銀行はなぜ融資を断る理由を言わないのか

銀行に融資を断られる時、その理由を「総合的に判断」としか言われないことがあります。なぜそのような表現をされてしまうのでしょうか。

私は銀行員の時、上司から「融資を断る理由は、総合的に判断して、と言いなさい。」とアドバイスされていました。そこで私は、企業に融資を断る時、「検討しましたが、申し訳ないですが今回は総合的に判断して見送りとさせてください。」と伝えていました。

なぜ銀行員は、融資を断る理由を具体的に教えてくれないのでしょうか。「総合的に判断して」と言われても、実際に断る理由があるはずです。しかし具体的な理由を言うと、経営者の中には怒り出す人もいます。

例えば、実際の理由を「5年前から社長が始めた○◯事業が経営の足を引っ張っていますので、○○事業を撤退しないかぎり、私どもは貴社に融資はできません。」と言うと、経営者はむっとして「なぜそんなことを言われなければならないのか。おたくには関係ないことでしょ。」怒ってしまうのです。

あなたがそんな経営者でなかったとしても、一定の割合で、怒り出す経営者がいます。そういうことが銀行では積み重なりました。そしていつか、融資を断る理由を「総合的に判断」と言ってぼかす、という文化になってしまったのです。

私が銀行員3年目の時、新規で相談を受けていた中に、自動車小売業で、見た目は遊んでいそうな30代あたりの経営者がいました。ずっとニコニコして対応してくれていたのに、最後、融資を断ったとたん、いきなり鬼の形相になり「今まで出した資料、全部返せ。」と怒鳴られました。結局その会社は、半年後倒産してしまいましたが。このような経営者が一定の割合で存在します。そこで経営者を怒らせるリスクを少しでも減らすために、断る具体的な理由を言わないのです。

銀行から融資を断る理由を言われない場合、どうしたらよいのか

融資が出るか出ないかで、企業は存続の危機に陥ります。経営者は真剣です。断られたら感情的になる経営者は多いです。銀行員としては、断ってただでさえ経営者は感情的になりがちのところ、具体的な理由を言ってさらに怒らせたくないです。なお経営者が怒っても、審査の結果がひっくり返って融資が受けられるようになることはありません。

怒った経営者のことは、銀行員はいつまでも覚えています。企業との交渉記録に残し、担当者が転勤しても代々、「あの経営者は怒りっぽいから要注意」と引き継がれることもあります。そう思われてしまうと、銀行員はその経営者、その企業と接触したがらなくなることでしょう。そうなるとその銀行と疎遠となり、今後、ますます融資のチャンスがなくなります。経営者は感情的にならず、紳士的な対応をしたいところです。

なお銀行交渉がうまい経営者は、融資を断られて、その理由を「総合的に判断して」としか言われない場合でも、うまく聞き出します。経営者から頼まれると、融資を断った具体的な理由を教えてくれる銀行員も多いです。断られた理由を聞き出し、そこを改善して、今後、融資を受けやすい会社になるようにしていきたいものです。