財務内容や業績が悪いなど、銀行から新たな融資を受けられない会社が、一方で銀行から多くの借入れがあり、返済負担が大きい場合。このまま返済を続けていけば手元の現金が減っていき、やがて資金不足となってしまいます。このような会社は、すでにある融資の返済を減額・猶予する交渉を銀行と行うべきです。融資の返済を減額・猶予することをリスケジュールと言います。

例えば、事業で稼ぐ現金、つまりキャッシュフローが年間100万円の会社を考えてみます。この会社が銀行から融資を何本も受けていて、合計して毎月返済額が150万円、年間返済額が1800万円であるとします。

この会社は年間で、キャッシュフロー100万円-返済額1800万円=△1700万円、現金が減少します。新たな融資を受けられない中で返済を続けると、現金は減っていきやがて資金不足になります。それを避けるため銀行とリスケジュール交渉を行います。

毎月150万円の返済を、銀行とリスケジュール交渉して毎月の返済を0にできた場合、返済による現金の減少は止まりますので、将来資金不足になることを防げます。

しかしリスケジュールによる返済の減額・猶予は、いつまで可能なのでしょうか。

リスケジュールの期限はいつまで可能なのか

リスケジュールを行う場合、銀行は、その期限を6カ月や1年後に設定することが通常です。

リスケジュールは、毎月分割返済の融資の返済額を減額・猶予したり、一括返済の融資の返済期限を延ばしたりするなど、返済条件の変更を銀行の同意の上で行うことです。リスケジュールを銀行が承諾したら、銀行と企業との間で借入金変更契約書が結ばれます。借入金変更契約書には、返済条件はどのように変更するか、そして返済減額や返済猶予の期限はいつまでか、記載されます。そこでは、リスケジュールの期限を6カ月後や1年後に設定されます。ここで経営者が心配するのが、6カ月後や1年後、返済を再開しなければならないのか、ということです。

例えば、今まで毎月150万円を銀行に返済していたが、リスケジュールにより毎月の返済額を0にして利息のみ支払うことになり、またリスケジュールの期限が6カ月後に設定されたとします。6カ月後、毎月の返済額を月150万円に戻さなければならないか、心配になる経営者は多いです。

しかし、大丈夫です。そもそもリスケジュールの期限が来て、返済を元通りの金額で再開できる会社は、急激に経営改善を行い利益を向上できた会社でないかぎり、なかなかありません。借入金変更契約書により定められたリスケジュール期限は、次のリスケジュール交渉にあたっての区切り、と考えてください。リスケジュール期限の1~2カ月前より、期限後の返済はどうするのか、銀行に相談することが可能です。リスケジュールの期限後もリスケジュールを続ける必要がある企業は、決算書や試算表、資金繰り表、経営改善計画の進捗状況を銀行に見せながら交渉することで、リスケジュールを続けることができます。筆者は30年前からリスケジュールを続けている企業を見たことがあります。

なおリスケジュールは企業が銀行に依頼することなので、リスケジュールの期限後もリスケジュールを続けてほしいという相談は企業から行うべきです。親切な銀行であればリスケジュール期限の前から経営者に、期限後の返済はどうするか聞いてくれるものです。しかしそうでない銀行もあります。

リスケジュールを行うと返済金額の変更後の返済予定表が送られてきますが、それを見ると、例えばリスケジュール期限を6カ月後と決められたら、6カ月間は毎月の返済額は減額・猶予され、6カ月後は元通りの返済額になっていることが分かります。つまり、企業側が何もしなければ、6カ月後、自動的に返済額は元通りとなるのです。リスケジュールの期限が過ぎた後、預金口座に預金残高があれば、元の返済額が引き落とされても銀行に文句言えません。

なぜリスケジュールの期限は6カ月や1年と決められるのか

なぜリスケジュールの期限は6カ月や1年で決められるのでしょうか。

リスケジュール期限を5年や10年と長くした場合を考えてみてください。銀行はその間、企業が利益を出せるようになっても、借入金変更契約書で決められたリスケジュール期限までは企業に対し返済額を増額してもらうことはできません。一方で企業側は、5年後や10年後まで返済額が減額・猶予されるから今すぐ経営改善しなくてもよい、と甘く考えてしまうかもしれません。

このような理由から銀行は、リスケジュールの期限を6カ月や1年と短く区切るのです。そしてリスケジュールの期限が来るごとに、決算書や試算表で利益の改善状況を確認した上で銀行は企業と話し合い、その後の返済をどうするかを決めます。赤字が続いてしまっている企業では毎月の返済額は0のまま、一方で経営改善が進み利益が上がってきている企業では正常時の毎月返済額の20%の金額で返済再開、というように利益状況を見ながら話し合います。

なお、リスケジュールを行うと銀行は、企業が経営改善することで早く返済を再開できるようになることを期待します。リスケジュールの期限が来ても銀行にお願いすればリスケジュールを継続できるからと経営改善しようとせず、返済が減額・猶予されたままの企業の場合。リスケジュール期限が来てもリスケジュールをを繰り返すと、銀行から早く経営改善して返済額を増やしていけるよう、プレッシャーをかけられるものです。リスケジュールは永遠の返済減額・猶予ではなく、あくまで一時的なものです。一気に返済額を元通りにするのは難しくても、早く経営改善し利益を上げていくことで、返済額を元通りの状態に少しずつ近づけていかねばなりません。