銀行から受ける融資の金利はどのように決まるのでしょうか。銀行では、次の計算式で計算される金利が得られるのを理想としています。

金利=調達金利+融資量に対する経費の率+予想損失率+目標利益率

融資の金利の決まり方は4つの項目の積み上げ

では、融資の金利の決まり方で重要な4つの項目をそれぞれ見てみましょう。

調達金利

銀行は融資の元となる資金を、次のように調達します。

  • 預金者から預けられる預金。
  • 金融機関同士で資金を融通し合う市場から調達する資金。
  • 日本銀行から調達する資金。

いずれも調達するにあたって銀行は利息を支払わねばなりません。融資の金利が販売価格とすると、こちらは仕入れ価格のことです。市場の金利が上がると銀行は資金の調達コストが上がり、融資の方の金利も高くしなければ、銀行としては採算が合わなくなってしまいます。

融資量に対する経費の率

銀行の従業員の人件費、本部や支店の土地・建物の賃借料・水道光熱費・消耗品費など、銀行が業務を営むにあたり必要となる経費を、銀行全体の融資量で割ったものです。なお信用金庫・信用組合の融資の金利が高くなりがちなのは、全体の融資量が少なく、相対的にかかる経費が多いため経費の率が高くなる傾向にあるからです。

予想損失率

銀行は融資を行った後、融資先企業が倒産したり、返済不能となったりすると、貸し倒れとなってしまいます。融資がその後どれだけ損失の可能性があるのかが予想損失率です。例えば1000万円を1000社に貸して総融資額は100億円となり、途中の返済はなく、1年間で8社が倒産し貸し倒れとなる場合。100億円の融資に対し8000万円の損失なので損失率は8000万円÷100億円=0.8%となります。なお担保や信用保証協会による保証で保全される(返済不能となっても補てんされる)部分の融資は損失率0%となります。

融資を受ける会社によって返済不能となる確率は異なります。業績や財務内容が良い会社は返済不能となる確率は低く、逆の場合は返済不能となる確率は高くなります。銀行は、融資先企業に対して付ける債務者区分・信用格付ごとに返済不能となる確率を予測し、貸倒引当金を計上しています。

損失となる確率が高ければ予想損失率は上がり、金利を高く設定しなければ銀行としては採算が合わなくなってしまいます。そのため業績や財務内容が悪い会社に対しては銀行は金利を高く設定しようとします。

目標利益率

銀行の儲けとなる部分です。銀行は融資を行うことで利益を得られなければ、融資を行う意味がありません。融資に対しどれだけの利益を出すかを決め、それを銀行は金利に反映させようとします。

銀行は内部で融資の金利の決まり方をどのように考えているのか

銀行は、これら4つの項目、調達金利、融資量に対する経費の率、予想損失率、目標利益率を足して計算される金利を融資で設定できることを理想としています。例えば調達金利0.1%、融資量に対する経費の率0.5%、予想損失率1.0%、目標利益率0.5%であれば、0.1+0.5+1.0+0.5=2.1%以上の金利を銀行は設定したいものです。

銀行の内部では、理想とする金利を計算しやすいように、融資先企業の信用格付別、返済期間別、保全率別(保全率とは、融資先企業ごとに、融資が担保や信用保証協会の保証によって保全されている金額をその企業への融資総額で割ったもの)で、基準金利を決めています。

信用格付が悪いほど、返済期間が長いほど、保全率が低いほど、基準金利は高くなります。なお返済期間が長いほど基準金利が高いのは、遠い将来になるほど先行きが不透明で、企業が業績悪化するなどで返済不能となる確率は高くなるからです。銀行内部では基準金利をもとに、新たな融資を行うにあたり基準金利を上回る金利を設定できるよう目指します。

融資の金利の決まり方はどの融資にも当てはまるわけではない

銀行の一番の収益源は、企業に融資することで得られる利息収入です。調達金利、融資量に対する経費の率、予想損失率を上回る金利を設定できるほど、銀行は利益を多く得られます。

しかし一部の制度融資を除き、金利は企業と銀行との交渉により決まります。銀行間で競争が起きている会社に対しては、それぞれの銀行が自分のところで融資を受けてもらおうと、採算を度外視した金利を提案、設定することもあります。基準金利を綿密に適用しているわけではありません。

自分の会社の融資金利を低くしていきたいのであれば、銀行が貸したい会社になることが一番です。そのためには経営改善していき、業績や財務内容を良くしていかねばなりません。また銀行間で競争が起きるほど、金利は低くなります。多くの銀行とつきあうことによって競争が起きるようにしたいものです。