中小企業の経営者であるあなたが、銀行から融資を受けたい場合。銀行に融資を申し込んで審査してもらわなければなりません。そこで気になるのが、銀行は何を見て審査するのかです。銀行が融資審査で重要とするポイントは何でしょうか。
以下が、銀行が融資審査で特に重要とする3つのポイントです。
- 何に使うのか。
- どのように返済するのか。
- 返済できなくなった場合への備えはどうするのか。
銀行が融資審査で重要とするポイント1.何に使うのか
融資で出た資金を何に使うのか。これを「資金使途」と言います。なぜ資金使途が、融資審査で重要ポイントとされるのでしょうか。
例えば、企業から2,000万円を借りたいと言われ融資し、それを社長の趣味で、個人で乗る高級車に使われてしまった場合を想像してください。その融資は会社の経営に役に立つために使われたことにはなりません。会社経営のために使われなければ、融資した資金が利益になって返済される可能性は少なくなります。結果、融資した資金は最後まで返済されない可能性が高くなり、貸倒れとなると、銀行は大きな損失を出してしまいます。
融資で出た資金は、社長の思い付きで何でも使ってよいわけではなく、会社の経営のために使われなければなりません。そして会社経営に使われた結果、利益が生まれ、その利益から融資の返済がされなければなりません。
資金使途は、大きく運転資金と設備資金とに分かれます。運転資金とは、経営に必要な資金のことです。土地・建物や機械・車両など、設備に使われるものを設備資金、それ以外の仕入や外注費の支払い、給与や諸経費支払いなどに使われるものを運転資金と言います。
運転資金でも設備資金でも、資金が必要となる根拠を銀行に説明する必要があります。
運転資金の説明では、例えば、資金繰り予定表を作成し銀行に示した上で、3カ月後に資金が不足するから融資を受けたい、というように説明します。
設備資金では、設備が必要な理由と、設備投資により企業にどのような効果がもたらされるか、を説明します。また設備の見積書を銀行に見せる必要があります。
企業が資金使途を銀行に説明し、銀行が、その資金使途が会社経営の役に立つと納得し、金額も妥当であると銀行が判断すれば、融資審査の重要ポイントの一つ、資金使途はクリアします。
架空の資金使途であれば、運転資金として出した融資が関係会社や経営者に流れてしまったり、設備資金として出した融資が運転資金として使われてしまったりするなど、問題がおきます。銀行が把握していない資金の使い方をされてしまえば、その後、返済されなくなる可能性が高く、銀行は損失を出してしまいます。銀行は、企業が架空の資金使途を言っていないか、企業が言うことのつじつまは合っているか、も調べます。
銀行が融資審査で重要とするポイント2.どのように返済するのか
銀行が融資審査で最も重要ポイントとするのは、融資した資金が完済するまで返済されるのかどうかです。
融資で出したお金が返済されなかったら、銀行は大きな損失を出してしまいます。そのため銀行は、融資を受けた企業がどのように返済するのかを審査での重要ポイントとしています。
1年を超える期間で返済していく長期運転資金や、設備資金など、定期的(通常は毎月)に分割返済していく融資の場合。企業が事業を行うことで稼ぎ出すキャッシュフロー(簡易的には当期純利益+減価償却費で計算されます)を元手に返済するのが最も理想的な形です。しかし中小企業で、融資の返済を問題なくできるほどキャッシュフローを稼いでいる企業はなかなかありません。多くの中小企業では、キャッシュフローは返済金額を下回っている状態です。そのような状態の企業が銀行へ返済を続けると、現金預金は減少していきます。
そのような企業は、時々、銀行から新たな融資を受けることで減少した現金預金を補てんする必要があります。しかし、どこの銀行もその企業に対し融資を行わないと、現金預金の減少によりいずれ返済が行き詰ってしまいます。他の銀行もその企業に対し融資を積極的に行おうとしているかどうか、他の銀行から見ても問題なく融資できるような財務状態か。これも、企業がどのように返済するのかを見るための、融資審査の重要なポイントです。
どのように返済するのか、もう一つ例を挙げます。例えば建設業の一つの工事において、先に材料費や外注費の支払いがあり後に売上代金の入金がある場合。材料費や外注費の支払時に融資し、売上代金の入金時に一括返済するという方法がとられることがあります。この場合、売上代金の入金が、返済の元手となります。このケースでは、いついくらの入金があるかの証拠として、工事の契約書や発注書などを見られます。このような場合でも、どのように返済するのかがクリアになります。融資を受けたい企業は、返済ができる根拠を銀行に示す必要があります。
銀行が融資審査で重要とするポイント3.返済ができなくなった場合への備えはどうするのか
上記のように、資金使途や、どのようにして返済するのかが明確となっても、業績が悪化した場合など、資金繰りが悪化し返済できなくなる場合への備えを、銀行は行っておきたいものです。利益が少ない企業や、財務状況が良くない企業であればなおさらです。
業績が悪化した場合でも持ちこたえられるほど財務状況が良い会社や、そもそも将来、業績の悪化が考えづらい会社なら、備えがなくても銀行は融資しやすいです。そうでない会社に対し銀行は、返済ができなくなった場合への備えをどうするか、考えます。
その備えには、信用保証協会による保証や、不動産などの担保があります。そのような備えができるかどうかも、銀行の融資審査における重要ポイントの一つです。
銀行が融資審査で重要とする3つのポイントを意識しておこう
以上が、銀行が融資審査で重要とする3つのポイントです。何に使うのか。どのように返済するのか。この2つは、どの企業でも重要ポイントとなります。利益が少なかったり財務状況が良くなかったりする企業は、返済できなくなった場合への備えはどうするのかも、融資審査の重要ポイントとなります。
以上の3つの重要ポイントを銀行に説明、納得させることができる企業は、銀行から融資を受けやすくなります。