質問

印刷業の会社を経営しています。今は11期目です。

3年前に、大きなリストラと、残った従業員の賃金カット、リスケジュール(銀行への融資返済の猶予)など、会社建て直しのためのメニューを、銀行と話し合いながらひととおり行いました。以降3年間、フラフラしながら経営を継続してきました。しかし先日、従業員による売上の横領が発覚しました。約800万円です。なお弊社の今期の売上高の見込みは1億7000万円で、経常利益はトントンか少しマイナスです。

横領された800万円、重い数字です。ここ1、2年、毎月、30万円~50万円を横領されていました。残念です。弊社はまだ再建の途中です。債務超過も△4000万円あります。銀行融資のリスケジュールは半年前に解除し毎月の返済額を元に戻しましたが、正直、厳しい経営環境が続いています。

さて、悩んでいるのが横領された800万円の処理方法です。銀行からの借入残高が1億3000万円あります。従業員による横領の件を正直に銀行に報告しようと思いますが、800万円を資産計上するのか、特別損失で計上するのか、悩んでいます。なお、横領をした従業員はクビにする予定です。しかし、クビにすれば回収の見込みは立たなくなります。また刑事告訴もしようと思います。

銀行が一番納得をするのは、どの様な方法か教えてください。

今後の資金繰りの対応は、銀行に対し年間で約3000万円返済し、一方で毎期の期初に銀行から2000万円新規の借入をして、現在の銀行からの借入残高を10年で減らす予定です。

今までこんな雑な資金管理・計数管理をしていたと銀行から判断され、メイン銀行に見捨てられてしまえば、経営再建は断念をせざるをえません。何か最善の方法があればご指導をお願いします。

(N様)

回答

従業員による横領。貴社にとって、重い事態であろうと想像します。しかし、ここから立ち直っていかねばなりません。

債務超過が△4000万円あるとのことですね。その中で銀行融資のリスケジュールを解除し正常返済に戻したということは、銀行に対し年間3000万円の返済を行う中、一方で毎年2000万円の新規融資を銀行から受けられることを銀行と話し合った中での解除だったのではないでしょうか。ここは正直に、従業員による800万円の横領のことを銀行に打ち明けるべきです。その上で、再発防止のためにどのような対策をとり、そして内部体制を構築するのか。十分な説明をしたうえで銀行を納得させたいです。

なお横領された800万円の仕訳方法は、次のとおりです。実際には顧問税理士の指導を受けてください。

(借方)横領損失800万円/(貸方)売上高800万円

(借方)未収入金800万円/(貸方)損害賠償金収入800万円

このように損失と収益を同時に計上します。なお横領従業員への未収入金の回収が不能となった場合には、貸倒損失基準により、損失を計上することになります。なお横領従業員からの回収が可能(資力がある)であるにもかかわらず、回収を会社が放棄した場合には、横領従業員に対しての給料(解雇された後は寄付金)として処理されます。そして損金不算入規定や源泉徴収の適用がされます。会社にとっては重い負担です。

この仕訳を行った後の決算書では、貸借対照表に横領従業員への未収入金が、損益計算書に横領損失・損害賠償金収入が計上されます。文書にするなどして銀行に十分に説明し、理解してもらってください。

起こってしまったことは仕方ありません。それよりも、横領の今後の再発防止のため、どう対策をとるか、どう内部体制を構築するかを決め、銀行に説明し理解してもらう。それが、今後の銀行との関係を維持するにあたって重要です。