人材派遣会社は融資の資金使途を銀行に説明しやすい

人材派遣会社は、売上が大きくなればなるほど、売掛金がふくらんでいきます。一方で売上原価である派遣社員への給与は売掛金より先払いであることが多いです。そのため人材派遣会社は、運転資金の融資が必要となる業種と言えます。
例えば、ある人材派遣会社の、月の売上高1,000万円、派遣社員への給与700万円とします。売掛金の回収が翌月末日、給与支払いが翌月15日であれば、翌月15日に700万円出金、その後、翌月末日に1,000万円入金になります。翌月15日から末日までに700万円足りなくなります。それが毎月続きます。この人材派遣会社は、銀行から運転資金として700万円の融資を受けたいです。
また、人材派遣会社の売上が伸びていけば、先に支払わなければならない給与が多くなります。その場合、もっと多くの運転資金の融資を銀行から受ける必要があります。以上のことを銀行に説明すれば、資金使途が明確であり、人材派遣会社は融資を受けやすいです。

人材派遣会社の売上が縮小してきたら銀行から融資を受けられるか

一方、人材派遣会社の売上が縮小してきた場合。拡大している場合とは資金が逆の回転になるため、資金繰りは楽になる理屈です。しかし多くの人材派遣会社は、売上が縮小してきても資金繰りは楽になりません。なぜなら、売上が少なくなるということは粗利益(売上高-派遣社員給与)も少なくなるため、固定費を圧迫して赤字となることが多いからです。それまで売上が上がるにつれて人件費(派遣社員を除く、営業社員や事務社員など)や家賃など固定費を増やしてギリギリの利益しか出ていなかった人材派遣会社であれば、売上が縮小し始めたとたん、固定費が重荷になり、赤字に転落します。
人材派遣会社が、売上が縮小し始めた場合は、早急に営業を強化し、派遣社員の採用も増やし、売上を回復させねばなりません。しかし売上を上げることが難しいのであれば、以下の取組を早急に行う必要があります。

  • 派遣1名ごとの利益計算と派遣単価・給与の見直し。
    派遣単価を低く設定してしまい、一方で派遣社員に対しての給与・社会保険料・交通費が多くなれば、派遣による利益が出なくなります。最悪、赤字になるかもしれません。1人ごとの派遣料と、給与・社会保険料・交通費とを月ごとに算出することにより利益を計算し、派遣単価や給与の見直しをします。
  • 派遣社員の待機時間(派遣先に行かない時間)の縮小。
  • 求人サイトなど広告宣伝費の費用対効果の検討と広告の見直し。
  • 営業社員・事務社員の人件費の見直し。
  • オフィス家賃の見直し。

赤字である人材派遣会社に、銀行は融資を出すのは難しくなります。それでも黒字化までの資金が必要であれば、上記の黒字化対策をふまえた上で経営計画書を書き、銀行に融資の交渉をしなければなりません。
なお経営計画書を用いても銀行から融資を受けられなければ、社会保険料や税金の支払いを止めて、資金を作ることを考えます。人材派遣会社であれば社会保険料は大きくなるのが通常であり、社会保険料を支払わないことは資金繰り改善に寄与しやすいです。ただし社会保険料と税金の支払いは義務であるため、早急に黒字化し、社会保険料は年金事務所、税金は税務署や市役所などと分割支払い交渉をします。

労働者派遣事業許可の取得に必要な資産要件

これから人材派遣会社を設立する場合。下記の要件が必要です。
1.資産の総額(繰延資産、営業権を除く)から負債の総額を引いた「基準資産額」が2000万円以上であること。
(複数の事業所で事業を行う場合は基準資産額が2000万円×その事業所数以上であること。)
2.1の基準資産額が、負債の総額の7分の1以上であること。
3.現金・預金が1500万円以上であること。
(複数の事業所で労働者派遣事業を行う場合は、現金・預金が1500万円×その事業所数以上であること。)

1の基準資産額は、資本金と同じと考えてよいですが、これが2000万円あれば、余分なものを始めから買わないかぎり、預金も1500万円以上となることでしょう。2000万円が手元にない場合、かき集めるしかないです。次の方法が考えられます。

  • 親や親族・知人から個人で借りて会社に資本金として入れる。もしくは直接、会社に出資してもらう。
  • 前職の退職前でサラリーマンとしての信用があるうちに、個人でカードローンを多く作っておく。
  • 生命保険に入っているのであれば生命保険会社から借りられないか調べて借りる。