銀行は融資の「資金使途」をなぜ重要と考えるのか

資金使途とは、融資で得られた資金を何に使うのか、使い道のことです。企業は、何か目的があって融資を受けようとするものです。その目的、つまり資金の使い道をはっきりさせないと、銀行は融資を行ってくれません。

銀行はなぜ、融資審査で資金使途を重要と考えるのでしょうか。融資で出た資金が事業の維持・成長ではなく、事業に関係のないことに使われたら、その融資が最後まで返済される可能性が低くなるからです。

筆者が相談を受けた建設業のケースです。元請けからの入金と、外注費や材料費などの支払いの時期のずれで資金が多くなることもあれば少なくなることがあり困っていました。資金繰りを安定させるため、銀行から運転資金として、2000万円、返済期間7年の融資を受けました。しかし社長は2000万円入金された預金残高を見て、欲が出てしまいました。お金を増やそうと、2000万円のほとんどを株式投資につぎ込んでしまいました。その後、大きく損を出し、2000万円は全くなくなってしまいました。

その建設業、資金繰りを安定させるため運転資金として融資を受けたのに、別のことに使ってしまえば、資金使途で示された融資の目的を達せられません。そして、すぐに返済できなくなってしまいました。

融資で得た資金は、どのようなことに使っても良いわけではありません。本業の維持・成長のための運転資金や設備資金として使われなければ、融資は最後まで返済される可能性は低くなります。だから、銀行は資金使途を重要と考えるのです。それを防ぐため、銀行は、融資の申込みがあったら必ず資金使途を企業に確認します。

運転資金に使うのか、設備資金に使うのか。資金使途の具体的な内容はどうなのか。融資を申し込む時、企業は銀行に説明しなければなりません。口頭だけでなく、資料も使って資金使途を説明すれば、銀行としては分かりやすいものです。

融資の資金使途が明確になれば返済プランも導き出せる

融資が申し込まれた後、資金使途は、次の観点から銀行の融資審査で検討されます。

  • 資金使途は明確であるか。
  • 資金使途は事業を維持、もしくは成長させるために妥当であるか。
  • 資金使途と、必要な融資金額、返済期間、返済方法は整合性がとれているか。

また資金使途により、どのように返済するか、プランを考えることができます。例えば、先に仕入や外注費で300万円を支払わねばならず、3カ月後に売上代金500万円入金される場合。300万円を融資し、3カ月後に300万円を一括で返済する、というように。

資金使途は何であるかが明確になれば、この例のように、いくら必要か(300万円)、返済資金はどこから出てくるのか(売上代金の入金)、いつ返済されるのか(3カ月後)、どのように返済されるのか(一括で返済)、決まります。資金使途と、そこから導き出される返済プランを明確にし、銀行に説明できれば、融資に近づきます。