返済財源とは、融資を返済する元手は何か、です。融資の資金使途によって返済財源は異なり、何で返していくかは融資審査で回覧される稟議書に書かれ、返済財源の確保は可能なのか、審査に影響してきます。

返済財源は4パターンに分かれます。

  1. 事業で利益を上げることで生まれるキャッシュフローが返済財源
  2. 後日にまとまって予定されている入金を返済財源
  3. 短期間で見込まれている入金を返済財源
  4. 返済財源はなし(事業が続く以上は常に資金需要が発生し続ける)
返済財源 資金使途 返済方法例
事業で利益を上げることで生まれるキャッシュフロー 設備資金

長期運転資金

長期での定期的(毎月・3カ月ごとなど)な分割返済
後日にまとまって予定されている入金 つなぎ資金

 

入金タイミングでの一括返済もしくは分割返済
短期間で見込まれている入金 季節資金

賞与資金

納税資金

短期での定期的(毎月など)な分割返済
返済財源はなし 経常運転資金 返済なし(6カ月や1年で期日を区切りいったん全額返済し数日後融資することも多い)

それぞれ見ていきます。

銀行融資の返済財源1.事業で利益を上げることで生まれるキャッシュフローが返済財源

融資の返済の財源を、事業活動により得られる利益から生み出される現金(キャッシュフロー)とした考え方です。銀行ではキャッシュフローを、簡易的に計算式「当期純利益+減価償却費」で計算します。

例えば前期決算で、当期純利益1000万円、減価償却費800万円であった場合、キャッシュフローは1800万円となります。既存融資(返済期間1年を超える長期融資)と新規融資の年間返済額を足して年間1800万円以内の返済となれば、返済能力があるとみなされ融資を受けやすくなります。

キャッシュフローを返済財源とする融資の資金使途は、設備資金、長期運転資金(1年を超える返済期間の運転資金)です。返済期間は1年を超えて設定され、返済方法は毎月など定期的な分割返済が設定されます。

年間返済額がキャッシュフローを上回ってしまうのであれば、理論上は融資を行っても返済が難しい会社であると銀行は見てきます。この場合、企業は、経営計画書を作成し、将来、利益が上がっていく計画を銀行に示したいです。

銀行融資の返済財源2.後日にまとまって予定されている入金を返済財源

売上代金などのまとまった入金予定があるが、先行して材料費や外注費などの支払いが発生する場合。入金予定日を返済日として、融資が行われます。このような融資の資金使途をつなぎ資金と呼びます。返済日は入金予定日に合わせて設定され、1回で全額返済の場合もあれば2回以上の場合もあります。

例えば建設業が、1000万円の工事を受注し、6月30日に400万円、8月31日に600万円の入金予定である場合。先行して材料費300万円、外注費400万円の支払いが3月31日以降発生するのであれば、3月31日に700万円の融資を行い、6月30日に300万円返済、8月31日に400万円返済の条件で融資を受けます。

銀行融資の返済財源3.短期間で見込まれている入金を返済財源

衣類の製造業が、6~9月の時期にかけて冬の衣類を製造、在庫として増やし、10月以降に一気に販売し、11月~1月にかけて回収していく場合。6~9月は資金が必要となり、11月~1月で回収していきます。資金が必要となる時期に融資を受け、資金を回収できる時期に返済していけば資金繰りはなだらかになります。そのような融資の資金使途を季節資金と言います。

この場合、入金日や入金金額は確定していず見込みでしかないですが、確度の高い見込みであり、これを返済財源として銀行は融資を行います。

賞与支払いのための賞与資金、法人税等の納税のための納税資金の融資では、本来なら賞与や納税時期までに会社で資金を貯め、支払う流れであるところ、貯めることをせず融資を受けた資金で支払います。本来なら賞与や納税の時期まで資金を貯められるところ、それを返済財源と考えます。

例えば6月に500万円、12月に500万円の賞与を従業員に支払う場合。融資を受けないのであれば1月~6月に500万円の資金を会社に貯め、それを元手に6月に賞与を支払う流れです。7月~12月も同様です。それを貯めずに6月に銀行から500万円の融資を受けて賞与を支払うと、7~12月で500万円貯めるものを、6月の融資の返済財源とする、と考えてください。法人税等の納税資金も、中間納付も含め6カ月に1回支払うサイクルで同様に考えます。このような賞与資金・納税資金も、短期間での入金見込みを返済財源と考えたものです。

銀行融資の返済財源4.返済財源はなし(事業が続く以上は常に資金需要が発生し続ける)

経常運転資金とは、計算式「売掛金+受取手形+在庫-買掛金-支払手形」で計算される金額を、事業が続くかぎり、企業が現金化できず立て替えている金額として考えた運転資金です。事業が継続するかぎり、常に経常運転資金が発生し続けているものであり、返済財源はないものと考えます。経常運転資金を資金使途として融資を受ける場合、短期継続融資(短コロ)という方法で借りることが多いです。

例えば前期の決算書の貸借対照表で、売掛金2000万円、在庫1000万円、買掛金1500万円であったとします。経常運転資金は2000万円+1500万円-1500万円=2000万円で、この金額を、事業が続くかぎり常に発生し続ける金額と考え、短期継続融資の方法で2000万円の融資を受けます。

短期継続融資の返済方法は6カ月後や1年後に一括返済と決められます。しかし経常運転資金が発生し続けるかぎり、一括返済の日に新たに同じ条件で融資を受け、結果として融資を受け続けることになります。この場合、企業は一括返済の日に返済資金を用意しなくてもよいものです。

ただし最近は、融資条件はあくまで一括返済であることから、返済日にいったん全額返済し、返済を確認した直後の新たに同額の融資を実行することで毎回、返済の形を作りけじめをつけるよう、銀行の融資条件で決められることが多くなっています。いずれにせよ一括返済ごとに新たな融資を実行するところから、融資を転がしていくという意味で、短期継続融資は短期コロガシ融資、略して短コロ、と呼ばれることも多いです。

売上が増加していくと売掛金や在庫などが買掛金の増加以上に増加することが通常です。この場合、経常運転資金として必要な金額が増加するので短期継続融資の金額を増やす(この場合の資金使途を増加運転資金と言います)交渉を銀行に行うことができます。逆も同じで、売上が減少し経常運転資金として必要な金額が減少すれば、一括返済の機会に短期継続融資の減額を銀行が要求してくることがあります。また決算書の内容が悪化しているなど銀行が警戒している企業に対し、一括返済の機会に、短期継続融資を再度実行することなく終了させられることもあります。