融資は、いつ申し込んだら良いか、タイミングは重要です。

一部の経営者からは「銀行は融資審査に時間がかかりすぎる」という声が聞こえてきます。経営者の中には、銀行に融資を申し込むと時間がかかるからと、ノンバンク(銀行ではない金融会社)に手を出す人もいます。ノンバンクでは融資審査を1週間程度で行ってくれるからです。しかしノンバンクに比べて銀行は、大きい金額を借りることができる、金利が低い、などのメリットがあります。企業はノンバンクではなく銀行から融資を受けることを目指すべきです。

銀行の融資審査には2週間~1カ月程度かかります。その審査期間を考え、早い時期から銀行へ融資の相談をしたいものです。

銀行への融資申し込みはいつのタイミングで行うべきか

銀行への融資の申し込みが遅い企業があります。そうであると審査が間に合わず、資金が必要な時に融資を受けることができません。

銀行への融資申し込みが遅れないようにするためにやるべきことは、将来半年~1年程度の資金繰り表を作り、将来の資金繰りを予測することです。そうすると将来、いつ資金不足となるか分かります。資金不足となれば仕入代金や外注費、給料などの支払いができなくなり事業は継続できなくなります。資金不足となるのを防ぐため、銀行から定期的に融資を受けて資金繰りを回す、これが企業での資金繰りの基本です。

融資の申し込みのタイミングは、3カ月後に資金不足となる時です。例えば資金繰り表を見ると8月に資金不足となるのであれば、その3カ月前の5月もしくはそれ以前に融資を申し込みたいです。融資申し込みのタイミングは早くても問題ありません。しかし遅くなると銀行での審査期間もあり、資金が必要な時に間に合わず手遅れとなってしまいます。

融資の希望金額は、将来半年~1年程度、新たに融資を受けなくても資金繰りが回るぐらいの金額を資金繰り表で計算し、申し込みます。希望金額どおりの金額で銀行が融資を行ってくれるかどうかは審査しだいなので分かりません。しかし銀行は申し込まれた金額を超える金額の融資を行うことはないので、希望金額は大きく伝えるべきです。

なお、より安全な資金繰りを行うのであれば、預金が一番少なくなる時期でも月商(1年間の売上高÷12カ月)の1カ月分の預金量を常に確保できるよう、銀行からの融資を活用した資金繰りを考えると良いです。それができるようになったら、次は月商3カ月分の預金を常に確保できるようになると、かなり安全な経営ができます。

銀行が嫌がる融資申し込みのタイミング

一方、銀行が嫌がる融資の申し込みのタイミングは、あと2~3週間で資金が必要となる時期です。

銀行が融資審査を行う場合、まずは担当者が、稟議書という審査のための書類を作成します。ヒマな担当者であれば稟議書の作成にすぐ取り掛かることができますが、忙しい銀行員であればすぐに取り掛かることができず、数日後になってしまうこともあります。稟議書を作成する担当者は営業係であるケースが多く、日中は事業者など営業回りを行いますので稟議書を書く時間は限られています。

稟議書を作成するにあたり、企業へ追加資料を依頼することもよくあります。追加資料を依頼して企業から提出を受けるにも時間がかかります。このようなことを行っていると、稟議書を作成完了するまでに多くの時間がかかってしまいます。稟議書が作成されたら支店内で回覧して融資審査が行われますが、担当者の上司、融資係、融資係長、副支店長、支店長など多くの職員に回覧されるため、そこでも時間がかかります。融資の金額や企業の信用格付などによっては支店内だけでなく本部まで稟議書が回覧されることもあります。そうするとさらに時間がかかります。

銀行での融資審査に時間がかかるのは、銀行内でのこのような審査の仕組みがあるからです。2~3週間後に資金が必要となるタイミングで融資を申し込まれても審査が間に合うかどうか微妙です。中には1週間後に資金が必要となるからと融資を申し込む経営者もいますが、もってのほかです。

1カ月後に資金が必要となるタイミングで融資を申し込むのであればまだ良いでしょう。しかし問題は、融資を申し込んだら必ず審査が通るとは限らないことです。ある銀行で融資審査が通らなかったら、別の銀行に融資を申し込むか、他の資金繰り手段を考えねばなりません。資金繰り表で将来の資金繰りを予測し、3カ月後に資金不足となるタイミングで融資を申し込むべきなのは、この理由からです。

こうすれば融資申し込みのタイミングは考えなくてよい

ここまで述べたことを考えると、最適な融資申し込みのタイミングを考えるのは大変、と感じる人もいるのではないでしょうか。

この場合「借りられる時にたくさん借りておく」という考え方があります。年商9000万円のある会社では、借入金は8000万円あり全て運転資金としての借入、一方で預金を7500万円保有しています。預金7500万円と言えば月商の9カ月分。これだけの預金があれば資金繰りで心配となることは当面ないことでしょう。この会社は銀行から融資の提案がある都度、借入金額を増やしてきました。

一方、借入金は少ない会社ではあっても、預金も少ない会社であれば何かあるとすぐに資金不足となってしまいます。その時に銀行から新たに借りればよいとは言っても、必ず審査が通るわけではありません。預金が少なければ資金不足に陥りやすく資金繰りが破たんしやすくなりますが、借入金額はいくら多くても、預金も多く保有していれば資金繰りは簡単には破たんしません。

最近は金利が低くなっているので、利息を気にせず大きい金額を借りやすくなっています。借入金はできるだけ少ない方がよい、という先入観はなくすべきです。