銀行に融資を申し込むと、必要書類を要求されます。書類には次の3パターンがあります。
- 銀行から必ず要求される書類
- 銀行から場合により要求される書類
- 銀行から要求されないでも融資を通すためのアピール材料として提出したい書類
3の書類は、何もしなければ融資審査が通りにくい会社が、審査を通してもらうために自主的に出したい書類です。
書類の分類 | 書類の内容 |
1.銀行から必ず要求される書類 | 決算書 |
2.銀行から場合により要求される書類 | 試算表
月次資金繰り予定表 月次資金繰り実績表 日次資金繰り表 経営計画書 借入金一覧表 借入金推移表 会社案内 代表者略歴 代表者の資産負債一覧 月次売上推移 販売先・仕入先別売上表 在庫一覧 事業性評価資料 設備の見積書 販売の注文書や契約書 |
3.銀行から要求されないでも融資を通すためのアピール材料として提出したい書類
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月次資金繰り予定表
経営計画書 会社案内 代表者略歴 代表者の資産負債一覧 事業性評価資料 販売の注文書や契約書 |
1.銀行から必ず要求される書類
決算書
融資審査にあたって、決算書は必ず必要です。直近3期分を要求されることが多いです。決算書には、勘定科目内訳書、確定申告書(別表)も付けます。
個人事業主であれば確定申告書に、青色申告であれば貸借対照表・損益計算書、白色申告であれば収支内訳書を付けます。
これらを提出できないと、絶対に融資は受けられません。
2.銀行から場合により要求される書類
試算表
試算表は、今期の途中経過の損益計算書・貸借対照表であり、銀行は今期の業績を見るために要求します。決算期から3カ月以上経過していたら、要求されることが普通です。例えば2020年3月が決算期であれば、融資を申し込んだのが7月以降であれば銀行から要求されます。場合によっては5月時点でも、4月だけの試算表を要求してくることがあります。
試算表は毎月作成するものであり、経営者は前月や今期今までの業績を試算表で振り返り、経営に活かしていくべきものです。試算表を毎月作らず、銀行から要求された時だけ顧問税理士に作成を頼む経営者がいますが、あるべき姿ではないですし、そこから試算表を作成すれば銀行への提出まで時間がかかってしまいます。
なお試算表で、正確な損益が算出されていない会社もあります。よくあるのは、発生主義ではなく現金主義で仕訳を行っている、もしくは商品や製品を月次で棚卸していない、というパターンです。
例えば4月30日に1,000,000円の売上が発生して売掛金となり、5月31日に売掛金が入金となった場合。発生主義では売上が発生した4月に売上が計上されますが、現金主義では入金となった5月に売上が計上されます。月がずれると、試算表の売上や利益が正確なものとはなりません。そうなると試算表を提出しても銀行から信頼されず、融資審査に影響が出ます。期の途中でも発生主義で仕訳を行い正確な試算表を出せるようにしたいものです。
また毎月棚卸を行わないと、売上原価が実態と大きくずれ、試算表で正確な利益が算出されません。棚卸は毎月行いたいものですが、ただ手間もかかるので、3カ月に1回行い3カ月ごとに正確な試算表を出す、融資の申し込み予定があればその前の月は棚卸を行い今期の正確な試算表を出せるようにするなど、工夫したいところです。
月次資金繰り予定表・月次資金繰り実績表・日次資金繰り表
月次資金繰り表とは、過去もしくは将来の、毎月末の現金預金残高を表し、またその残高となるまでの毎月の入金・出金を項目別に集計したものです。過去の月の資金繰り表は資金繰り実績表と呼ばれ、将来の月の資金繰り表は資金繰り予定表と呼ばれます。実績表も予定表も表の形は同じであり、同じ表の中で資金繰り実績と資金繰り予定を表せます。
銀行が融資審査で要求してくることが多いのは資金繰り予定表です。今回の融資を出したら将来6カ月~1年程度、各月の資金繰りがどう回るかを銀行は資金繰り予定表で確認します。
また、資金繰り予定表とともに実績表を要求してくることもあります。過去3~6カ月程度、資金繰りはどう回ってきたのか、月次資金繰り実績表で銀行は確認します。
資金繰り予定表と実績表とでは作り方が全く違い、どちらも要求されると、労力を多く必要とします。
日次資金繰り表とは、毎日の資金繰りを表したものです。月次資金繰り表は月ごとの資金繰りですが、日次資金繰り表は日ごとであり、それだけ作成が大変になります。月次で資金繰りを見るだけでは足りず、毎日の資金繰りがどうなっていくかを銀行が確認したい時にこの書類を要求されます。将来3カ月程度の毎日の資金繰りを見たいと言われることが多いです。日次資金繰り表は、資金繰りが厳しくなっている会社に対し銀行が要求してくることが多いです。
経営計画書
経営計画書は、会社が今後5年~10年、売上・利益がどのように上がっていくのかを数値で表した損益計画と、計画実現のための行動計画が基本的な構成です。場合によっては貸借対照表がどのように推移していくかの計画も銀行が求めてくることもあります。貸借対照表の純資産がマイナス(債務超過)である会社や、借入金が多い会社に対し、銀行は貸借対照表の計画を要求してくることが多いです。どう債務超過を解消していくか、どう借入金を減らしていくか、貸借対照表計画で銀行は確認します。
借入金一覧表・借入金推移表
