融資審査のポイントで、これが問題だったら金融機関が融資審査する以前に、そもそも融資を受けられないポイントがあります。それが、企業と代表者・役員・株主の背景です。背景とは何なのか、企業の背景と代表者・役員・株主の背景、それぞれ見てみます。
企業の背景が問題であれば銀行から融資は受けられない
企業の背景とは、金融機関が融資を出せる業種か、企業が反社会的勢力に関わっていないか、社会的に問題を起こしている会社ではないか、過去に受けた融資で貸し倒れを起こしていないかなどです。
業種が問題であれば銀行から融資は受けられない
自社の業種が、金融機関ごとに決められている融資を出さない業種であれば融資は受けられません。例えば信用保証協会は、農業・林業・漁業、性風俗関連業、金融業、学校法人、宗教法人、非営利団体(NPO法人を除く)、LLP(有限責任事業組合)は信用保証の対象とならないとしています。これらの中で性風俗関連業と金融業に対し、融資を出さないと決めている銀行も多いです。
また融資を受けられないと決められている業種が、企業の中で一番売上の多い事業ではなく、二番目以下の事業であっても、融資対象外の業種である会社として融資を受けられないこともあります。例えば貸金業は金融業の一種ですが、貸金業を事業の中の一つとして営んでいる場合、貸金業が一番売上の多い事業でなくても、融資が受けられないことがあります。貸金業が商業登記簿の事業目的の一つとして記載されているだけで実際に貸金業を営んでいなくても、金融機関から気にされて融資が受けられないこともあります。
銀行から融資を受けるには、自社の業種が銀行から融資の対象外として見られるかどうか、商業登記簿に記載されている事業目的で金融機関から目を付けられるところがないか、気を付けなければなりません。
反社会的勢力であれば銀行から融資は受けられない
反社会的勢力である会社も融資は受けられません。反社会的勢力とは暴力団、暴力団関係企業、総会屋などのことですが、会社が反社会的勢力であれば融資は出ないのは当然として、反社会的勢力と関わりがあると疑われるのもいけません。自社の取引先が反社会的勢力であっても、自社が反社会的勢力と関わりのある企業と見られることもあります。反社会的勢力に関われば銀行から融資を受けられなくなりますので、注意しなければなりません。
社会的に問題を起こしていれば銀行から融資は受けられない
社会的に問題を起こしている会社も融資を受けるのが難しくなります。例えば違法であるビジネスを行っていたり、公害や労働問題があり社会に大きな問題を起こしていたりすれば、銀行から融資を受けるのが難しくなります。銀行は細かく情報収集しています。
過去に貸し倒れを起こしていれば銀行から融資は受けられない
会社が過去に受けた融資を金融機関に返済できず貸し倒れを起こしていれば、貸し倒れを起こした金融機関から新たな融資を受けるのが難しくなります。
これらのような、企業の背景に問題があれば、いくら決算書の内容などが良くても、融資を受けるのが難しくなります。
代表者・役員・株主の背景が問題であれば銀行から融資は受けられない
代表者・役員・株主(以下、代表者等とします)の背景とは、代表者等が過去に経営していた会社が金融機関に貸し倒れを起こしていないか、代表者等は反社会的勢力に関わっていないか、代表者等は過去に犯罪を起こしていないか、表の代表者とは別に裏に真の経営者がいないか、裏に真の経営者がいればその事情は何か、などです。
代表者等が別の会社で貸し倒れを起こしていれば銀行から融資は受けられない
代表者等が過去に別の会社を経営していて、その会社で信用保証協会保証付融資を返済できず代位弁済(企業が返済できなくなった融資を信用保証協会が代わりに銀行に返済すること)していれば新しく立ち上げた会社では信用保証協会保証付融資を受けることは困難です。プロパー融資(信用保証協会保証付でない融資)で貸し倒れを起こしていれば、新しく立ち上げた会社でも、貸し倒れを起こした銀行から融資を受けることは困難です。
代表者等が反社会的勢力であれば銀行から融資は受けられない
代表者等が反社会的勢力であったり、反社会的勢力に関わっていたりすれば、その会社は融資は受けられません。代表者等の過去の犯罪歴を金融機関に知られてしまっても同様です。
表の代表者とは別に真の経営者がいれば銀行から融資は受けられない
配偶者や知人に表の代表者になってもらい、真の経営者が別にいる会社もあります。代表者が実際にその会社を経営しているかどうか、金融機関は代表者へのインタビューで見抜きます。例えば表の代表者が、会社の事業内容を詳しく答えられなければ、その代表者は真の経営者なのかどうか疑われます。
真の経営者が裏にいるのなら、なぜ真の経営者が代表者になっていないのか金融機関は探ります。事情によっては金融機関が納得してくれる場合もあります。例えば真の経営者は別の会社で勤務していて、その会社との関係から代表者になれない場合などです。
一方、真の経営者が過去に経営していた会社で金融機関に貸し倒れを出したことを隠すため、新しい会社では代表者を別に立てて真の経営者の存在を分からないようにしたことを金融機関が知った場合。新しい会社で融資を受けることは難しくなります。
このように代表者等の背景に問題があれば、会社の決算書の内容が良かったとしても、その会社は融資を受けるのが難しくなります。
銀行から融資を受けられない事態を防ぐためのチェックポイント
以上のように、企業の背景や代表者等の背景に問題があれば、決算書の内容が良いなど他の要素に問題がなくても、融資を受けるのが難しくなります。融資をスムーズに受けるには、金融機関から疑念を抱かれてしまうことを見つけ、なくしておくことが重要です。次のチェックポイントで確認してください。
- 業種は金融機関が融資の対象外とする業種ではないか。特に性風俗関連業、金融業は注意。
- 商業登記簿に記載の事業目的の中に、融資の対象外業種の記載がないか。
- 反社会的勢力に、会社でも代表者等個人でも関わらない。取引を行うのもだめ。
- 会社の代表者は、その会社を真に経営する人がなる。
- 違法のビジネス、労働問題、公害など、社会に問題を起こさない。もし起きてしまったなら、経緯と今後の対策について書面で金融機関に説明する。
- 代表者等は犯罪を起こさない。
- 許認可が必要な業種であれば許認可を取得する。
- 本社事務所を所有していれば事務所の不動産登記簿、本社事務所が賃貸であれば賃貸契約書を金融機関に見られることがある。実態との相違があれば直す。例えば賃貸の場合、賃貸契約書がなければ整備する。賃貸契約書で自社が賃借人となっていなければ賃貸人と交渉し修正する。