質問

2018年1月にメインバンクのA信用金庫に「いつもの一括返済の融資ではなく長期返済の融資を受けられないか」と聞いたところ「では現在の融資(2年前に借りた不動産購入資金2230万円・返済期間10年)を借り換えましょう」と、長期資金で融資を受けることができました。なお、それまではいつも、弊社の取引先との契約書を証拠書類として300万円程度を3カ月一括返済で融資を受けていました。信用保証協会保証付融資・プロパー融資(信用保証協会保証付でない融資)、両方ありました。

このようにA信用金庫との関係は順調だったのですが、2018年8月に税務署から「消費税と法人税の滞納が180万円ある」と差し押さえの予告を受け、分割で支払いたいから相談したいことを電話で伝え、9月税務署に訪問予定でした。しかし税務署への訪問を失念してしまいました。

そうしたところ10月6日にA信用金庫から「税務署から差し押さえが来ましたよ」と連絡があり、不動産を差し押さえられたことが分かりました。すぐに税理士に相談し10月10日に全額納付し、差し押さえ解除となりました。なお金融機関への融資返済は遅れたことはほとんどありません、1日遅れがあったかなかったか程度です。

このような経緯があった中、2018年12月、A信用金庫に新たな融資を打診したところ「融資の受付すらできない。いつまで融資できないかも答えられない。」と回答が来ました。 2018年初めに新規のB銀行(地方銀行)から「A信用金庫の分を全部うちで借り換えしてくれ」と提案があったことを当時A信用金庫に伝え、ただA信用金庫に融資の金利引下げなど要求することもなく、それまで通りの条件でA信用金庫と融資取引を続けていたのですが。

A信用金庫で、10月に差し押さえがあったことを理由に新たな融資を断られたことをB銀行に伝え、借り換えで融資を受けられるか問い合わせています。

このように差し押さえがあった場合、全額一括返済を要求されなかっただけ助かったのでしょうか。今後一切、A信用金庫や、他の金融機関、信用保証協会は新たな融資をしてくれないのでしょうか。

(M様)

回答

まず、A信用金庫と交わしている信用金庫取引約定書(銀行では銀行取引約定書)を見てください。その中に、次のような条項があることでしょう。

甲(融資を受けている企業)について次の各号の事由が一つでも生じた場合には、乙(金融機関)からの請求によって、甲は乙に対するいっさいの債務について期限の利益を失い、直ちに債務を弁済するものとします。

1.担保の目的物について差し押さえまたは競売手続きの開始があったとき。

「期限の利益」とは、融資を受けた後、毎月○日など決められた返済日に、決められた返済額を返済していけば、一括返済を金融機関から求められることはない、という企業側の利益のことです。「期限の利益を失う」とは、融資の残高を一括で返済するように、ということです。

期限の利益の喪失には、「当然に」喪失する事由と、「金融機関の請求により」喪失する事由とが信用金庫取引約定書(銀行取引約定書)に定められています。上記条項を見て分かるように、担保である不動産への差し押さえは「金融機関の請求により」喪失する事由となります。

このように、A信用金庫がやろうと思えば、あなたの会社に出している融資の「期限の利益を喪失」し、一括で返済するようA信用金庫は要求できました。ただA信用金庫は、それは行いませんでした。ちなみに「担保の不動産」への差し押さえではなく、「会社や連帯保証人の預金への差し押さえ」の場合は、期限の利益を「当然に」喪失する事由となります。

次に、今後の融資について。差し押さえは金融機関にとって、企業の評価や印象がとても悪くなるものです。なお融資先企業が差し押さえられた事実を知った金融機関は、もしその金融機関で信用保証協会保証付融資も出していたら、信用保証協会に報告しなければなりません。

不動産への差し押さえがすぐに解除となったと言っても、銀行や信用保証協会への信用は失ってしまった状態です。このような状態で、すぐに融資が受けられるようにはなりません。今後一切、融資が受けられなくなるわけではないですが、最低6カ月~1年は時間を置かなければならないでしょう。金融機関や信用保証協会への信用を回復していくためには、まずは書面にて、差し押さえの経緯を説明し、また経営改善計画書を作成して銀行に説明した方がよいです。

なお新規のB銀行でプロパー融資を受けようとする場合、あなたがB銀行に差し押さえの事実を言わなければ、B銀行には分かりません。その場合、B銀行は融資をしてくれる可能性はあります。ただ、金融機関は、融資を行おうとする企業が所有する不動産登記簿をとって、担保に入れないまでも不動産を調べることは多いです。それで差し押さえの事実を知られてしまう可能性は高いです。

一度差し押さえをされたからといって、永遠に金融機関からの融資や、信用保証協会での保証が受けられないわけではありません。しかし金融機関や信用保証協会への信用回復には時間が必要です。