借入金一覧表は、銀行からの借入金を一覧にしたものです。一覧表には、次のことを書きます。
- 銀行名
- 信用保証協会保証の有無
- 融資の種類(証書貸付・手形貸付など)
- 現在残高
- 当初実行額
- 毎月返済額
- 融資実行月
- 最終返済月
- 返済期間
- 金利
借入金一覧表を銀行が要求してくることはとても多いです。企業側で一覧表にして提出できないのであれば、現在借入している融資の返済予定表を全て提出するよう銀行から要求されることもあります。
また借入金推移表は、過去3年程度の、決算時点での各銀行からの借入金残高推移です。長期融資・短期融資・手形割引それぞれの金額と、預金残高を書くように言われることもあります。借入金一覧表に比べて借入金推移表の提出を要求されることは少ないですが、銀行によってはひな型を用意してそこに記入するよう求めてくることもあります。
会社概要書
自社について説明するものです。顧客や取引先に見せるためにすでに会社案内を作っているのであればそれを銀行に提出してもよいですし、作っていなければ作りたいです。
会社概要書に記載することは次のとおりです。
- 社名・本社所在地・電話番号・FAX番号
- 本社以外の事業所・店舗・工場の名称・所在地
- 創業・設立年月
- 資本金
- 業種・具体的な事業内容
- 自社が扱っている商品・製品・サービスとその特色
- 従業員数・うちパート数
- 役員一覧
- 株主一覧とそれぞれの持ち株比率
- 会社の沿革
代表者略歴・資産負債一覧
代表者の略歴では、代表者の住所や連絡先、年齢や生年月日、学歴・職歴などを書きます。また資産負債一覧は、預金(金額・銀行別・預金種類別)、株式など有価証券(銘柄・株数など)、不動産(所在地・面積・種類・担保設定状況)などの資産を書き、また借入金(金額・銀行・住宅ローンなど融資種類)などの負債を書きます。
銀行の融資では代表者が連帯保証人となることが多いです。代表者の個人資産が多ければ融資審査にプラスとなります。なお負債は、個人信用情報などで後で調べられることがあるので、負債があるのにないと書くなどウソはつけません。
月次売上推移
信用保証協会に保証を申し込む場合は最近1年の毎月の売上高を書きますので月次売上推移が必要となります。
また試算表を銀行から要求されて、作っていないなどで提出できなければ、代わりに月次売上推移を提出すれば銀行が審査してくれることもあります。ただし売上推移では今期の業績が銀行にとって分かりづらいですし、また試算表も作っていない会社は融資審査が不利となってしまいますので、試算表の提出を求められたら、しっかり提出できるようにしたいです。
販売先・仕入先別売上表
直近の決算期や、過去3期程度の、販売先・仕入先別の売上高・仕入高を書きます。銀行はこの書類で、主力の売上先や仕入先はどこであるか、各社との売上高・仕入高推移はどうか、を見ます。上位5社以外はその他でまとめるなど、全ての取引先の記載をしなくてもよいことがほとんどです。
また販売先・仕入先ごとの締日・入金支払日、手形で受け取ったり支払ったりすることがあれば手形割合や手形サイトを書くよう要求されることもあります。
在庫一覧
直近の決算時点での在庫一覧や、過去3年程度の在庫一覧を求められることがあります。在庫が業界平均に比べて多かったり、在庫が増加していっていたりすれば、それだけの在庫が本当に存在するのか、売れ残りの在庫はどれぐらいあるのか、在庫を今後減らしていける見込みがあるのかを銀行は見てきます。それを見るための書類として在庫一覧を求めてきます。
また、在庫が置いてある倉庫を案内してくれと言われることもあります。この場合は、在庫が本当に存在しているのか銀行が疑っている可能性が高いです。倉庫を案内して銀行員に在庫の内容を説明し、銀行員に安心してもらいたいものです。
事業性評価資料
事業性評価とは、企業の事業内容や成長可能性など銀行が行う評価です。決算内容や担保だけでなく、事業性を評価して融資審査しようということが金融庁から言われています。
事業性評価資料には、次のことが書かれます。
- 経営理念・ビジョン
- 自社の強みや弱み、過大
- 外部環境(市場、顧客のニーズ、競合など)
- 事業の将来性
- 事業の仕組み
- 経営者について
設備の見積書
設備資金の融資を申し込む場合、見積書の提出が必要です。設備が機械であれば機械のパンフレット、建物であれば設計書を付けるなど、どのような設備か分かりやすいようにすると銀行に理解してもらいやすいです。
販売の注文書や契約書
先に材料費や外注費などが発生し、後で売掛金が入金される場合。その間をつなぐ運転資金の融資では取引先との注文書や契約書が必須となります。そこには注文の金額がいくらか、入金予定日はいつなのか書いてあると、銀行は融資を組み立てやすくなります。
3.銀行から要求されないでも融資を通すためのアピール材料として提出したい書類
前項、2.銀行から場合により要求される書類で述べた書類の中で、以下の書類は、銀行から要求されなくても自主的に提出したい書類です。通常であれば融資審査が通りにくい会社であれば、なおさらこれらの書類を銀行に提出してアピールしたいものです。
- 月次資金繰り予定表
- 経営計画書
- 会社案内
- 代表者略歴
- 代表者の資産負債一覧
- 事業性評価資料
- 販売の注文書や契約書
これらの書類を、自社の融資審査を通しやすくするためにどう活用するかは、下記ページをごらんください。