による利息だけでなく、企業からいくらの収益を銀行が得られるかは、融資審査に影響する要素の一つです。

このようなことから、融資以外の取引もその銀行で行いたいと銀行に伝えることで、融資審査を少しでも有利にできるかもしれません。例えば新規の銀行に対し、融資を行うことになったらインターネットバンキングを開設し振込を月○十件行うようにする、と伝えるようにです。このように考えられるようになれば、銀行との交渉の幅は広がることでしょう。