新たに法人を設立しようとする時の法人の種類について、現在多いのは株式会社や合同会社ですが、行う事業の内容によっては一般社団法人や社会福祉法人などを選択する経営者もいます。しかし株式会社や合同会社以外で法人を設立すると、その後の金融機関からの融資に大きく支障が出ることが多いので、気を付けたいです。

一般社団法人は信用保証協会と日本政策金融公庫の融資は受けられるのか

一般社団法人・一般財団法人・社会福祉法人は医業をのぞき信用保証協会の保証を受けられません。学校法人・宗教法人は信用保証協会の保証を受けられません。

これらは非営利法人で、利益を上げることを主の目的としていない法人と見られるからです。融資の返済財源は利益から生み出される現金ですが、非営利法人は利益を上げることを目的としていないため、融資を行っても返済を期待できないと金融機関から見られてしまいます。そのためこれらの法人は一部業種を除き信用保証協会の保証を受けられません。

なお特定非営利活動法人(NPO)・医療法人は信用保証協会の保証を受けられます。

日本政策金融公庫や民間の銀行では、これらの法人だからと言って融資の申し込みを受けてくれないわけではないです。ただし株式会社や合同会社と違い、利益を上げることを主の目的としないことが、融資審査にマイナスの影響をもたらすことが多いです。

また有限責任事業組合(LLP)も信用保証協会の保証を受けられません。日本政策金融公庫や民間の銀行では融資の申し込みは受けてくれるものの審査は厳しくなります。

 

法人の種類別 利用可能機関(○は利用可・×は利用不可・空白は未調査)
信用保証協会 日本政策金融公庫
一般社団法人 ×(医業のみ対象)
一般財団法人 ×(医業のみ対象)
社会福祉法人 ×(医業のみ対象)
特定非営利活動法人(NPO)
医療法人
学校法人 ×
宗教法人 ×
有限責任事業組合(LLP) ×

一般社団法人は信用保証協会の保証を受けられず、今後の会社成長の足かせに

信用保証協会の保証を受けられないことは、中小企業が成長していくために融資を増やしていく必要がある場合、大きな足かせとなってしまいます。

銀行のプロパー融資(信用保証協会の保証が付かない融資)は、融資を受けた会社が返済できず貸し倒れとなった場合、銀行が100%、損失を負担します。一方、銀行の融資に信用保証協会の保証を付ければ、返済できなくなった場合、信用保証協会が80%(制度によっては100%)、会社の代わりに銀行に返済します。そのため、銀行は信用保証協会の保証を付けたら保証を付けないプロパー融資の場合より審査を通しやすいです。また信用保証協会は中小企業が銀行から融資を受けやすいように保証することを目的とした公的機関なので、保証の審査は銀行のプロパー融資ほど厳しくないです。

つまり、プロパー融資より信用保証協会保証付融資の方が、審査が通りやすく融資が出やすいです。また、日本政策金融公庫は民間の金融機関の補完の立場であるため、ある会社に対し、銀行の融資総額より日本政策金融公庫の融資総額は少なくなるのが普通です。以上から、融資残高を増やしていき会社を成長させていくには、信用保証協会保証付で融資を受けられないのは、大きな足かせになってしまいます。

ある会社は、経営者が法人を設立しようとする時、なんとなく「株式会社」より「一般社団法人」の方が世間的に信用が高そうという理由で、一般社団法人を設立しました。開業して5年経ち、年商は1億円に届きそうになっていますが、融資をなかなか受けられないのが悩みとなっています。一般社団法人であるため信用保証協会から保証してもらえず、また銀行からプロパー融資を受けられるほどの財務内容でもないため、日本政策金融公庫から500万円の融資を受けているのみです。会社を成長させていくために経営者はもっと融資を増やしていきたいところ、増やせずに困っています。

このように、法人の種類をどうするか当初の選択一つで、その後に融資を受ける道を大きく狭めてしまいます。融資を継続的に受けていきたいのであったら、素直に「株式会社」で会社を立ち上げるべきです。